「前衛」写真の精神:なんでもないものの変容 @ 千葉市美術館


大辻清司《無言歌》1956年 千葉市美術館蔵

 

「前衛」写真の精神:なんでもないものの変容
2023年4月8日(土)– 5月21日(日)
(前期:4/8-4/30|後期:5/2-5/21)※大幅な展示替えあり
千葉市美術館 8階展示室
https://www.ccma-net.jp/
開館時間:10:00–18:00(金曜・土曜は20:00まで)入場は閉館30分前まで
休館日:4/17(休室日)、5/1
企画担当:庄子真汀(千葉市美術館学芸員)
展覧会URL:https://www.ccma-net.jp/exhibitions/special/23-4-8-5-21/

 

千葉市美術館では、瀧口修造、阿部展也、大辻清司、牛腸茂雄の4人の作家の交流と創作を辿りながら、シュルレアリスム写真から「なんでもない」写真へと、現代に接続する「前衛」の精神を考察する展覧会『「前衛」写真の精神:なんでもないものの変容』を開催する。

瀧口、阿部、大辻、牛腸の4人を扱うにあたり、本展がひとつの軸に据えたのは、瀧口が技巧的な前衛写真が活発に発表された1930年代に語った写真におけるシュルレアリスムとは「日常現実のふかい襞のかげに潜んでいる美を見出すこと」であるという思想。瀧口とともに38年に「前衛写真協会」を立ち上げた阿部は、瀧口に共鳴し、街の風景にカメラを向け、瀧口と阿部に強く影響を受け、交流もあった大辻は「なんでもない写真」と題したシリーズを手掛ける。大辻が教鞭をとっていた桑沢デザイン研究所で写真を学んだ牛腸は「見過ごされてしまうかもしれないぎりぎりの写真」として、周囲の人々や風景を捉えた。本展では、これら4人の作品・思想を通じて、前衛写真として想起される技巧的なイメージを超えた「前衛」の在り方、戦前から戦後へ、そして現在まで引き継がれる「前衛」写真の精神を提示する。

 


大辻清司《瀧口修造夫妻、書斎にて》1975年 富山県美術館蔵


阿部芳文(展也)《『フォトタイムス』15巻6号掲載写真》1938年 新潟市美術館蔵

 

瀧口修造(1903-1979/富山県生まれ)は、30年にアンドレ・ブルトンの『超現実主義と絵画』の翻訳を手掛け、シュルレアリスムをはじめフランスの現代詩と美術を日本に紹介した。38年には写真雑誌『フォトタイムス』を通じて「前衛写真協会」を阿部らとともに結成。以降、同誌で海外の写真作品や評論を盛んに紹介した。戦後は美術評論家として活動し、51年には精神的支柱として「実験工房」の活動を支持する(グループ名も命名)。自身もデカルコマニーなどの作品を制作した。

阿部展也(1913-1971/新潟県生まれ)は、37年に瀧口が詩、阿部が絵を担当した詩画集『妖精の距離』を刊行。38年には『フォトタイムス』の表紙写真を担当し、以降同誌で実験的な写真やテキストを発表した。戦時中は、陸軍報道部写真班員として従軍し、フィリピンで記録写真などを手掛ける。戦後は、さまざまな画風でアンフォルメルや幾何学的な抽象画を発表するほか、インドやアメリカ、ヨーロッパをまわり、最新の美術動向を日本に紹介した。

 


大辻清司《物体A》1949年 千葉市美術館蔵

 

小学生時代に叔父から借りたカメラで写真を撮りはじめた大辻清司(1923-2001/東京生まれ)は、1940年頃、古本屋で『フォトタイムス』をまとめて入手、マン・レイらの海外の写真作品や瀧口の評論に触れる。42年に東京写真専門学校(現・東京工芸大学)に入学、終戦後に写真の仕事をはじめる。53年に『アサヒグラフ』にて、実験工房のメンバーである北代省三らと「APN」を連載。この頃、実験工房に参加、グラフィック集団を結成。雑誌等での写真発表のほか、写真教育にも積極的に携わった。

牛腸茂雄(1946-1983/富山県生まれ)は、桑沢デザイン研究所リビングデザイン科卒業後、同校教員だった大辻の強い勧めにより、同校写真専攻に進む。卒業後はカメラ毎日を中心に写真を発表、71年には関口正夫との共著で写真集『日々』を自費出版。写真のほか、心理学を応用したインクプロットやデカルコマニーの作品も残した。60年代後半から70年代前半にかけて流行した写真表現「コンポラ写真」の代表的な作家に挙げられる。

 


牛腸茂雄《幼年の「時間」1 》1980年頃 新潟市美術館蔵


牛腸茂雄《見慣れた街の中で 30》1978-80年代 新潟市美術館蔵

 

関連イベント
担当学芸員によるショートレクチャー
講師:庄子真汀(千葉市美術館学芸員)
2023年4月12日(水)14:00-14:30
会場:千葉市美術館 1階多目的室
定員:30名程度(先着)
参加費:無料

講演会「瀧口修造と前衛写真」
講師:藤村里美(東京都写真美術館学芸員)
2023年4月22日(土)14:00-15:30(開場:13:30)
会場:千葉市美術館 11階講堂
定員:80名(先着)※当日12:00より1階にて整理券配布(1名につき1枚まで)
参加費:無料(要展覧会チケット)

市民美術講座「実験工房の精神史」
講師:藁科英也(千葉市美術館上席学芸員)
2023年4月29日(土・祝)14:00-15:30(開場:13:30)
会場:千葉市美術館 11階講堂
定員:80名(先着)※当日12:00より1階にて整理券配布(1名につき1枚まで)
参加費:無料(要展覧会チケット)

映画上映会「SELF AND OTHERS」(監督:佐藤真)
2023年5月3日(水・祝)14:00-15:00
会場:千葉市美術館 11階講堂
定員:80名(先着)※当日12:00より1階にて整理券配布(1名につき1枚まで)
参加費:無料(要展覧会チケット)
協力:ユーロスペース

ワークショップ「カメラを使わない写真! フォトグラムを体験してみよう」
講師:清水裕貴(写真家、小説家)
2023年5月7日(日)13:30-15:30
対象:小学校高学年〜
定員:10名
参加費:1,500円
参加申込締切:4月26日(水)
詳細および申込について:https://www.ccma-net.jp/learn/events/related/2023-5-7/

市民美術講座「「なんでもない」をさぐる」
講師:庄子真汀(千葉市美術館学芸員)
2023年5月13日(土)14:00-15:30(開場:13:30)
会場:千葉市美術館 11階講堂
定員:80名(先着)※当日12:00より1階にて整理券配布(1名につき1枚まで)
参加費:無料(要展覧会チケット)

美術館ボランティアスタッフによるギャラリートーク
会期中の水曜日(4/12を除く)14:00-
※水曜日以外の14:00にも開催あり。混雑時には中止の場合あり
会場:千葉市美術館 8階展示室
定員:5名(先着)※当日13:30より8階受付にて整理券配布
参加費:無料(要展覧会チケット)

 


「実験工房の造形」
2023年4月8日(土)– 5月21日(日)
千葉市美術館 7階展示室
休室日:4/17、5/1

「つくりかけラボ11 金田実生|線の王国」
2023年4月17日(月)– 7月2日(日)
千葉市美術館 4階子どもアトリエ
休室日:第1月曜日
※無料

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