シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝 @ 森美術館


シアスター・ゲイツ 展示風景:「シアスター・ゲイツ展:土の説教」ホワイトチャペル・ギャラリー(ロンドン)、2021-2022年 撮影:テオ・クリステリス 画像提供:ホワイトチャペル・ギャラリー(ロンドン)

 

シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝
2024年4月24日(水)-9月1日(日)
森美術館
https://www.mori.art.museum/
開館時間:10:00–22:00(ただし、4/30、8/13を除く火曜は10:00–17:00)最終入館は閉館30分前まで
会期中無休
企画:德山拓一(森美術館アソシエイト・キュレーター)、片岡真実(森美術館館長)
展覧会URL:https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/theastergates/

 

森美術館では、シカゴのサウスサイド地区を拠点に、黒人の歴史や社会的包摂に関する言説、地域論や土地開発に着目した幅広い制作活動で知られるシアスター・ゲイツのアジア最大規模の個展「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」を開催する。アメリカ合衆国の公民権運動の一翼を担ったスローガン「ブラック・イズ・ビューティフル」と日本の「民藝運動」の哲学を融合した独自の美学を表す「アフロ民藝」という実験的な試みを軸に、これまでの代表作のみならず、本展のための新作を含む日本文化と関係の深い作品などを紹介する。

シアスター・ゲイツ(1973年イリノイ州シカゴ生まれ)は、土という素材、客体性(鑑賞者との関係性)、空間と物質性などの視覚芸術理論を用いて、ブラックネス(黒人であること)の複雑さを巧みに表現してきた。これまでにホイットニー・ビエンナーレ2010やドクメンタ13(2012)、第56回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2015)、第14回イスタンブール・ビエンナーレ(2015)、「Grief and Grievance: Art and Mourning in Amrica」(ニューミュージアム、ニューヨーク、2021)、国際芸術祭 あいち2022といった国際展や企画展に参加。近年の主な個展に、「Amalgam」(パレ・ド・トーキョー、パリ、2019)、「The Black Image Corporation」(マルティン・グロピウス・バウ、ベルリン、2019)、「Assembly Hall」(ウォーカー・アート・センター、ミネアポリス、2019-2020)、「A Clay Sermon」(ホワイトチャペル・ギャラリー、ロンドン、2021)、「Black Chapel」(サーペンタイン・ギャラリー、ロンドン、2022)、「Young Lords and Their Traces」(ニューミュージアム、ニューヨーク、2022-2023)など。社会に向き合った活動を展開するアーティストを対象とするヴィラ・リスト美術・政治学センター賞(2012)やアルテス・ムンディ(2014)をはじめ、数々の美術賞を受賞。2019年には公益財団法人大林財団「都市のヴィジョン」の助成対象者に選ばれ、日本国内でリサーチプロジェクトも実施している。

 


シアスター・ゲイツ《ザ・リスニング・ハウス》2022年 展示風景:国際芸術祭「あいち2022」撮影:ToLoLo studio ※参考図版


シアスター・ゲイツ《へヴンリー・コード》2022年 レスリースピーカー、ハモンドオルガン「B-3」、サウンド サイズ可変 撮影:ジム・プリンツ・フォトグラフィー

 

本展は、常滑市で制作された陶芸と彫刻が融合した大型インスタレーション、歴史的資料のアーカイブ、タールを素材とした絵画、音響作品、映像作品など、過去の代表作から新作までを、その背景にある黒人史や黒人文化と併せて包括的に紹介する貴重な機会となる。

本展のタイトルに掲げられた「アフロ民藝」とは、ハイブリッドな文化の未来構想として描く、黒人の美学と日本の工芸の哲学を融合させた新たな美学のマニフェスト。ゲイツは黒人運動と民藝運動の両者に盲点や偏り、さらには否定的な意見を抱えつつも、地域性を称え、美への意識を高め、文化の力を尊ぶ、揺るぎない態度を持つという共通点を見てとる。本展では、アフリカ系アメリカ人の深層的な集団意識を象徴するものや、アフリカの工芸品と、日本の陶磁器や茶器、香具や酒器などの儀式で使われる道具とを大胆に組み合わせることにより、世代を超えて継承される工芸を称賛しつつ、新たな文化的価値を生み出そうと試みる。

また、長年にわたり手がける建築プロジェクトの中でも最も有名な「リビルド・ファウンデーション」(2009-)の活動も資料を通じて紹介する。ゲイツは、恣意的に隔離され、土地の所有や投資などの平等な権利を与えられなかった黒人が多数を占めるシカゴのサウス・サイドで廃墟となった40軒以上の建物を、誰もがアートや文化活動に参加できる空間に作り変えてきた。また、その活動には黒人の歴史と文化を記録する重要なコレクションの管理、保存、展示も含まれ、黒人の生活や暮らしについての雑誌『エボニー』『ジェット』を発行し、20世紀後半に全米の黒人社会で多大な影響力を持ったシカゴ拠点の出版社ジョンソン・パブリッシング・カンパニー(JPC)のアーカイブや、「ハウスのゴッドファーザー」として知られるDJ、故フランキー・ナックルズ(1955-2014年)が所有していたレコード・コレクションなど、文化的・歴史的に貴重な品々を地域住民に公開し、活動への参加を呼びかけている。

会期中には、聴覚や嗅覚に訴えかけるパフォーマンスや、常滑市にある旧土管工場(丸利陶管)でのインスタレーションなど、ゲイツの幅広い活動を紹介するさまざまなイベントを予定。詳細は公式ウェブサイトを参照。

 


シアスター・ゲイツ 展示風景:「シアスター・ゲイツ展:ブラック・イメージ・コーポレーション」プラダ財団オッセルヴァトリオ(ミラノ)、2018-2019年 撮影:デルフィーノ・シスト・レニャーニ、マルコ・カッペレッティ


シアスター・ゲイツ《ストーニー・アイランド・アーツ・バンク》(外観)2012年- 撮影:トム・ハリス 画像提供:ホワイト・キューブ


シアスター・ゲイツ《ストーニー・アイランド・アーツ・バンク》(内観)2012年- 撮影:トム・ハリス 画像提供:ホワイト・キューブ

 


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