マリア・ファーラ《テラスのある部屋》2021年 国立国際美術館所蔵
ホーム・スイート・ホーム
2024年10月12日(土)-2025年1月13日(月・祝)
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 3階展示室C、2階展示室B、1階エントランス
https://www.mimoca.org/
開館時間:10:00–18:00 入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし10/14、11/4、1/13は開館)、10/15、11/5、12/25-12/31
本展担当キュレーター:竹崎瑞季(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館キュレーター)
展覧会URL:https://www.mimoca.org/ja/exhibitions/2024/10/12/2999/
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)では、歴史、記憶、アイデンティティ、私たちの居場所、役割などをキーワードに表現された作品群を通して、私たちにとっての「ホーム」——家そして家族とは何か、私たちが所属する地域、社会の変容、普遍性を浮かび上がらせることを試みる展覧会「ホーム・スイート・ホーム」を開催されている。
国立国際美術館からの巡回となる本展は、建築家の谷口吉生が設計したMIMOCAの展示空間の特質を生かし、出品作家それぞれの作品がゆるやかに呼応し、響き合うことを目指す。壊れた日用品や食器などを用いた竹村京の〈修復〉シリーズ、パンデミック期に武漢で実施したリサーチをもとに映像や写真を組み合わせた潘逸舟の作品、ロシアの侵略により故郷を追われた記憶をもとにしたアンドロ・ウェクアの絵画や彫刻、忘れ去られようとする日本の歴史を再構築した鎌田友介のインスタレーションなど、多彩な表現が天井高7mと9mのふたつの展示室や1階エントランスに展開される。潘と鎌田、そして、国立国際美術館ではレクチャー・プログラムによる参加となったリディア・ウラメンは、本展にあわせてバージョンアップした展示を披露する。会期中には、竹村によるパフォーマンス《May I enter? scene 1, 2, 3, 4, 5》の上演も予定されている。
マリア・ファーラ「ホーム・スイート・ホーム」展示風景(国立国際美術館、2023年)撮影:福永一夫
潘逸舟「ホーム・スイート・ホーム」展示風景(国立国際美術館、2023年)撮影:福永一夫
マリア・ファーラ(1988年フィリピン、カバナチュアン生まれ)は、日常のふとした瞬間や記憶の断片から構築される新たな情景を、多彩な筆使いで描いた絵画で知られる。イギリス人の父親とフィリピン人の母親を持つファーラは、幼少期を下関市で過ごした後、15歳よりロンドンに移住。ロンドン大学スレード美術学校修士課程を修了し、現在もロンドンに拠点を置く。オオタファインアーツ(東京/シンガポール)やmother’s tankstation(ロンドン/ダブリン)などで個展を重ねるほか、「ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術―いつ・どこで・だれに・だれが・なぜ・どのように?―」(水戸芸術館現代美術ギャラリー、2023)、「Day Tripper」(Focal Point Gallery、エセックス州サウスエンド=オン=シー、2019)といったグループ展で作品を発表。本展には、幼少期に下関で過ごした記憶をもとにした《下関海峡でおぼれる両親を救う》(2017)や、新作三部作《台風の中、岩にしがみつく》《パンクしたディンギーを救う大型船》《ティーンエイジ・ロマンス》(2023)などを出品する。
潘逸舟(1987年上海生まれ)は、中国で生まれ日本に育ったというアイデンティティを出発点に、社会と個の関係の中で生じる疑問や戸惑いを、自身の身体や身近な日用品を用いた映像やインスタレーション、写真、絵画など、さまざまなメディアで表現する。近年の主な展示に、国際芸術祭「あいち2022」、「ぎこちない会話への対応策―第三波フェミニズムの視点で」(金沢21世紀美術館、石川、2021-2022)、「MOT アニュアル 2021 海、リビングルーム、頭蓋骨」(東京都現代美術館、2021)、個展「The Drifting Thinker」(MoCA Pavilion、上海現代美術館、2017)、「In the Wake – Japanese Photographers Respond to 3/11」(ボストン美術館、2015/ジャパンソサエティー、ニューヨーク、2016)など。本展には、2022年1月、コロナ禍に参加した武漢のレジデンス・プログラムでの体験をもとにした作品《家ではない場所で豆腐を作る》(2023)を出品。現地でリサーチした中国の伝統的な地方劇「打豆腐」を、現代に生きる自らの身体を用いて再解釈して表すことで、祖国の文化や社会を受容する。
石原海(1993年東京都生まれ)は、愛、ジェンダー、個人史と社会などをテーマに、実験的な映画や映像インスタレーションを発表してきた。現実の出来事を軸に、独自のセンスでフィクションや物語的な要素を加えて構築する作品は、現代社会の一面や心の機微を丁寧に捉える。近年の主な展示に、「あらがう」(福岡市美術館、2024)、「第1回福岡アートアワード受賞作品展」(福岡市美術館、2023)、第14回恵比寿映像祭(2022)、個展「重力の光」(資生堂ギャラリー、東京、2021)、「Bloomberg New Contemporaries 2019」(サウスロンドン・ギャラリー、ロンドン、2019-2020)など。また、2022年には映画『重力の光 祈りの記録篇』がイメージフォーラムなど全国の劇場で公開された。本展出品作《重力の光》(2021)は、北九州の教会を舞台に、牧師やそこに集う人々による聖書劇をモチーフにした映像作品。さまざまな理由や背景から、社会にうまく適合しない人や救いを求める人々がともにつくり上げる居場所や関係性を映し出す。
石原海《重力の光》2021年「ホーム・スイート・ホーム」展示風景(国立国際美術館、2023年)撮影:福永一夫 作家蔵
鎌田友介《Japanese Houses》2023年「ホーム・スイート・ホーム」展示風景(国立国際美術館、2023年)撮影:福永一夫 作家蔵
鎌田友介(1984年神奈川県生まれ)は、1910年から1945年までに国外に建てられた日本家屋についてフィールドワークなどによるリサーチに取り組み、構造物や写真、映像などを用いて、歴史的事象と現在を交差させる作品を制作している。近年の主な展示に、個展「あなたはもう思い出せない You don’t remember anymore」(米子市美術館、2024)、「Geopoetics: Changing Nature of Threatened Worlds」(国立台湾美術館、台中、2023-2024)、「第1回福岡アートアワード受賞作品展」(福岡市美術館、2023)、釜山ビエンナーレ2022、「Spinning East Asia Series II: A Net (Dis)entangled」(CHAT、香港、2022)、「VOCA展2022 現代美術の展望―新しい平面の作家たち」などがある。本展のために制作された《Japanese Houses》(2023)は、日本家屋の間取りを展示室に再現し、韓国で実際に用いられていた家屋の部材や写真、資料、また日本でも活躍した建築家、アントニン・レーモンドにまつわる映像を組み合わせたインスタレーション。
リディア・ウラメン(1992年アルジェリア、サイダ生まれ)は、現代の地政学や移民、植民地主義の複雑な歴史を主眼に、映像、彫刻、インスタレーション、音を駆使した独特の言語による表現を発表している。近年の主な展示に、個展「108 Days」(バルセロナ現代美術館、2023-2024)、「The Third Choir」(テート・モダン、ロンドン、2023)、個展「Tassili」(スカルプチャー・センター、ニューヨーク、2022ほか)など。また、現在開催中の第60回ヴェネツィア・ビエンナーレや第15回光州ビエンナーレにも参加している。本展に出品する《母親たちが不在のあいだに》(2015-2018)は、ウラメンが北アフリカ移民のリサーチ最中に、アルジェリアの市場である男性に金のチェーンを売り付けられた出来事から着想した作品。歯をすべて抜いて第二次世界大戦への徴兵参加を避けた祖父のように、ウラメンもまた自身の歯を抜いて、チェーンを溶かしてつくった金歯をインプラントにより埋めた。
竹村京(1975年東京都生まれ)は、主に写真やドローイングの上に刺繍を施した布を重ねたインスタレーションを発表。刺繍による行為により「仮に」という状態を生み出すことで、かつて家族で暮らした家や親しい間柄にある人々につながる記憶や失われたものを具体的な存在として再構築する。近年の主な展覧会に、「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?―国立西洋美術館 65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ」(国立西洋美術館、2024)、「Before/After」(広島市現代美術館、2023)、「DOMANI・明日展2021」(国立新美術館、東京)、個展「How Can It Be Recovered?」(メイトランド・リージョナル・アートギャラリー、オーストラリア、2020)、ヨコハマトリエンナーレ2020、長島有里枝 x 竹村京「まえ と いま」(群馬県立近代美術館、2019)、個展「どの瞬間が一番ワクワクする?」(ポーラ美術館アトリウムギャラリー、神奈川、2018)など。本展には、代表的なシリーズ〈修復〉のほか、インスタレーションによる新作《入ってもよろしいですか シーン1, 2, 3, 4, 5》(2023)などを発表する。
アンドロ・ウェクア(1977年ジョージア、スフミ生まれ)は、10代の頃にソ連崩壊に伴う内戦で父親を亡くし、その後スイスに移住、現在はベルリンに拠点を置く。アッサンブラージュ的な視覚効果によって、個人的、政治的な記憶の断片をステージ化し、個人的な世界を夢想的に構築する作品で知られる。近年の主な展覧会に、「Niko Pirosmani」(バイエラー財団美術館、バーゼル、2023)、個展「Dolphin in the Fountain」(TANK Shanghai、上海、2022)、「At Night. Between Dream and Reality– Sammlung Goetz im Haus der Kunst」(ハウス・デア・クンスト、ミュンヘン、2019)、個展「All is Fair in Dreams and War」(クンストハレ・チューリッヒ、2018)など。本展には、ウェクアの代表的な作品のひとつで、かつて居住し、現在は戻れなくなった故郷スフミの家をモデルに彫刻化した《タイトル未定(家)》(2012)をはじめ、絵画や彫刻を出品する。
竹村京「ホーム・スイート・ホーム」展示風景(国立国際美術館、2023年)撮影:福永一夫 Courtesy of the artist and Taka Ishii Gallery
アンドロ・ウェクア《Yet to be titled (the house)》2012年 Photo by David Regen ©Andro Wekua, Courtesy of the artist, Gladstone Gallery, and Take Ninagawa
関連イベント
オープニング・トーク ※既に終了
2024年10月12日(土)14:00–15:30(開場:13:30)
出演:本展出品作家、植松由佳(本展企画者、国立国際美術館学芸課長)
会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 2階ミュージアムホール
定員:170名
参加料:無料
https://www.mimoca.org/ja/events/2024/09/09/3051/
竹村京パフォーマンス/公開修復
2024年11月17日(日)
パフォーマンス:14:00-14:20/公開修復:15:30-16:30頃
※竹村京によるパフォーマンス《May I enter? scene 1, 2, 3, 4, 5》を上演
キュレーターズ・トーク
2024年11月3日(日)、12月1日(日)、2025年1月5日(日)各日14:00–
担当:竹崎瑞季(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館キュレーター)
参加料:無料(要観覧券)
※申込不要、当日1階受付前に集合
親子でMIMOCAの日
2024年10月19日(土)、10月20日(日)各日10:00–18:00(入館は閉館30分前まで)
高校生以下または18歳未満の観覧者1名につき、同伴者2名まで観覧無料