第9回ヒロシマ賞受賞記念 ドリス・サルセド展 @ 広島市現代美術館


「プレガリア・ムーダ(沈黙の祈り)」(部分)2008-2010年 Photo: Patrizia Tocci

第9回ヒロシマ賞受賞記念
ドリス・サルセド展
2014年7月19日(土)-10月13日(月、祝)
広島市現代美術館
http://www.hiroshima-moca.jp/
開館時間:10:00-17:00(7/20、21、10/12、13は19:00まで)
休館日:月(ただし、月曜が祝日の場合は開館、翌火曜が休館)

広島市現代美術館では、世界に横行する暴力や差別に対して、芸術の持つ強い抵抗の力を示してきた彫刻家ドリス・サルセドによる第9回ヒロシマ賞受賞記念展を開催する。

ドリス・サルセドは1958年ボゴタ(コロンビア)生まれ。ボゴタ大学で美術教育を受けた後、ニューヨーク大学大学院で彫刻を専攻する。現在はボゴタを拠点に制作活動を続けている。日常の家具や衣服を彫刻として再生させながら、暴力による犠牲者の記憶を静かに訴える作品で知られ、近年では大規模なインスタレーションや都市や建築へ介入するような作品を展開している。遺体の身元確認のために使用された女性の靴を壁の中に収め、半透明の動物の皮を手術用の糸で縫いつけることで覆った「Atrabiliarios[権力への抵抗]」(1992-2004)は前者の、テート・モダンのタービンホールの床に167メートルに及ぶ亀裂を走らせた「Shibboleth[シボレス]」(2007)は、旧約聖書で敵と味方を判断するために使われた単語をタイトルに、人種差別や移民としての体験、隔離など世の中のさまざまな境界を表したインスタレーションであり、後者の代表作として広く知られている。

これまでにもヴェネツィア・ビエンナーレやドクメンタなど数多くの国際展に参加し、2010年から13年にかけては、個展『Plegaria Muda』がメキシコ自治大学付属現代美術館(メキシコシティ)、マルメ近代美術館、カルースト・グルベンキアン財団美術館(リスボン)、国立21世紀美術館(ローマ)、ホワイトキューブ(ロンドン)、サンパウロ州立美術館を巡回するなど、数多くの個展、企画展で作品を発表している。2015年にはシカゴ現代美術館を皮切りにニューヨーク、ロサンゼルスを巡回する大規模な回顧展が予定されている。


Left:「プレガリア・ムーダ(沈黙の祈り)」(部分)2008-2010年 Photo: Patrizia Tocci.
Right:「ア・フロール・デ・ピエル(皮膚の表面)」(部分)2013年 Photo: Joerg Lohse.

日本初個展となる本展では、展示室全体を死者を悼むための場に変容させながら、再生への願いを込めた作品を展示する。「Plegaria Muda[沈黙の祈り]」(2008-2010)もまた、暴力の犠牲となった若者たちを追悼する作品で、土の塊をはさむ形で重ね合わせられた100以上のテーブルが整然と並ぶインスタレーション。サルセドは、20年間に1万人以上もの若者が命を落としたロサンゼルスのゲットーで3年間の調査を実施し、そこに、2003年から2009年にかけて自国コロンビアで明確な理由なく軍に殺され、身元不明のゲリラとして集団墓地に葬られた若者たちを重ねている。また、大量の紅いバラの花びらを縫い合わせた「A Flor de Piel[皮膚の表面]」(2013)は死者への献花を作家独自の方法で実現しており、静謐な祈りの空間を創出する一方で、生々しいその色彩が暴力がもたらす悲惨さを想起させる。


「ア・フロール・デ・ピエル(皮膚の表面)」(部分)2013年 Photo: Joerg Lohse

ヒロシマ賞は、広島市が1989年に現代美術の分野で人類の平和に貢献した作家の業績を顕彰し、世界の恒久平和を希求する「ヒロシマの心」を現代美術を通して広く世界へとアピールすることを目的として創設した。これまでに三宅一生、ロバート・ラウシェンバーグ、レオン・ゴラブ&ナンシー・スペロ、クシュシトフ・ウディチコ、ダニエル・リベスキンド、シリン・ネシャット、蔡國強、オノ・ヨーコが受賞している。

関連イベント
講演会
ドリス・サルセド
2014年7月19日(土)14:00-15:30
会場:広島市現代美術館 地下1階ミュージアムスタジオ
※要展覧会チケット(半券可)

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