アラヤー・ラートチャムルーンスック展『NIRANAM 無名のものたち』@ 京都芸術センター

アラヤー・ラートチャムルーンスック展『NIRANAM 無名のものたち』
2015年5月18日(月)-6月14日(日)
京都芸術センター
http://www.kac.or.jp/
開館時間:10:00-20:00
会期中無休

京都芸術センターでは、チェンマイを拠点に活動する東南アジアを代表するアーティスト、アラヤー・ラートチャムルーンスックの個展『NIRANAM 無名のものたち』を開催する。

アラヤー・ラートチャムルーンスックは、1957年トラート(タイ)生まれ。美術分野においてタイ国内有数のシラパコーン大学でMFAを取得。現在はチェンマイ大学で教鞭を執る。活動初期は版画や彫刻に取り組んでいたが、90年代後半より、写真や映像作品を中心とした制作を行なう。2005年の第51回ヴェネツィア・ビエンナーレ・タイ館では、アラヤー自身が身元不明の遺体に向かい、死について講義する映像作品「授業」(2005)を発表。同作品に見られるタイ独自の死生観や教育へのアイロニカルな態度は、死体公示所に並ぶ遺体に対して、古くから伝わる愛についての物語を語る「タイ・メドレー1、2、3」(2002)や、タイの村民がフランス名画などの複製を鑑賞しながら、自由に会話する様子を撮影した「ふたつの惑星」(2008)などにも通じている。また、2012年に参加したドクメンタ13では、一匹の犬とともにカッセルへ向かい、公園内の小屋に3週間滞在して、タイ国内の野良犬を助けるための寄付金を募るプロジェクトを実施した。「授業」における生と死と同様に、このプロジェクトにも人間と動物という境界を越えた対話の可能性を探求するアラヤーの姿が伺える。

これまでに、上述したヴェネツィア・ビエンナーレやドクメンタのほか、バンコク国立美術館やスウェーデンのテンスタ・コンストハル、ウォルターズ美術館(ボルチモア)などで個展を開催、シドニー、イスタンブール、光州といった国際展に参加している。また、日本国内でも2011年に国立国際美術館で開催された『風穴:もうひとつのコンセプチュアリズム、アジアから』や、2013年から横浜美術館などを巡回した『熱々!東南アジアの現代美術』、堂島ビエンナーレ2013に出品している。

昨年5月半ばから6月半ばにかけて、アラヤーは京都芸術センターと京都市立芸術大学の連携によるアーティスト・イン・レジデンス事業で京都に滞在。京都芸術センターの植え込みに蚊帳で作った仮設小屋から、特別養護老人ホームや動物愛護センター、川沿いに住むホームレスの小屋などさまざまな場所を移動しながら、撮影とインタビューを重ねた。本展では、「自分が規定されてきた立場から消えて、身体も感情も移動させて、自分が別々のところに現れる技術」と彼女が呼ぶ技術を駆使して集めた、京都に生きる動物や人間、そしてアラヤー自身のとりとめのない儚い記憶を基にした作品を発表する。

関連イベント
ギャラリートーク
作品制作に関わった人たちを迎え、作家本人とともに、作品について語る。
進行:堀内奈穂子(アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]キュレーター)
2015年5月22日(金)18:00-19:30
会場:京都芸術センター ギャラリー南
定員:30名
無料、逐次通訳あり

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