写真家の故・砂守勝巳をめぐる連続論考。今回は彼の特異な生い立ちと、若き日のボクサー体験、釜ヶ崎での撮影、さらに写真週刊誌カメラマンとしての顔や、写真集『漂う島とまる水』に至る半生を辿る。それぞれの写真の心奥にあったものとは何か。
椹木野衣
椹木野衣 美術と時評89:砂守勝巳 – 風景が黙示する(1)
昨年、没後10年を経た写真家・砂守勝巳。平成最初の大災害とも言われた雲仙・普賢岳の噴火被災地をとらえた連作「黙示の町」を知ったことから展覧会企画にまで携わった筆者が、砂守の活動の本質を現代につなぐ連続論考。
椹木野衣 美術と時評88:回復のための想像力 ー 被災と修復
記録的な豪雨や台風被害に見舞われた2019年。その爪痕は美術作品にも及んだ。自然災害が多発するなか、2016年の熊本地震に端を発する作品修復プロジェクトを通して、被災と修復について考える。
椹木野衣 美術と時評87:表現の不自由・それ以前 –– 小早川秋聲、山下菊二、大浦信行の<2019年>をめぐって
晩夏の東京で開かれた二つの重要な展覧会を起点に、歴史をつなぎながら、この国の表現をめぐる状況を論考する。
椹木野衣 美術と時評86:歴史の遠近をすり抜けて ―「S氏がもしAI作曲家に代作させていたとしたら」展からの考察
2014年のある騒動に想を得て生まれた展覧会。その観賞を通じて、重要な出来事さえ情報として次々と消費される時間の濁流のなか、その流れが向かう先と、いま我々が自らの居場所を確かめる重要さを考察する。
椹木野衣 美術と時評 85:油絵から古九谷へ — 硲伊之助の近代絵画探求
硲伊之助は生涯4度の渡欧でマティスにも師事し、東京美術学校助教授、日本美術会委員長等も務めた。しかし後半生は石川県で古九谷の制作に注力する。その変化と不変の探究を、硲伊之助美術館を訪ねて考察する。
椹木野衣 美術と時評 84:ジェフ・クーンズ「ラビット」——空気を売る
2019年5月、ジェフ・クーンズの「ラビット」がクリスティーズ・ニューヨークにて、存命美術家の作品としては史上最高額の9107万5000ドルで落札された。同作に思い入れもある筆者が、その意味を再考する。
椹木野衣 美術と時評 83:寄せては返す骸(むくろ)と天界——イケムラレイコの惑星世界
今年1月から4月にかけて開催され話題となった大規模個展「イケムラレイコ 土と星 Our Planet」を通じて、作家の表現の根源にあるものを探る。
椹木野衣 美術と時評 82:批評と評価——障害をめぐるアートをめぐる
障害とアートとの関係をめぐり、<美術・教育・評価>と<アート・表現・批評>の違いや、2018年に施行された「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」を通じて論考する。
椹木野衣 美術と時評 81:反復劇からの脱出計画―「スペース・プラン記録展」
1968年、「脱出計画」と冠した檄文で動き出した鳥取の前衛芸術家集団。地域の芸術シーンの閉塞的反復から脱する道を探ったそのまなざしを、東京五輪、大阪万博という大きな「反復」が迫る現在にとらえ直す。