私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために @ 森美術館


モニラ・アルカディリ《恨み言》(イメージ図)2023年

 

私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために
2023年10月18日(水)-2024年3月31日(日)
森美術館
https://www.mori.art.museum/
開館時間:10:00–22:00(ただし、1/2、3/19を除く火曜と10/26は10:00–17:00)最終入館は閉館30分前まで
会期中無休
企画:マーティン・ゲルマン(森美術館アジャンクト・キュレーター)、椿玲子(森美術館キュレーター)
第2章ゲスト・キュレーター:バート・ウィンザー゠タマキ(カリフォルニア大学アーバイン校美術史学科教授、美術史家)
展覧会URL:https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/eco/

 

森美術館では、世界共通の喫緊の課題である環境危機に対する現代美術からの応答として、世界16カ国34人のアーティストの作品を通じて、ともに未来の可能性を考える展覧会「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」を開催する。

産業革命以降、特に20世紀後半に人類が地球に与えた影響は、それ以前の数万年単位の地質学的変化に匹敵すると考えられる中で、環境危機は喫緊の課題であり、近年、国際的なアートシーンにおいても重要なテーマとして、しばしば展覧会に取り上げられてきた。本展は、「私たちのエコロジー:地球という惑星を生きるために」をタイトルに掲げることで、そこに示された私たちとは誰か、地球環境は誰のものなのかという問いを考察し、人間中心主義的な視点のみならず、地球という惑星を大局的な視点から見渡せば、地球上にはいくつもの多様な生態系が存在することを再確認する機会となる。また本展では、できる限り作品というモノ自体の輸送を最小限にし、アーティスト本人が来日し、新作を制作したり、可能な限り資源を再生利用するなどサステナブルな展覧会制作についても検討、アーティストを文化の媒介者と捉え、モノの移動よりも、人的なネットワークや繋がりを構築することにエコロジカルな価値を見出そうと試みる。

 


ハンス・ハーケ《海浜汚染の記念碑》(《無題》1968-1972/2019年の部分)1970年 Courtesy: Paula Cooper Gallery, New York © Hans Haacke / Artists Rights Society (ARS), New York


ニナ・カネル《マッスルメモリー(7トン)》2022年 展示風景:「Tectonic Tender」ベルリーニッシェ・ギャラリー(ベルリン)撮影:Nick Ash ※参考図版

 

本展は、国際的に活動してきたアーティストによる歴史的な作品から本展のための新作まで、さまざまな表現を4章立てで紹介する。第1章「全ては繋がっている」では、ハンス・ハーケが社会や経済のシステムと、動物や植物などの生態系とをつなぐ視点で撮影した記録写真の展示、有機物である貝殻がセメントなどの建材に変換されるプロセスを来場者自身に追体験させるニナ・カネルの大規模なインスタレーションなどを通じて、環境や生態系と人間の政治経済活動が複雑に絡み合う現実に言及する。

続く第2章「土に還る」には、ゲスト・キュレーターに日本の近現代美術を中心に、エコロジー、物質性、トランスナショナル性に重点をおいて研究しているバート・ウィンザー゠タマキ(カリフォルニア大学アーバイン校美術史学科教授、美術史家)を招聘。高度経済成長期の裏で、自然災害や工業汚染、放射能汚染などに起因する深刻な環境問題に見舞われた日本において、1950年代以降の日本人アーティストが環境問題に対してどのように向き合ってきたのかを時系列に考察しながら、10年毎の代表的な表現方法の変遷を辿る。

 


鯉江良二《土に還る(1)》1971年 所蔵:常滑市(愛知)撮影:怡土鉄夫


保良雄《fruiting body》2022年 展示風景:Reborn-Art Festival 2021-22:利他と流動性 [後期] 撮影: 齋藤太一 ※参考図版

 

第3章「大いなる加速」では、地球上のあらゆる資源を利用して文明を発展させ、工業化、近代化、グローバル化を押し進めてきた人類による過度な地球資源の開発の影響を明らかにすると同時に、こうした人類にとって喫緊の課題を批判的な視点で分析しつつ、現状を取り巻く文化的、歴史的背景を題材とする作品を通じて、より広い視点から地球資源と人間の関係を再考する。本章では、モニラ・アルカディリは養殖真珠を主題に、自然の生態系に深く介入する人間の欲望と夢について探究した新作、保良雄は、何億年もかけて自然に形成された大理石とゴミを高温で溶解したスラグとを並置し、目の前に置かれたモノから異なる時間軸を想像させる作品を発表するなど、古代の神話から個人的な経験、社会問題、環境危機まで、それぞれの作品が、地球資源と人類との多様な関わり合いを示唆する。

第4章「未来は私たちの中にある」では、モダニズムの進歩と終わりのない成長原理への疑問、アクティビズム、先住民やフェミニズムの視点、精神性(スピリチュアリティ)、デジタル・イノベーションがもたらす可能性とリスクなど、さまざまな叡智を顧みながら、地球の未来を再考する。本章では、1982年にニューヨークのマンハッタンに麦畑を出現させることで、開発主義へ疑問を呈したアグネス・デネス、雑草を癒しをもたらすものとして再認識すべく、六本木ヒルズのコミュニティと協働するプロジェクトを試みたジェフ・ゲイス、複数の人間で共有し演奏する楽器のような陶器を制作する西條茜らの作品を紹介する。

 


西條茜《果樹園》2022年 展示風景:「Phantom Body」アートコートギャラリー(大阪) 2022年 撮影:来田猛

 

参加アーティスト
モニラ・アルカディリ、マルタ・アティエンサ、ニナ・カネル、ジュリアン・シャリエール、イアン・チェン、アリ・シェリ、アグネス・デネス、ジェフ・ゲイス、ハンス・ハーケ、シェロワナウィ・ハキヒウィ、ピエール・ユイグ、ヨッヘン・ランパート、松澤宥、アナ・メンディエータ、ケイト・ニュービー、アサド・ラザ、西條茜、エミリヤ・シュカルヌリーテ、ダニエル・ターナー、セシリア・ヴィクーニャ、アピチャッポン・ウィーラセタクン、保良雄
「第2章 土に還る 1950年代から1980年代の日本におけるアートとエコロジー」参加アーティスト
藤田昭子、桂ゆき、木村恒久、鯉江良二、工藤哲巳、村岡三郎、長澤伸穂、中西夏之、中谷芙二子、岡本太郎、谷口雅邦、殿敷侃

 

関連プログラム
アーティストトーク
2023年10月18日(水)18:30-20:30(開場:18:15)
出演:モニラ・アルカディリ、ニナ・カネル、ケイト・ニュービー、アサド・ラザ
会場:森美術館オーディトリアム
定員:70名(要予約、先着順)※申込期間(9/29-10/16)
料金:無料(当日有効の展覧会チケットが必要)
※日英同時通訳・手話同時通訳付
※手話同時通訳希望者は、イベント名を明記の上、10/11までに「mam-learning@mori.co.jp」に連絡
https://www.mori.art.museum/jp/learning/6875/

トーク「土に還る 1950年代から1980年代の日本におけるアートとエコロジー」
2023年10月19日(木)18:30-20:00(開場:18:15)
出演:バート・ウィンザー゠タマキ(本展第2章ゲスト・キュレーター、カリフォルニア大学アーバイン校美術史学科教授、美術史家)
会場:森美術館オーディトリアム
定員:70名(要予約、先着順)※申込期間(9/29-10/17)
料金:無料(当日有効の展覧会チケットが必要)
※日英同時通訳・手話同時通訳付
※手話同時通訳希望者は、イベント名を明記の上、10/11までに「mam-learning@mori.co.jp」に連絡
https://www.mori.art.museum/jp/learning/6877/

 


同時開催
MAMコレクション017:さわひらき
2023年10月18日(水)-2024年3月31日(日)
企画:矢作学(森美術館アシスタント・キュレーター)
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/mamcollection017/

MAMスクリーン018:カラビン・フィルム・コレクティブ
2023年10月18日(水)-2024年3月31日(日)
企画:矢作学(森美術館アシスタント・キュレーター)
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/mamscreen018/

MAMプロジェクト031:地主麻衣子
2023年10月18日(水)-2024年3月31日(日)
企画:熊倉晴子(森美術館アシスタント・キュレーター)
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/mamproject031/

 


関連企画
エコロジー:循環をめぐるダイアローグ ダイアローグ1「新たな生」崔在銀展
2023年10月14日(土)-2024年1月28日(日)
銀座メゾンエルメス フォーラム
https://www.hermes.com/jp/ja/story/maison-ginza/forum/231014/

エコロジー:循環をめぐるダイアローグ ダイアローグ2「つかの間の停泊者」ニコラ・フロック、ケイト・ニュービー、保良雄、ラファエル・ザルカ
2024年2月16日(金)-5月31日(金)
銀座メゾンエルメス フォーラム

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