森美術館開館20周年記念展 ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会 @ 森美術館

 

森美術館開館20周年記念展 ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会
2023年4月19日(水)– 9月24日(日)
森美術館
https://www.mori.art.museum/jp/
開館時間:10:00–22:00(火曜日は17:00まで。ただし5/2、8/15は22:00まで)入館は閉館30分前まで
休館日:会期中無休
企画担当:片岡真実(森美術館館長)、熊倉晴子(森美術館アシスタント・キュレーター)、近藤健一(森美術館シニア・キュレーター)、椿玲子(森美術館キュレーター)、德山拓一(森美術館アソシエイト・キュレーター)、矢作学(森美術館アシスタント・キュレーター)、マーティン・ゲルマン(森美術館アジャンクト・キュレーター)
展覧会URL:https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/classroom/index.html

 

森美術館では、未知の世界に出会い、学ぶ場として、学校で習う身近な教科を入り口にして現代アートを紹介する企画展『森美術館開館20周年記念展 ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会』を開催している。

1990年代以降、現代美術は欧米だけでなく世界の多様な歴史や文化的観点から考えられるようになった。それはもはや学校の授業で考える図画工作や美術といった枠組みを越え、むしろ国語・算数・理科・社会など、あらゆる科目に通底する総合的な領域ともいえるようになってきた。そこで本展では、学校で習う教科を現代美術の入口とし、見たことのない、知らなかった世界に多様な観点から出会う機会を提供する。また、森美術館の企画展としては初めて、出展作品約150点の半数以上を同館のコレクションが占めると同時に、ヤン・ヘギュやヤコブ・キルケゴール、宮永愛子などは新作も披露される。

出展作品は「国語」「社会」「哲学」「算数」「理科」「音楽」「体育」「総合」のセクションの下に展示されるが、実際には複数の科目や領域に通じており、セクションを越境する学びの場が50組を超える出展アーティストによって創出される。

 


米田知子《谷崎潤一郎の眼鏡―松子夫人への手紙を見る》(「見えるものと見えないもののあいだ」シリーズより)1999年 所蔵:森美術館(東京)


ワン・チンソン(王慶松)《フォロー・ミー》2003年 所蔵:森美術館(東京)

 

「国語」では、言葉や言語をテーマにした作品、文学や詩の要素を含む作品を紹介する。言語がその展開に重要な位置を占めたコンセプチュアル・アートの提唱者のひとりであるジョセフ・コスース、また言語を取り巻く政治性や社会性を題材としたスーザン・ヒラーが出展。ほかにも、国籍や人種、ジェンダーというアイデンティティをテーマとするミヤギフトシ米田知子王慶松(ワン・チンソン)、イー・イランの作品が展示される。
本展で最も大きなボリュームを占める「社会」では、「社会彫刻」という概念を提唱したヨーゼフ・ボイスが来日時に残した黒板に始まり、世界各地の歴史、政治、地理、経済、アイデンティティに関わる課題を取り上げる。美術史を主題とした艾未未(アイ・ウェイウェイ)や森村泰昌、戦争や暴力、災害が残したものに向き合うディン・Q・レ藤井光畠山直哉のほか、日本初展示となるパーク・マッカーサーは都市のアクセシビリティをテーマとした新作を発表。また、田村友一郎ク・ミンジャは、生活を取り巻く経済についての作品を出展する。

 


イー・イラン Courtesy: Silverlens Galleries, Manila/New York 展示風景:「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」森美術館(東京)2023年 撮影:古川裕也 画像提供:森美術館


アイ・ウェイウェイ(艾未未)展示風景:「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」森美術館(東京)2023年 撮影:古川裕也 画像提供:森美術館

 

生きることや世界の真理、普遍性を探究する分野である「哲学」では、明滅するLEDのカウンターによって仏教的な死生観をあらわす宮島達男、ものの存在や周囲との関係性を追求してきた李禹煥(リ・ウファン)、奈良美智の祈りをささげているかのような少女を描いた絵画などが展示される。
古くから芸術の分野にも関係してきた数字や時間といったテーマも含む「算数」のセクションでは、フィボナッチ級数をネオン管で表したマリオ・メルツの大型作品に始まり、片山真妃杉本博司の作品のほか、数学的な概念をパフォーマンスに投影した笹本晃の映像作品へと続く。
物理、生物、化学など、自然科学の領域を扱う「理科」では、さまざまな日用品が次々に連鎖反応を起こし、エネルギーを伝達してゆく様子を捉えたペーター・フィッシュリ&ダヴィッド・ヴァイスの映像作品、梅津庸一サム・フォールズの作品、ブラックライトを使用した田島美加の作品のほか、ナフタリンを用いた宮永愛子の新作を展示する。

 


宮永愛子《Root of Steps》2023年 制作協力:信越化学工業株式会社 Courtesy:ミヅマアートギャラリー(東京) 展示風景:「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」森美術館(東京)2023年 撮影:古川裕也 画像提供:森美術館


ヨハンナ・ビリング《マジカル・ワールド》2005年 Courtesy: Hollybush Gardens(ロンドン)

 

空気の振動という意味では科学的な領域でもある「音楽」では、音の不在を体感させるジョン・ケージの《4分33秒》を流用しピアニストと観客の両方に焦点を当て、沈黙の時間を演出するマノン・デ・ブールの映像作品のほか、アフガニスタンの夜景にイスラム教の詠唱が流れるアジズ・ハザラの詩的映像、旧ユーゴスラビアで内戦後に生まれた子どもたちが「マジカル・ワールド」を歌うヨハンナ・ビリングの作品、黒人女性を想起させる手の動きやサウンドに焦点を当てたマルティーヌ・シムズの作品などを紹介する。
「体育」のセクションでは、バレエを通じて規範と模倣を表現するクララ・リデン、歴史とそこからの解放といった「身体の政治性」を表象するクリスチャン・ヤンコフスキーの映像作品のほか、競技が行われるスタジアムの建築的な特徴に注目したり、マスメディアで映し出されるスポーツにも焦点を当て、この科目がもつ社会への広がりも考察する。
最後のセクションの「総合」では、単一の科目に収まらず、より幅広い領域を横断するような作品やプロジェクトを紹介する。ヴェネツィア・ビエンナーレ、ドクメンタ13などの大型国際展に招待されてきたヤン・ヘギュと、あいちトリエンナーレ2010にも出展した経験を持つヤコブ・キルケゴールが、本展のための新作を発表。また、演劇に基づいた方法論をもとに、東京という大都市の日常的な景色を私たち自身の意識によって変容させてゆく高山明のプロジェクトも紹介する。

 


ヤン・ヘギュ《ソニック・ハイブリッド——デュアル・エナジー》(《ソニック・ハイブリッド——冷却反転》と《ソニック・ハイブリッド——移り住む、オオタケにならって》)2023年 所蔵:森美術館(東京)撮影:Studio Haegue Yang


ヤコブ・キルケゴール《永遠の雲》2023年 展示風景:「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」森美術館(東京)2023年 撮影:古川裕也 画像提供:森美術館

 

同時開催
ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築
2023年3月17日(金)– 6月4日(日)
東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)
展覧会URL:https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/heatherwick/

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