もしも… 大辻清司の写真と言葉 @ 九州産業大学美術館


大辻清司〈もしも…〉1969年 フィルム原版からの出力 武蔵野美術大学 美術館·図書館所蔵

 

もしも… 大辻清司の写真と言葉
前期|2024年6月8日(土)-6月30日(日)
後期|2024年7月5日(金)-7月28日(日)
九州産業大学美術館
https://www.kyusan-u.ac.jp/ksumuseum/
開館時間:10:00–17:00(金曜は19:00まで)入館は閉館30分前まで
休館日:月
特別協力:武蔵野美術大学 美術館·図書館
展覧会担当:中込潤(九州産業大学美術館)
展覧会URL:https://www.kyusan-u.ac.jp/ksumuseum/tennji/#tenji1458

 

九州産業大学美術館では、戦後日本の前衛芸術グループ「実験工房」のメンバーであり、制作のみならず執筆、教育においても優れた功績を残した大辻清司の活動を紹介する展覧会「もしも… 大辻清司の写真と言葉」を開催する。本展では、2008年より大辻に関する原資料の総合的なアーカイブ化を進めてきた武蔵野美術大学 美術館·図書館「大辻清司フォトアーカイブ」の特別協力の下、貴重な作品および資料を通じて大辻の写真と言葉を辿り、その現代的意義を明らかにする。

大辻清司(1923-2001/東京生まれ)は、東京湾岸に近い江東区大島に生まれ、エンジニアだった父親の影響によりシネマカメラでの撮影、家庭用映写機を自作するなど、映像を用いた遊びや工作に熱中する。10代半ばに手にした写真雑誌『フォトタイムス』に掲載されていた1930年代の欧米アヴァンギャルド・フォト(マン・レイ、ブラッサイ、ムンカッチ、モホイ・ナジなど)や、同誌によく執筆していた瀧口修造のエッセイを通じて、シュルレアリスムへの関心を高めていった。世の中が軍国主義に覆われ、第二次世界大戦へ突き進んでいくなか、1942年に東京写真専門学校(現・東京工芸大学)に入学し、在学中に陸軍へ入隊、戦争末期の数年は国内各地で航空整備の軍務に就いた。敗戦後に東京に帰還し、写真家としての道を進みはじめる。

本展第1章「太陽の知らなかった時」では、作家活動の原点にあたる1950年前後、大辻の択んだモチーフや方法に着目し、その制作開始時の関心を明らかにする。続く第2章では「月に憑かれたピエロ」と題し、大辻が参加したインターメディアの芸術集団「実験工房」(北代省三、福島秀子、山口勝弘、秋山邦晴、武満徹、湯浅譲二ら)の軌跡、コラボレーションの数々を資料と写真から蘇らせる。同時期には写真家の石元泰博、画家辻彩子との共同制作による〈キネカリグラフ〉の制作も試みている。第3章「アトリエ訪問」では、大辻が記録した同時代芸術の現場の写真を、九州産業大学美術館所蔵の美術作品(鳥海青児、豊福知徳、棟方志功、駒井哲郎、林武)と交えながら、アトリエという場を見つめる大辻のカメラアイを検証する。第4章「無言歌/舞踏〈禁色〉」では、変貌する都市環境と人間の関わりを探究した1950年代後半から70年代初の多彩な実践を、「シークエンス」(連続写真)をキーワードに辿る。

 


大辻清司〈新宿・夜〉1952年 武蔵野美術大学 美術館·図書館所蔵

 

展覧会タイトルと同じく「もしも…」と題した第5章では、カラー写真による〈終章〉〈もしも…〉のシリーズや、固定視点、長回しによるムービー版のストリート・スナップともいえる映画作品〈上原二丁目〉(1973)など、予兆、余韻、ケハイを捉えた中期の傑作群を紹介する。本展のメインビジュアルとなった写真も〈もしも…〉から選び取られている。第6章「間もなく壊される家」では、撮ることと書くことを行き来しながら思考を続けた大辻の活動に着目し、1975年に雑誌『アサヒカメラ』に連載した「大辻清司実験室」を取り上げ、そのエッセンスを考察する。第7章「工房から」では、1980年代以降の後期の作品と言葉を紹介し、大辻の表現の現代的意義を再確認する。

 

16mm color film movie 音声あり time 15min/1sec24frame

大辻清司〈上原2丁目〉1973年 武蔵野美術大学 美術館·図書館所蔵

 

関連イベント
アートアーカイブの昨日・今日・明日:武蔵野美術大学 美術館·図書館における実践-大辻清司フォトアーカイブ/杉浦康平デザインアーカイブ
2024年7月12日(金)17:40–19:20
講師:村井威史(武蔵野美術大学 美術館·図書館)
会場:九州産業大学15号館15102教室
※聴講無料、申込不要

公開連続講座:もしも… 大辻清司の写真と言葉
2024年6月14日(金)17:40–19:20
2024年7月19日(金)17:40–19:20
講師:大日方欣一(九州産業大学美術館館長)
会場:九州産業大学15号館15101教室
※聴講無料、申込不要

 


大辻清司〈やがて春〉1988年 武蔵野美術大学 美術館·図書館所蔵

Copyrighted Image