生誕100年 大辻清司 眼差しのその先 フォトアーカイブの新たな視座 @ 武蔵野美術大学 美術館·図書館


大辻清司《界隈》1974年 フィルム原板からの出力 武蔵野美術大学 美術館·図書館所蔵

 

生誕100年 大辻清司 眼差しのその先 フォトアーカイブの新たな視座
2023年9月4日(月)-10月1日(日)
武蔵野美術大学 美術館展示室3・4・5
https://mauml.musabi.ac.jp/museum/
開館時間:11:00-19:00(土、日、祝は10:00-17:00)
休館日:水
監修:大日方欣一(九州産業大学芸術学部教授、九州産業大学美術館館長)
展覧会URL:https://mauml.musabi.ac.jp/museum/events/20681/

 

武蔵野美術大学 美術館·図書館では、同館が構成した「大辻清司フォトアーカイブ」に対する15年間にわたる研究の軌跡、とりわけ撮影フィルムの内容の精査によって得られた視座を軸に、大辻清司の真髄に迫るとともに、アート・アーカイブの活用の在り方を探る展覧会「生誕100年 大辻清司 眼差しのその先 フォトアーカイブの新たな視座」を開催する。

武蔵野美術大学 美術館·図書館は、大辻の自宅アトリエに残されていた写真プリント、その原板を含む撮影フィルム、作品掲載誌や蔵書、実際に使用していた撮影機材や暗室道具など、大辻の創作活動をほぼ網羅する資料群を2008年に寄贈受入し、「大辻清司フォトアーカイブ」を構成、適切な資料保存環境を整えた上で、検証、研究、活用に取り組んでいる。これまでに展覧会「大辻清司フォトアーカイブ:写真家と同時代芸術の軌跡1940–1980」(2012)の開催、『大辻清司:武蔵野美術大学 美術館・図書館 所蔵作品目録』(2016)の発行などで成果を公開し、2017年からは『大辻清司アーカイブ フィルムコレクション』と題し、撮影フィルムの内容を検証する目録シリーズの刊行を開始し、現在までに7巻を発行している。

 


大辻清司《黒板塀》1957年 ゼラチン・シルバー・プリント 武蔵野美術大学 美術館·図書館所蔵


大辻清司《クロス・トーク/インターメディア》1969年 フィルム原板からの出力 武蔵野美術大学 美術館·図書館所蔵

 

本展は、これまでのアーカイブ資料検証によって得られた視座を軸として、「原点」「シアター」「シークエンス」「他者たち」からなる 4つの章を通して、新たな大辻像の輪郭を辿るとともに、アート・アーカイブのひとつの在り方を示し、その先に何を見出すことができるのかを探る試みとなる。

第1章「原点」では、10代の頃に雑誌『フォトタイムス』に掲載された前衛的な写真表現に衝撃を受け、制作を開始した大辻清司(1923-2001/東京生まれ)が、瀧口修造との出会いのもと発表した《太陽の知らなかった時》全10点をオリジナルプリントとフィルム原板からの高精細印刷によって甦らせるほか、物体とその肌理へ眼差しを注いだ《氷紋》《航空機》《黒板塀》などを通し、大辻の初期の探究に着目する。同時期は、実験工房、グラフィック集団といったメディアを横断する表現者たちとの交流が始まった時期でもあり、阿部展也、福島秀子、田中敦子らと対峙した作品のほか、『アサヒグラフ』で連載された《APN》シリーズも紹介する。

第2章「シアター」では、1950年代から60年代にかけて、大辻が『芸術新潮』をはじめとする印刷メディアでの取材を通して、数々の演劇や舞踏、パフォーマンスの舞台やリハーサルを撮影した作品群を紹介する。武智鉄二(「月に憑かれたピエロ」「アイーダ」)や福田恆存(「明暗」「マクベス」)といった気鋭の演出家の手による舞台、土方巽の舞踏作品「禁色」、アートとテクノロジーの結合を目指した音楽イベント「クロス・トーク/インターメディア」ほか、パフォーミングアーツの現場を捉えたスナップだけでなく、代表作《無言歌》を「シアター」という文脈のなかで展観し、その情景に新たな光を当てる。

 


大辻清司《道》1969年 フィルム原板からの出力 武蔵野美術大学 美術館·図書館所蔵

 

第3章は、1960年代末頃からの大辻の制作を特徴づけるひとつのキーワード「シークエンス」をテーマに構成。大辻は、東京ビエンナーレ‘70「人間と物質」で作品設営日から会場を歩きまわり、変化を続ける状況をスナップショットの連続によって捉えた。本章ではそのなかからヤニス・クネリス、マリオ・メルツ、ジルベルト・ゾリオ、松澤宥の4名による展示空間を撮影した作品に絞って紹介する。また、身近な街の路上へとレンズを向け、道行く人々とその流れを捉えた作品《界隈》や《道》、実験映画「上原二丁目」などをあわせて展示する。

第4章「他者たち」では、1975年に『アサヒカメラ』誌上で連載した、自身の写真と文章によって構成された「大辻清司実験室」を取り上げる。本章では、身近な路上を写した一連のスナップ群《日が暮れる》、机上の事物を見つめた作品《いつも二つ、机の上にある鉱石標本》《まるめた紙》などに加え、《ひと函の過去》《見えぬ意味を見ぬ意味と》といった70年代後半から80年代の作品もあわせて展示。優れた写真家でありエッセイストである大辻の重要な仕事と位置付けられる本作を通じて、撮ることと書くこと、そして「写真は何を写しとるのか」という問いに改めて向き合った大辻の探究に焦点を置く。

 


大辻清司《銀紙に包んで少し残っているきざみタバコ》1974年 ゼラチン・シルバー・プリント 武蔵野美術大学 美術館·図書館所蔵


大辻清司《日が暮れる(夜遅くまで勉強している人)》1975年 ゼラチン・シルバー・プリント 武蔵野美術大学 美術館·図書館所蔵

 

関連イベント
ギャラリートーク
2023年9月4日(月)17:00–17:45
出演者:大日方欣一(本展監修者)
会場:武蔵野美術大学 美術館展示室3・4・5
※入場無料、先着順(予約不要)

トーク+コンサート「『クロス・トーク/インターメディア』の電子音楽」
2023年9月23日(土)
トーク|13:00–14:00(開場:12:30)
コンサート|14:30-15:30
出演者:アクースモニウム演奏:檜垣智也(作曲家、東海大学准教授)
解説:川崎弘二(電子音楽研究)
会場:武蔵野美術大学 美術館ホール
※入場無料、先着順(予約不要)

講演会「大辻清司フォトアーカイブ報告─これまでとこれから」
2023年10月1日(日)14:00–15:30(開場:13:30)
出演者:大日方欣一(本展監修者)
会場:武蔵野美術大学 美術館ホール
※入場無料、先着順(予約不要)

 


同時開催
大浦一志——雲仙普賢岳/記憶の地層
2023年9月4日(月)-10月1日(日)
武蔵野美術大学 美術館展示室1・2、アトリウム1・2
https://mauml.musabi.ac.jp/museum/events/20680/

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