「前衛」写真の精神:なんでもないものの変容 瀧口修造・阿部展也・大辻清司・牛腸茂雄 @ 新潟市美術館


牛腸茂雄《SELF AND OTHERS 42》1977年(2023年プリント)個人蔵

 

「前衛」写真の精神:なんでもないものの変容 瀧口修造・阿部展也・大辻清司・牛腸茂雄
2023年7月29日(土)- 9月24日(日)
(前期:7/29-8/27|後期:8/29-9/24)※大幅な展示替えあり
新潟市美術館
http://www.ncam.jp/
開館時間:9:30–18:00 観覧券の券売は閉館30分前まで
休館日:月(8/14、9/18は開館)、9/19
企画担当:児矢野あゆみ(新潟市美術館学芸員)、上池仁子(新潟市美術館学芸員)
展覧会URL:http://www.ncam.jp/exhibition/7215/

 

新潟市美術館では、瀧口修造、阿部展也、大辻清司、牛腸茂雄の4人の作家の交流と創作を辿りながら、1930年代の前衛写真から80年代にわたる日本昭和写真史の1断片を紹介する展覧会「『前衛』写真の精神:なんでもないものの変容 瀧口修造・阿部展也・大辻清司・牛腸茂雄」を開催する。

3章構成となる本展は、「前衛写真」における「シュルレアリスムの影響を受けた技巧的な写真から「なんでもない」写真へ」を軸に日本写真史を振り返る。1930年代、美術評論家の瀧口修造(1903-1979/富山県生まれ)は、写真の本質は「記録性の重視」と「オブジェの発見」にあると提唱し、技巧を凝らさないストレートな写真でもシュルレアリスム写真は実践できるとした。「前衛写真の台頭と衰退」を扱う第1章では、瀧口と阿部展也(1913-1971/新潟県生まれ)が共に関わった写真雑誌『フォトタイムス』29冊を展示することで、瀧口、阿部らが設立した「前衛写真協会」の活動を紹介。あわせて、瀧口が高く評価したウジェーヌ・アジェによるパリの都市の様相を記録した写真、瀧口の言説に呼応した阿部の写真作品、さらには前衛写真協会と同時期に活動した写真家たち——永田一脩、濱谷浩、小石清、下郷羊雄、坂田稔の作品を紹介する。

 


大辻清司《瀧口修造夫妻、書斎にて》1975年(2003年プリント)富山県美術館蔵


『フォトタイムス』15巻6号表紙〔写真:阿部芳文(展也)〕1938年

 

「前衛写真の復活と転調」を扱う第2章では、大辻清司(1923-2001/東京生まれ)が中心となる。大辻は、1940年頃、近所の古本屋で『フォトタイムス』をまとめて入手、マン・レイらの海外の写真作品や瀧口の評論に触れ、写真家を志した。本展では、阿部が演出し写真撮影を大辻を担当したコラボレーション作品、50年代のオブジェを撮影した写真作品(雑誌『アサヒグラフ』の連載「APN」のためのカット)、アジェを意識した側面のある70年代の《大辻清司実験室》シリーズの「なんでもない」写真を中心に紹介する(※《大辻清司実験室》シリーズは前後期ですべて展示替え)。

第3章では、桑沢デザイン研究所で主任講師を務める大辻の下で写真を学び、自らの写真を「見過ごされてしまうかもしれないぎりぎりのところの写真」と表し、日常の風景や人々を撮影し続けた牛腸茂雄(1946-1983/新潟県生まれ)を取り上げる。本章では、新潟県出身の牛腸が残した《日々》(1971)、《SELF AND OTHERS》(1977)、《見慣れた 街の中で》(1981)といったシリーズ(※これらの3つのシリーズはは前後期ですべて展示替え)に加えて、大辻の下で学んでいた頃の貴重な写真作品(約30点)を紹介する。学生時代の写真作品は、新潟市美術館で2004年に開催した回顧展「牛腸茂雄 1946-1983」、2014年開催の「コレクション展III 牛腸茂雄〈わたし〉という他者」 以来の展示となる。

 


大辻清司《航空機》1957年(1980年代プリント)渋谷区立松濤美術館蔵


牛腸茂雄《見慣れた街の中で 19》1978–80年(2004年プリント)新潟市美術館蔵

 

関連イベント
[講演会]大辻アーカイブでたどる瀧口修造、阿部展也、牛腸茂雄
2023年9月16日(土)14:00-15:30
講師:大日方欣一氏(写真/映像研究、九州産業大学芸術学部教授)
会場:新潟市美術館 講堂
定員:80名(先着順/申込不要)、聴講無料

[美術講座]阿部展也の写真作品における変化について
2023年8月27日(日)14:00-15:30
講師:上池仁子(新潟市美術館学芸員)
会場:新潟市美術館 講堂
定員:80名(先着順/申込不要)、聴講無料

[美術講座]「ぎりぎりのところの写真」を考える 牛腸茂雄が捉えたもの
2023年9月9日(土)14:00-15:30
講師:児矢野あゆみ(新潟市美術館学芸員)
会場:新潟市美術館 講堂
定員:80名(先着順/申込不要)、聴講無料

担当学芸員によるギャラリートーク
2023年8月6日(日)、9月3日(日)各日14:00-(30分程度)

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