奈良原一高 王国 @ 東京国立近代美術館


Both: 奈良原一高《「王国」より沈黙の園》© Narahara Ikko Archives

奈良原一高 王国
2014年11月18日(火)-2015年3月1日(日)
東京国立近代美術館 ギャラリー4
http://www.momat.go.jp/
開館時間:10:00-17:00(金曜は20:00まで)入館は閉館30分前まで
休館日:月(休日の場合は翌平日休)、12/28-1/1

東京国立近代美術館では、日本写真史における戦後新世代を代表する写真家として知られる奈良原一高の初期の代表作「王国」シリーズを紹介する企画展『奈良原一高 王国』をギャラリー4で開催する。

前衛美術に傾倒していた奈良原一高(1931年福岡県生まれ)は、美術史を専攻していた早稲田大学大学院在学中に、軍艦島と桜島の黒神村を舞台に人間の生の実存的意味を問いかける作品を個展『人間の土地』で発表して、ほぼ無名の新人の個展としては例外的な反響を得た。

本展で紹介される「王国」は、和歌山の女性刑務所を取材した「王国(その1)壁の中」と北海道の修道院を舞台とする「王国(その2)沈黙の園」の二部構成で、前作よりさらに極限状況を生きる人間というテーマを深化させたシリーズ。58年に富士フォトサロン(東京、大阪)での展覧会と『中央公論』の雑誌グラビアページに発表されると、日本写真批評家協会賞新人賞を受賞するなど、奈良原自身の評価を確立する代表作となった。その後、71年に中央公論社から「映像の現代1」として刊行された写真集『王国[Man and his Land]』では当初の第一部と第二部を入れ替え、「人間の土地」シリーズより軍艦島を取材したシリーズを第三部とする構成へと変更。78年に朝日ソノラマからソノラマ写真選書第9巻として刊行された写真集『王国 ―沈黙の園・壁の中―[Domains]』では、再び「沈黙の園」60点、「壁の中」30点、全90点からなる二部構成へと編み直されている。本展では、2010年度に株式会社ニコンが寄贈したプリント全87点により、78年版写真集の構成をほぼ踏襲する。


Both: 奈良原一高《「王国」より壁の中》© Narahara Ikko Archives

「王国」というタイトルは、アルベール・カミュの中篇小説集『追放と王国』(1957)からとったもので、奈良原は、同書におさめられた一篇「ヨナ」の結びにある一節「その中央にヨナは実に細かい文字で、やっと判読出来る一語を書き残していた。が、その言葉は、Solitaire(孤独)と読んだらいいのか、Solidaire(連帯)と読んだらいいのか、分からなかった。」を作品発表時に引用している。

会期中には、本展企画者の増田玲(東京国立近代美術館主任研究員)による講演会を実施。また、奈良原の同世代で戦後日本の新しい美術を牽引していった高松次郎の個展『高松次郎ミステリーズ』が12月2日より開催される。


奈良原一高《「王国」より沈黙の園》© Narahara Ikko Archives

関連イベント
講演会
増田玲(東京国立近代美術館主任研究員)
2014年12月13日(土)14:00-15:30(開場:13:30)
会場:東京国立近代美術館 地下1階講堂
定員:150名(先着順)聴講無料

ギャラリートーク
小林美香(東京国立近代美術館客員研究員)
2015年1月16日(金)18:00-19:00
会場:東京国立近代美術館 ギャラリー4
参加無料(要観覧券)、申込不要

増田玲
2015年2月6日(金)18:00-19:00
会場:東京国立近代美術館 ギャラリー4
参加無料(要観覧券)、申込不要

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