ホーム・スイート・ホーム @ 国立国際美術館


アンドロ・ウェクア《Yet to be titled (the house)》, 2012年
Photo by David Regen©Andro Wekua, Courtesy of the artist, Gladstone Gallery, and Take Ninagawa

 

ホーム・スイート・ホーム
2023年6月24日(土)-9月10日(日)
国立国際美術館
https://www.nmao.go.jp/
開館時間:10:00–17:00(金、土は20:00まで)入場は閉館30分前まで
休館日:月(ただし7/17は開館)、7/18
展覧会担当:植松由佳(国立国際美術館学芸課長)
展覧会URL:https://www.nmao.go.jp/events/event/20230624_homesweethome/

 

国立国際美術館では、歴史、記憶、アイデンティティ、私たちの居場所、役割などをキーワードに表現された作品群から、私たちにとっての「ホーム」——家そして家族とは何か、私たちが所属する地域、社会の変容、普遍性を浮かび上がらせることを試みる展覧会「ホーム・スイート・ホーム」を開催する。

「ホーム」には、私たちが過ごす物質的な家、また家に集う集合体である家族、故郷そして祖国という意味がある。2020年初頭に登場した新型コロナ感染症拡大によって生活様式が変化する中、予防の観点から「ステイホーム」という言葉が頻繁に使われるようになった。また、パンデミック以前から世界各地における難民問題はあったが、昨年2月のウクライナへのロシア侵攻も多数の新たな難民を生み出し、祖国・故郷というホームの別義に含まれる意味を社会に突きつけた。「ホーム」が含む意味に対して意識的、無意識的に思いを巡らす機会が増えた今、愛しい我が家などとも訳せられ用いられてきた「ホーム・スイート・ホーム」について、展覧会を通じて考察する。

 


鎌田友介《The House》2018年 “How Little You Know About Me” Courtesy of MMCA, Korea / Photograph by Moon June Hee (参考図版)


マリア・ファーラ《テラスのある部屋》2021年 国立国際美術館所蔵

 

鎌田友介(1984年神奈川県生まれ)は、歴史や社会の状況を反映するとともに、国家の文化やアイデンティティ形成のツールにもなる建築をテーマに美術と建築を横断する活動を続けてきた。日本、韓国、台湾、ブラジルなどに建てられた20世紀の歴史が交錯する日本家屋をリサーチしてきた鎌田は、忘れ去られていく現代日本の歴史を展示室内に作品を通じて再構築する。鎌田は昨年、釜山ビエンナーレ2022や香港のCHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)の「Spinning East Asia Series II: A Net (Dis)entangled」などに参加し、「VOCA展2022 現代美術の展望―新しい平面の作家たち」では奨励賞を受賞。2023年には第1回福岡アートアワード市長賞も受賞している。

アンドロ・ウェクア(1977年ジョージア、スフミ生まれ)は、ソ連崩壊に伴う内戦で父親を亡くし、その後スイスに移住、現在はベルリンに拠点を置く。断片的な記憶を組み合わせた独特な世界観を絵画、彫刻を通じて表現している。2011年には第54回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2011)に参加。近年の主な個展に「Dolphin in the Fountain」(TANK上海、2022)、「All is Fair in Dreams and War」(クンストハレ・チューリッヒ、2018)、「Dolphin in the Fountain」(ガレージ現代美術館、2018)などがある。

マリア・ファーラ(1988年フィリピン、カバナチュアン生まれ)は、幼少期を日本の下関市で過ごした後、15歳よりロンドンに移住。日常のふとした瞬間や記憶の断片から構築される新たな情景を、多彩な筆使いで描いた絵画で知られる。オオタファインアーツ(東京/シンガポール)やmother’s tankstation(ロンドン/ダブリン)などで個展を重ねるほか、「ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術―いつ・どこで・だれに・だれが・なぜ・どのように?―」(水戸芸術館現代美術ギャラリー、2023)、「Day Tripper」(Focal Point Gallery、エセックス州サウスエンド=オン=シー、2019)といったグループ展で作品を発表している。

石原海(1993年東京都生まれ)は、愛、ジェンダー、個人史と社会をテーマに、実験的な映画作品やビデオインスタレーションを発表してきた。現実の出来事を軸に、独自のセンスでフィクションや物語的な要素を加えて構築する作品は、現代社会の一面や心の機微を丁寧に捉える。2019年には初の長編映画『ガーデンアパート』が短編作品『忘却の先駆者』とともにロッテルダム国際映画祭Bright Future部門で上映され、ロンドンのサウスロンドン・ギャラリーで開かれた「Bloomberg New Contemporaries 2019」で作品を発表。2021年には第15回shiseido art eggに入選し、資生堂ギャラリーで個展「重力の光」を開催。2022年には映画『重力の光 祈りの記録篇』をイメージフォーラムなど全国劇場公開。2023年には第1回福岡アートアワード優秀賞を受賞。

竹村京(1975年東京都生まれ)は、写真やドローイングに刺繍を施した布を重ねたインスタレーションを中心に、失われたものの存在やその記憶を扱う作品を展開している。2000年に留学したベルリンに、東京藝術大学美術研究科を修了した2002年に拠点を移し、以来、2015年に帰国するまで同地を拠点に活動。2015年の帰国後は高崎に拠点を移した。主な個展に「How Can It Be Recovered?」(メイトランド・リージョナル・アートギャラリー、オーストラリア、2020)、「どの瞬間が一番ワクワクする?」(ポーラ美術館アトリウムギャラリー、神奈川、2018)。主なグループ展、国際展に「DOMANI・明日展2021」(国立新美術館、東京)、ヨコハマトリエンナーレ2020、長島有里枝 x 竹村京「まえといま」(群馬県立近代美術館、2019)など。

潘逸舟(1987年上海生まれ)は、社会と個の関係の中で生じる疑問や戸惑い、また、社会を形成する秩序やそこから生じる境界などについて、自らの身体や身の回りの日用品を用いて表現してきた。幼い頃に上海から青森に移り、日本で生活してきた潘自身の経験や視点がその制作の根底を為す。近年の主な展覧会に、国際芸術祭「あいち2022」、「りんご宇宙 —Apple Cycle / Cosmic Seed」(弘前れんが倉庫美術館、2021)、「MOT アニュアル 2021 海、リビングルーム、頭蓋骨」(東京都現代美術館、2021)、個展「The Drifting Thinker」(MoCA Pavilion、上海現代美術館、​2017)、「In the Wake – Japanese Photographers Respond to 3/11」(ボストン美術館、2015/ジャパンソサエティー、ニューヨーク、2016)など。日産アートアワード2020ではグランプリを受賞。

なお、ソンファン・キム(1975年ソウル生まれ)は、7月にスクリーニングとレクチャープログラムで、リディア・ウラメン(1992年アルジェリア、サイダ生まれ)は、8月にレクチャープログラム、および出品作家として展覧会に参加する。

 


潘逸舟《ほうれん草たちが日本語で夢を見た日》2020年 神戸アートビレッジセンター サウンドインスタレーション、ダンボール箱 Dimensions variable 撮影:表恒匡 ©Ishu Han 展示風景:ART LEAP 2019「いらっしゃいませようこそ」神戸アートビレッジセンター (兵庫) 2020年 写真提供:新開地アートひろば (旧称:神戸アートビレッジセンター)

 

関連イベント
アーティスト・トーク
2023年6月24日(土)14:00–
講師:マリア・ファーラ、竹村京、アンドロ・ウェクア
2023年6月25日(日)14:00–
講師:鎌田友介、潘逸舟
会場:国立国際美術館 B1階講堂
定員:先着100名 ※当日10:00から整理券配布(1名につき1枚)
参加費:無料
※逐次通訳付

ワークショップ「ことばを縫う / Sewing the words」
2023年7月29日(土)13:00–17:00
みなさんといっしょに考えたり作ったりするひと:潘逸舟
会場:国立国際美術館
対象:外国もしくは日本にルーツをもつ小学3年生〜高校3年生
定員:10名
募集締切:2023年7月20日(木)
※応募者多数の場合は抽選
詳細は公式ウェブサイトを参照
https://www.nmao.go.jp/events/event/workshop_20230729/

 

同時開催
コレクション1 80/90/00/10
2023年6月24日(土)-9月10日(日)
国立国際美術館
https://www.nmao.go.jp/events/event/collection20230624/

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