キム・アヨン《デリバリー・ダンサーズ・スフィア》2022年
マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート
2025年2月13日(木)-6月8日(日)
森美術館
https://www.mori.art.museum/
開館時間:10:00–22:00(ただし、4/29と5/6を除く火曜は10:00-17:00)入館は閉館30分前まで
会期中無休
企画担当:片岡真実(森美術館館長)、マーティン・ゲルマン(森美術館アジャンクト・キュレーター)、矢作学(森美術館アソシエイト・キュレーター)
アドバイザー:畠中実(NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]主任学芸員)、谷口暁彦(メディア・アーティスト)
展覧会URL:https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/machine_love/index.html
森美術館では、ゲームエンジン、人工知能(AI)、仮想現実(VR)、さらには人間の創造性を超え得る生成AIなどのテクノロジーを採用した現代美術を紹介する展覧会「マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート」を開催する。
テクノロジーとアートの関係性は、コンピューター・アート、ビデオ・アートなど、その歴史を通じて常に併走してきたと言える。仮想空間と現実世界が密に接続し、AI技術が飛躍的に発展、新しいテクノロジーが日常生活に急速に浸透するといった環境は、アーティストの創造活動に新しい可能性をもたらす一方で、生成AIの登場が人類の創造力にとっての脅威とも見做されるなど、現代美術の文脈にも大きな影響をもたらしている。20世紀初頭には機械のスピード感やダイナミズムが象徴する新しい時代を「マシン・エイジ」と呼んだが、本展では、従来の重工業的な「機械」のイメージとしてではなく、コンピューターおよびハードウェアの総称として「マシン」という語を使用し、コンピューターやインターネットに深く関わる新しい「マシン」時代のアートに注目。現代美術に限らず、デザイン、ゲーム、AI研究などの領域で高く評価されるアーティスト、クリエイター12組が、生物学、地質学、哲学、音楽、ダンス、プログラミングなどの領域とのコラボレーションを通じて制作した作品が集まる、人類とテクノロジーの関係を考えるプラットフォームとして、不確実な未来をよりよく生きる方法をともに想像する機会を目指す。
ビープル《ヒューマン・ワン》2021年 展示風景:「ビープル:ヒューマン・ワン」M+(香港)、2022-2023年 撮影:ロク・チェン
ディムート《エル・トゥルコ》(イメージ図)2024年
4章構成となる本展は、2007年から毎日デジタル作品を制作し、オンライン投稿するプロジェクト「エブリデイズ」に取り組み、2021年にクリスティーズのオークションでNFT作品《エブリデイズ:最初の5000日》(2021)が記録的な高値で落札されたことにより注目されたビープル(本名:マイク・ウィンクルマン)のビデオ彫刻《ヒューマン・ワン》(2021)で始まる。「デジタル世界のキャラクター、生命、人間や都市とのインタラクション」と題した最初の章では、ピープルのほか、ゲーム制作に使われる素材データ「アセット」を大量に用いて、どこか不穏で不条理な世界を描いた映像作品を制作する佐藤瞭太郎、AI言語モデルに関心を持ち、機械と人間の関係を問いかけてきたディムート、地政学、神話、テクノロジー、未来的な図像が融合した「スペキュラティブ・フィクション」と呼ばれる物語を基に、ビデオ、VR、ゲーム・シミュレーションなどを制作するキム・アヨンの作品を紹介。なかでも、コロナ禍で注目された自宅等への配達サービスのため、他者と接触せず、都市における不可視の存在として最短距離、最短時間に挑む女性配達ライダーを主人公とするキム・アヨンの映像作品《デリバリー・ダンサーズ・スフィア》(2022)は、2023年にメディア・アート界の世界的な賞「アルス・エレクトロニカ賞」のニュー・アニメーション・アート部門でゴールデン・ニカ賞(グランプリ)を受賞、2024年には国立アジア文化殿堂(ACC)の第1回フューチャー・プライズを受賞するなど、注目の作品。
続く「テクノロジーと人間の精神性、仏教的な世界観」をテーマとする章では、自身もチベット仏教の実践者であり、人間の身体と意識について根源的な問いを投げかける新しいテクノロジーや大衆文化を通して、仏教的な叡知を浮き彫りにする映像作品を発表してきたルー・ヤン、アフリカ系アメリカ人たちがあるべき未来を描くアフロ・フューチャリズムや、新しいテクノロジーが、従来のアナログな産業構造下では弱者にある黒人やLGBTQ+をその枠組みから解放し、コミュニティーにもたらす可能性について探る映像作品を制作してきたジャコルビー・サッターホワイトを紹介する。
ルー・ヤン(陸揚)《独生独死—自我》2022年 音楽:liiii
ジャコルビー・サッターホワイト《メッター・プレイヤー(慈悲の瞑想)》2023年 Courtesy:Mitchell-Innes & Nash, New York
シュウ・ジャウェイ(許家維)《シリコン・セレナーデ》(イメージ図)2024年
「テクノロジーが描く風景―地質学的時間から果てしない未来へ」では、シュウ・ジャウェイ[許家維]、藤倉麻子、ヤコブ・クスク・ステンセン、アニカ・イ、アドリアン・ビシャル・ロハスの作品を紹介。テクノロジーの本質を金属や鉱物など地質学的な観点から捉え、無形のデータやクラウドではなく、物質としてのテクノロジーを起点に人類史をはるかに越えた時間軸へ想像を広げてきたシュウ・ジャウェイ。本展では、現代のデジタル・テクノロジー製品に不可欠な半導体ウェハ用シリコンが砂浜から採取できることに着想を得て、バーチャルな海辺、水中でのチェロ演奏シーン、台湾でAI専用チップを研究する工業技術研究院の映像などを、生成AIによる音楽とともに構成し、最新テクノロジーを素材レベルから考察する新作を発表する。藤倉麻子は3DCGによる動画を通じて、都市風景や工業製品などのテクスチャーやデジタル空間の光と影を探求しながら、独自のオアシスや庭園を創出。アニカ・イは長年の研究を通じて蓄積してきたイメージと、自身の初期作品のデータを融合させた絵画シリーズを発表する。
最終章となる「テクノロジーと人間―500年間の関係」は、AI研究の第一人者であるケイト・クロフォードが情報通信技術(ICT)研究者でアーティストのヴダラン・ヨレルと協働して描く《帝国の計算:テクノロジーと権力の系譜 1500-2025年》(2023)を紹介。16世紀以降のテクノロジーと権力の関係性を幅24メートルのインフォグラフィックにまとめた本作は、テクノロジーと人間の関係を500年以上の長い時間軸で据えることで、戦争、AI、気候危機といった今日の世界的な変革を、グーテンベルグの活版印刷術が大きな文化的変化をもたらした時代、植民地主義が始まった大航海時代にまで立ち返って考えさせる。
藤倉麻子+大村高広《記録の庭》2022年- ※参考図版
アニカ・イ《Wñ†§ñ0§R§》2024年 Courtesy:Gladstone Gallery © Anicka Yi / ARS, New York / JASPAR, Tokyo, 2024 G3616
ケイト・クロフォード、ヴラダン・ヨレル《帝国の計算:テクノロジーと権力の系譜 1500–2025年》 2023年 展示風景:「帝国の計算:テクノロジーと権力の系譜 1500–2025年」プラダ財団オッセルヴァトリオ(イタリア、ミラノ)、 2023-2024年 撮影:Piercarlo Quecchia – DSL Studio 画像提供:Fondazione Prada
関連プログラム
国際シンポジウム「ふたつの脳で生きる:AIとニュー・メディア・アートの女性たち」1日目 ※日英同時通訳、手話同時通訳付
2025年2月16日(日)14:00–17:30(開場:13:30)
パネルディスカッション1「1960-70年代ニュー・メディアの台頭と女性アーティストたち」
出演:ガブリエラ・アセヴェス・セパルヴェダ(サイモン・フレーザー大学インタラクティブ・アート&テクノロジー学部准教授)
ダリア・ミル(カールスルーエ・アート・アンド・メディアセンター(ZKM)・キュレーター兼リサーチ・アソシエイト)
イ・スジョン(韓国国立近現代美術館キュレーター)
カミーユ・モリノー(AWAREディレクター兼共同創設者)
ニーナ・ヴォルツ(AWAREアーカイブ・インターナショナル・デベロップメント部門ヘッド)
パネルディスカッション2「1990年代のデジタル領域におけるジェンダーとアートの再定義」
出演:カレン・チャン(サンフランシスコ近代美術館メディア部門キュレーター)
オウリマタ・グエ(美術評論家、キュレーター)
四方幸子(美術評論家、キュレーター)
片岡真実(森美術館館長)
国際シンポジウム「ふたつの脳で生きる:AIとニュー・メディア・アートの女性たち」2日目 ※日英同時通訳、手話同時通訳付
2025年2月15日(土)14:00–17:30(開場:13:30)
セッション1
出演:スプツニ子!(アーティスト)
聞き手:片岡真実(森美術館館長)
セッション2
出演:ディムート(アーティスト)
聞き手:マーティン・ゲルマン(森美術館アジャンクト・キュレーター)
セッション3
出演:藤倉麻子(アーティスト)
聞き手:矢作学(森美術館アソシエイト・キュレーター)
ラップアップ・ディスカッション
カミーユ・モリノー(AWAREディレクター兼共同創設者)
片岡真実(森美術館館長)
※1日目、2日目ともに
会場:TOKYO NODE HALL(虎ノ門ヒルズ ステーションタワー46階)※受付場所:ARRIVAL HALL(45階)
定員:各日150名(要予約、先着順)
料金:各日500円
1日目の申込:https://eventregist.com/e/GSkqS1Toe6sM
2日目の申込:https://eventregist.com/e/rU7PjVQuPXlj
同時開催
MAMコレクション019:視点―春木麻衣子、片山真理、米田知子
2025年2月13日(木)-6月8日(日)
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/mamcollection019/
MAMコレクション021:ガブリエル・アブランテス
2025年2月13日(木)-6月8日(日)
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/mamscreen021/
MAMリサーチ011:東京アンダーグラウンド 1960-1970年代―戦後日本文化の転換期
2025年2月13日(木)-6月8日(日)
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/mamresearch011/