Video Journey to Vietnam @ 京都芸術センター 和室「明倫」


 

Video Journey to Vietnam
2025年1月18日(土)-2月9日(日)
京都芸術センター 和室「明倫」
https://www.kac.or.jp/
開館時間:10:00–18:00
会期中無休
企画担当:西田祥子(京都芸術センター プログラムディレクター)、原田直子(京都芸術センター アートコーディネーター)
展覧会URL:https://www.kac.or.jp/events/video-journey-to-vietnam/

 

京都芸術センターでは、世界各国の美術機関と連携し、世界各地のアーティストの映像作品を紹介するプログラム「Video Journey」の第2弾として、ベトナムのホーチミンに拠点を置く「Sàn Art(サン・アート)」による5名のアーティストの7つの映像作品を紹介する。なお、サン・アートとの映像のエクスチェンジプログラムとして実施される本プログラムでは、京都のアーティストの映像作品もベトナムにて上映する。

サン・アートは、ディン・Q・レ、ティファニー・チュン、トゥアン・アンドリュー・グエン、プーナム・トゥク・ハの4名のアーティストが2007年に非営利のアートプラットフォームとして設立された。2009年から2016年にかけて、キュレーターで文筆家のゾーイ・バットもエグゼクティブ・ディレクターとして参加。国内外の文化活動やアーティストの活動を草の根的に支援する姿勢を保ちながら、教育プログラムも定期的に実施するほか、批評の場としても機能するなど、ベトナムの現代美術を代表するアートスペースの地位を形成。革新的で実験的な実践や視点を支援・育成するコミュニティのハブとして拡大している。

本プログラムでは、グエン・チャン・チーの《Everyday’s the Seventies》(2018)、スアン・ハの《渡し守》(2021)、レナ・ブイの《光》(2024)と《Precious. Rare. For Sale》(2023)、グエン・ホアン・ジャンの《Il Provino》(2023)と《人間学習》(2021)、ファン・アンの《Confronting oneself in the state of presence》(2016-2017)をループ再生で上映する。

 


Nguyen Trinh Thi, Everyday’s the Seventies (2018)


Xuân-Hạ, A Ferry Man (2018)

 

グエン・チャン・チー(1973年ハノイ生まれ)は、記憶、歴史、表象、権力構造、植民地主義や戦争の遺産、失われゆくベトナム固有の文化の関係を探求している。2009年には新世代のベトナムの映像作家の育成を目的とした教育施設・制作スタジオである「Hanoi DocLab」を設立し、現在もディレクターを務める。これまでにドクメンタ15をはじめとする数多くの国際展や展覧会に参加。昨年は「MAMコレクション018:グエン・チン・ティ」(森美術館、東京、2024)、「記憶:リメンブランス―現代写真・映像の表現から」(東京都写真美術館、2024)、でも作品を発表している。本プログラムには、1980, 90年代の香港映画の映像と1970年代後半から1997年にかけて放映された、ベトナム戦争や香港に暮らすベトナム難民に関するニュース映像、香港にあるレコード店「Paul’s Records」のオーナーへのインタビューを組み合わせた《Everyday’s the Seventies.》(2018)を出品。

スアン・ハ(1993年ダナン生まれ)は、支配的な言説の中で消し去られ、不可視にされがちな、ミクロな歴史や周縁化された個人的な語りに深く根ざした芸術実践を行う。制作活動の傍ら、地元のアート・コミュニティの構築と拡大に積極的な役割を果たし、アート・コレクティブ「Chaosdowntown Cháo(カオス・ダウンタウン・チャオ)」(ホーチミン、2015-2019)を共同設立、2019年にはダナンのクアンナムの土地や民族のアイデンティティを追求する「A Sông(ア・ソング・クラブ)」を設立し、芸術監督を務める。ベトナム国内外各地で作品を発表。日本国内では、マイ・フエン・チーとの共同監督作品《8月の手紙》(2021)を2021年にVisual Documentary Project(京都)、2022年に京都国際映画祭2022で発表している。本プログラムには、ベトナムで各地にある英雄烈士の墓地を訪れ、墓石の写真を撮ってウェブサイトに掲載する活動を続け、「渡し守」として知られるグエン・サイ・ホーという人物に感銘を受け、英雄烈士の名前をライスペーパーに書き留めて食べる男のパフォーマンスの様子を映像化した《渡し守》(2021)を発表。

 


Lena Bui, Precious. Rare. For Sale (2023)

 

レナ・ブイ(1985年ダナン生まれ)は、信仰、死、夢といった、とらえどころのない生活の一側面が、人間の行動や知覚に与える影響について探求している。2007年にアメリカ合衆国コネチカット州のウェズリアン大学で東アジア学の学士号を取得。同大在学中にAssociated Kyoto Programにて同志社大学にも在籍。2009年よりサイゴンを拠点に活動している。近年の主な展覧会にバンコク・アート・ビエンナーレ2024、「Cyphering, Vibrating, Emanating」(デルフィナ財団、ロンドン、2023)、チェジュ・ビエンナーレ2022、「Posthuman Ensemble」(国立アジア文化殿堂、光州、2021)など。本プログラムでは、雨の夜、光に集まるカゲロウの様子に二人の人物の会話を重ねた《光》(2024)と、民族誌映画、ベトナムのテレビドラマ、戦争映画、ニュース、ブロガーらによる映像など、ベトナムの映像における自然表現の変遷を俯瞰した《Precious. Rare. For Sale.》(2023)を出品。

グエン・ホアン・ジャン(1989年ハノイ生まれ)は、さまざまなメディアを用いて、新しいテクノロジーの社会的・文化的影響に焦点を当てた作品を発表している。これまでに「RE:HUMANISM Art Prize. Awarded artists exhibition」(Albumarte、ミラノ、2019)、「No War No Vietnam」(Galerie Nord | Kunstverein Tiergarten、ベルリン、2018)、「The Future」(国立アジア文化殿堂、光州、2015)などで作品を発表。Net Fluxists(2021)、In_ur_scr!(2016)において、キュレーションや教育プログラム等も手掛ける。本プログラムでは、現代のベトナム文化にまつわる役割を演じる4人の人物が登場する《Il Provino》(2023)と、ロボットの動きを模倣し、自分なりの解釈で振り付けするよう求められたパフォーマーの動きを記録した《人間学習》(2021)を発表。

ファン・アン(1990年生まれ)は、さまざまな手法を通じて、政治的、社会的、歴史的な出来事に関する言説を探求しながら、既成の物語に挑戦する行為を通して、思想、研究、表現の自由を提唱することを目指した表現を発表している。2017年には、教育機関や一般のアート・コミュニティから認知や支援を受けていない実践者のためのコレクティブ「Đường Chạy」を共同設立。2017年にはベトナム、カンボジア、ラオスを拠点に活動するアーティストを対象としたドグマ賞を受賞。ベトナム国内を中心に作品を発表しており、2024年には「in flux: ベトナムビデオアートの流れを振り返る」(JUU arts&stay、大阪)でも《The most romantic walk》(2017)を発表した。本プログラムでは、主人公である「私」が「自分自身」を見つけるための探求の経験を記録した《Confronting oneself in the state of presence.》(2016-2017)を発表する。

 


Nguyen Hoang Giang, Human Learning (2021)


Phan Anh, Confronting oneself in the state of presence (2016-2017)

Copyrighted Image