回復する @ 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館


兼子裕代《Mirrors of Happiness》2023年 作家蔵 ©KANEKO Hiroyo Courtesy of The Third Gallery Aya

 

回復する
2023年12月23日(土)-2024年3月10日(日)
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 3階展示室C
https://www.mimoca.org/
開館時間:10:00–18:00 入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし1/1、1/8、2/12は開館)、12/26-12/31、1/4、1/9、2/13
担当キュレーター:松村円(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館学芸員)
展覧会URL:https://www.mimoca.org/ja/exhibitions/2023/12/23/2929/

 

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館では、新型コロナウイルス感染症の始まりから約3年が経った現在、猪熊弦一郎、大岩オスカール、兼子裕代、小金沢健人、畠山直哉、モナ・ハトゥム、米田知子の7人の作品を通じて、私たちはどのように自己を回復し、進んでいくことができるかを考察する展覧会「回復する」を開催する。

2020年から約3年が経過し、以前と変わらないような日々を得た人もいれば、まだその渦中にある人もいるように、一様に復調したとは言えないなか、新たな争いや災害は起こり、平穏な日々を得ることの難しさに直面している。一方で、私たちはこれまでにも誰もが大小さまざまな出来事を経験し、それぞれの傷を内包しながら時を重ね進んできた。本展では、私たちが日々を続けるための推進力としての、社会や自己のあり方の問い直し、他者との関わり、時間の経過など、地道な手段に着目し、表現の形もそれぞれ異なる7名のアーティストの作品を通して、弱った心身を受容しながら生きる術を考える。

 


大岩オスカール《虹》2003年 高松市美術館蔵


米田知子《馬・避難した村・飯舘村・福島》2011年 東京都写真美術館蔵 ©Tomoko YONEDA Courtesy of ShugoArts

 

第1章「世界を考える」では、大岩オスカール、モナ・ハトゥム、米田知子の作品を通して、何かの衝撃で簡単に崩れてしまう脆い社会に、光ある世界を創造する可能性を探る。大岩オスカール(1965年サンパウロ生まれ)は、社会の情勢と個人の生活が重ね合わさった地点から自身に見える、欲求する世界を描いてきた。本展出品作品は、アメリカ同時多発テロ事件が起こった翌年、制作拠点を東京からニューヨークに移した大岩が、雲の間に見た虹に明るい未来を感じた体験から制作した絵画作品。モナ・ハトゥム(1952年ベイルート生まれ)は、ロンドン滞在中の1975年にレバノン内戦が勃発したため、帰国を断念しロンドンに留まり美術を学び、ジェンダーの問題や紛争、移住をテーマに幅広い表現を展開してきた。本展では、透明なガラスのビー玉を世界地図の形に配した作品を発表。ビー玉が床に固定されておらず、鑑賞者の動きによる振動で地図の形を崩してしまうような脆弱で不安定な構造を持つ本作は、同時に、床面を危険で通行不可能なものすることで、不安定な地理をも暗示する。米田知子(1965年兵庫県生まれ)は、日本を含むアジア、ヨーロッパなど各地の紛争や戦争、震災といった歴史的な事象が起こった土地を訪れ、徹底的なリサーチを元に現在の姿を撮影し、その風景がもつ記憶と歴史を呼び起こす写真作品を発表してきた。本展では、広島平和記念公園、靖国神社、福島県飯舘村といった場所を訪れ、撮影した「積雲」シリーズ(2011-2012)を発表し、日本の近現代史を問い、今を考え、これからの社会を創造する起点とする。

第2章「個人として」では、小金沢健人の新作を頼りに、私たちはいつも他者とともにあること、異なる者同士が交差する地点で起こるさまざまな出来事を引き受け、その接点を更新しながら人生が進んでいくことについて考える。小金沢健人(1974年東京都生まれ)は、映像やドローイングに加えて、光や煙、音、日用品なども用いて空間を変容させる表現を発表してきた。本展には、数年来取り組んでいる、ずれる2枚の紙の重なりの両方にまたがって描くドローイングと映像の作品を発展させた新作を出品。

 


小金沢健人《レモンとトマト》2023年


小金沢健人「Double Sisters」2022年より

 

第3章「自然の姿から」では、時に大きな被害をもたらし、その一方で圧倒的な生の姿を現しもする、人間の意志の及ばない自然の力に着目し、畠山直哉の写真作品を紹介する。畠山直哉(1958年岩手県生まれ)は、石灰石鉱山とセメント工場、鉱山の発破の瞬間、都市の地下水路など、都市・自然・写真の関わりをテーマに写真作品を制作してきた。本展では、東日本大震災の大津波の影響で半分の枝が枯れながらも、もう半分の枝に緑の葉を茂らせるオニグルミの木との出会いをきっかけに制作を始めた「津波の木」シリーズを発表する。

第4章「新たな希望を」では、兼子裕代と猪熊弦一郎の作品を通して、たとえ自身を喪失するようなことを経験しても、何かをきっかけとして自己を取り戻し、新たな希望を得られることを確認する。兼子裕代(青森県生まれ)は、ロンドンで写真を学んだのち、2002年よりアメリカ合衆国を拠点に活動。本展では、オークランドにある、元受刑者が社会復帰をするための受け入れに取り組む植物栽培園で、自身も働きながら、同園の様子やスタッフを捉えた新作を発表する。猪熊弦一郎(1902-1993/香川県生まれ)の本展出品作品は、妻を亡くした後しばらくして集中的に描き始めた「顔」シリーズ。亡くなった妻の顔を求めて描きはじめたという側面を持つ同シリーズだが、制作を続けることで「絵として美しいもの」を描こうとする猪熊本来の絵画への向き合い方へと移行していった。

 


畠山直哉《2019年10月6日 岩手県陸前高田市》2019年 ©Naoya Hatakeyama Courtesy of Taka Ishii Gallery


猪熊弦一郎《顔7》1988年 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館蔵 ©公益財団法人ミモカ美術振興財団

 

関連イベント
ワークショップ「つないでつくる つなぎんぐ」 ※既に終了
2023年11月12日(日)13:30–16:30
講師:小金沢健人(アーティスト)
会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 2階造形スタジオ
定員:15名(要申込)
対象:小学5年生〜大人
参加料:無料
https://www.mimoca.org/ja/workshop/2023/11/12/2910/

ワークショップ「日光で描くフォトグラム~青写真をつくろう!」
2024年2月12日(月・祝)10:00–16:00(45分間の昼休憩を含む)
講師:兼子裕代(アーティスト)
会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 2階造形スタジオ、館外
定員:15名(応募多数の場合は抽選)
対象:小学1年生〜大人
参加料:無料
※内容の詳細、申込方法・受付は、12月中旬ごろ公開予定

キュレーターズ・トーク
2024年1月7日(日)、2月4日(日)、3月3日(日)各日14:00–
担当:松村円(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館学芸員)
参加料:無料(要観覧券)
※申込不要、当日1階受付前に集合

親子でMIMOCAの日
2024年1月20日(土)、1月21日(日)各日10:00–18:00(入館は閉館30分前まで)
高校生以下または18歳未満の観覧者1名につき、同伴者2名まで観覧無料

 


同時開催
常設展「猪熊弦一郎展 好奇心と素直さ」
2023年12月23日(土)-2024年3月10日(日)
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

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