山城知佳子《ベラウの花》2023年 ©️Chikako Yamashiro, Courtesy of Yumiko Chiba Associates
山城知佳子 ベラウの花
2023年3月21日（火・祝）– 6月4日（日）
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
https://www.mimoca.org/
開館時間：10:00–18:00 入館は閉館30分前まで
休館日：月
企画担当：松村円（丸亀市猪熊弦一郎現代美術館学芸員）
展覧会URL：https://www.mimoca.org/ja/exhibitions/2023/03/21/2652/
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館では、出身地の沖縄を舞台に、肉体や声など身体を通じて問題を提起する映像や写真を制作してきた山城知佳子の西日本初の大規模個展『ベラウの花』を開催する。本展では、山城の初期作品から、パラオ共和国を訪れて制作された新作《ベラウの花》（2023）までを通観し、彼女が何を眼差し、他者の声にどのように応答しながら制作してきたか、その道筋をたどる。
山城知佳子（1976年沖縄県生まれ）は、写真と映像を制作の軸に、初期から一貫して、沖縄に暮らすことで意識に上ってくる事象を取り上げた作品で高く評価されてきた。近年は政治、社会、文化、自然環境といったさまざまな面から現在の沖縄に迫り、長期的な視野をもって、過去と現在を結びつけた物語性の高い作品を制作している。それらの作品では、複雑に絡み合う現実が、その複雑さのままに扱われるが故に豊かな物語へと転換され、現実に過度に縛られない強さとしなやかさを感じさせるものとなっている。近年の主な展覧会に『Tokyo Contemporary Art Award2020-2022受賞記念展』（東京都現代美術館、2022）、『Chinbin Western Chikako Yamashiro』（ダンディー・コンテンポラリー・アーツ、イギリス、2021）、『東日本大震災10年 あかし testaments』（青森県立美術館、2021）、第11回ソウル・メディアシティ・ビエンナーレ（2021）、個展『山城知佳子 リフレーミング』（東京都写真美術館、2021）など。
山城知佳子《チンビン・ウェスタン 家族の表象》2019年 ©️Chikako Yamashiro, Courtesy of Yumiko Chiba Associates
山城知佳子《彼方》2022年 ©️Chikako Yamashiro, Courtesy of Yumiko Chiba Associates
本展では、山城初期作品となる2004年の「オキナワTOURIST」３部作から、本展にあわせて制作された《ベラウの花》までの約20点を展観することで、山城の作品世界を紹介していく。新作の《ベラウの花》は、パラオ共和国のコロール島、バベルダオブ島、アンガウル島を訪れ、各所にある慰霊碑、戦車や司令部といった戦跡、学校や病院跡地などへの調査・取材、日本統治時代に教育を受けた高齢者へインタビューなどのリサーチを経て制作された。また、名護市安和の鉱山地帯を舞台にふたつの家族の物語を中心に描いた《チンビン・ウェスタン 家族の表象》（2019）や、認知症を発症した戦争経験者の記憶について取り上げた《彼方》（2022）、新作《ベラウの花》を含む５点の映像作品は、作品相互の結びつきに着目したインスタレーションとして、各作品の音が意図的に混ざり合い、個々の作品がもつ時間と空間を拡張させる構成となる。ほかに、米軍基地敷地内の黙認耕作地に実在する闇市で肉屋を営む女性を主人公とし、日本・米国・沖縄の関係、失業、開発と環境破壊、女性の権利などの諸問題が複雑に絡み合った今日の沖縄社会を比喩的に描いた《肉屋の女》（2012）、初老の女性の聞き取れないつぶやき、彼女が海中に投げる花束のようなマイクの束、そのマイクの束を追いかけるように潜行する若い女性ダイバーの呼吸音や泡の音と、抽象的でメタフォリカルな表現により人々の発する言葉にならない声を可視化した《沈む声、紅い息》（2010）なども出品される。
山城知佳子《肉屋の女》2012年 ©️Chikako Yamashiro, Courtesy of Yumiko Chiba Associates
山城知佳子《沈む声、紅い息》2010年 ©Chikako Yamashiro, Courtesy of Yumiko Chiba Associates
関連イベント
アーティスト・トーク
講師：山城知佳子
2023年3月21日（火・祝）14:00-
会場：丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 2Fミュージアムホール
定員：170名
料金：無料（申込不要）