ティンティン・ウリア:共通するものごと @ 広島市現代美術館


Tintin Wulia, Fallen [still], (2011) Courtesy of the Artist

 

ティンティン・ウリア:共通するものごと
2024年9月21日(土)-2025年1月5日(日)
広島市現代美術館
https://www.hiroshima-moca.jp/
開館時間:10:00–17:00 入場は閉館30分前まで
休館日:月(9/23、10/14、11/4は開館)、9/24、10/15、11/5、年末年始(12/27〜1/1)
展覧会担当:角奈緒子(広島市現代美術館学芸員)
展覧会URL:https://www.hiroshima-moca.jp/exhibition/tintin_wulia

 

広島市現代美術館では、「個々の記憶を含む個人的背景が、いかに集団的な行動や、他者との社会的繋がりへと変容し得るのか」という関心の下、さまざまな表現方法で作品を発表してきたインドネシア出身のアーティスト、ティンティン・ウリアの日本初個展「ティンティン・ウリア:共通するものごと」を開催する。

ティンティン・ウリア(1972年インドネシア、デンパサール生まれ)は、地政学的、社会的な境界をインターフェイス(接点)と捉え、市民権、戦争、国家機密など、国境に関連するテーマを扱っている。民族的なマイノリティである中国系バリ人として育った自身の生い立ちや、移住の経験と、グローバリゼーションやグローバルな政治を織り交ぜながら、多領域にわたるインスタレーション作品を発表してきた。現在、スウェーデン、イェーテボリ大学のHDKヴァランド芸術デザインアカデミーの上級研究員を務めるウリアは、1965-66年のインドネシア大虐殺に関連する機密解除された米国文書のほか、社会政治的変革における美的オブジェクトの役割に関する研究を進めている。これまでに横浜(2005)、イスタンブール(2005)、光州(2012)、シャルジャ(2013)などの国際展をはじめ、世界各地の展覧会で作品を発表。2017年の第57回ヴェネツィア・ビエンナーレのインドネシア館では個展「ティンティン・ウリア:1001 Martian Homes」を開催。最近の個展に「ティンティン・ウリア:秘密」(RMITギャラリー、メルボルン、2023)、「ティンティン・ウリア:開示」(Baik Art、ジャカルタ、2023)がある。広島では、2012年に開催したグループ展「この素晴らしき世界:アジアの現代 美術から見る世界の今」に参加し、手作りのパスポートを用い、国境や国籍をテーマにしたインスタレーション《Lure》(2009)を発表した。

 


Tintin Wulia, Subtext – after Kawara’s Title, 1965 (2019) Installation view at Van Every/Smith Galleries of Davidson College, NC, USA, 2019 Photo: Gordon Ramsey Courtesy of the Artist


Tintin Wulia, Memory is Frail (and Truth Brittle) [detail], (2019) Courtesy of the Artist

 

ウリアは、個人的な体験に立脚した芸術的実践を通して、私たちの身の回りにあるものごとが、美的要素を獲得することで、人々をつなぐ「共通するものごと」になり得ることに関心を持ち始め、現在、こうした美的オブジェクトがいかに社会的・政治的変革に結びつくかを調査するプロジェクトを進めている。

日本初個展となる本展では、2007年以降、段階的に形を変えながら発表されてきた、手作りのパスポートを使用した作品《(Re) Collection of Togetherness》、空間(地理における)と時間(歴史における)の表現が、ループする物語として仕立てられた100枚以上のドローイングからなるインスタレーション《Memory is Frail (and Truth Brittle )》、しばしば「移動」のシンボルのひとつとして取り上げてきた蚊の変態に注目した作品《Liminal Death》など、比較的初期から現在に至る作品約20点を紹介する。9月22日には〈Memory is Frail〉シリーズを軸に展開するレクチャー・パフォーマンスを開催。広島を含む世界中で起こるさまざまな出来事の記録が、個々人による認識や記憶と、国家が承認した「公式の」歴史を通して、どのように構築されるのかを問う内容となる。

また、9月21日から11月4日にかけて、展覧会に関連したオープン・プログラムとして、ラーニング・スペース「ミーティングポイント」を開室。ウリアの芸術的活動の背景にある母国インドネシアでかつて起こった社会的動乱に巻き込まれた家族の経験、そして語られることで継承されていく記憶など、インドネシア近代化の歴史やウリアが関心を寄せる昆虫の生態について学ぶことのできる書籍や映像を提供し、来場者が自由に学び、知り、考え、意見を交換し、自発的な行動へと繋がっていくような、ラーニング機能を備えた空間を提供する。同時に、1965-66年にかけてのインドネシア大虐殺をめぐる複雑な物語をリサーチ、収集する、世界中のさまざまな地域、および専門領域で活動する10名で構成されるリサーチ・リレー・コレクティブ「1965 Setiap Hari(1965 セティアップ・ハリ)」や、アートによる社会や政治の変革が、どのように起こるのかを明らかにすることを目的とした研究プロジェクト「THINGSTIGATE(シングスティゲイト)」といったウリアの協働的な活動も紹介する。

 


Tintin Wulia, Liminal Death (2023) Courtesy of the Artist

 

関連イベント
レクチャー・パフォーマンス
2024年9月22日(日)11:00–12:00
アーティスト:ティンティン・ウリア
会場:広島市現代美術館 展示室B-3
※観覧無料、申込不要
https://www.hiroshima-moca.jp/event/10363

学芸員によるギャラリートーク
2024年10月5日(土)、12月8日(日)各日15:00–16:00
担当学芸員:角奈緒子(広島市現代美術館学芸員)
会場:広島市現代美術館 展示室B-1
※無料(要展覧会チケット)、申込不要

アートナビ・ツアー(アートナビゲーターによる展示解説)
2024年9月21日(土)-2025年1月5日(日)の毎週土、日、祝休日開催 ※イベント開催時は除く
11:45–12:15、14:45-15:15
会場:広島市現代美術館 展示室B-1
※無料(要展覧会チケット)、申込不要

オープン・プログラム「ミーティングポイント:出会う、知る、交換する」
2024年9月21日(土)-11月4日(月・休)
広島市現代美術館 展示室B-3
展覧会URL:https://www.hiroshima-moca.jp/exhibition/tintinwulia_meetingpoint

 


Tintin Wulia, Make Your Own Passport, (ongoing since 2014) Thingstigate Public Launch at Vetenksapsfestivalen/Gothenburg Science Festival 2023 Photo: Per Larsson

 


同時期開催

コレクション展 2024-Ⅱ ハイライト+リレーションズ[ゲストアーティスト:中西紗和]
2024年8月24日(土)-12月8日(日)
広島市現代美術館 A展示室
展覧会URL:https://www.hiroshima-moca.jp/exhibition/collection2024-2

オープン・プログラム「山村浩二アニメーション+《山村浩二作品集》上映」
2024年8月14日(水)-9月29日(日)
広島市現代美術館 メディアライブラリー
展覧会URL:https://www.hiroshima-moca.jp/exhibition/screening_202408

特別展
原田裕規:ホーム・ポート(仮)
2024年11月30日(土)-2025年2月9日(日)
広島市現代美術館 展示室B-2、B-3
展覧会URL:https://www.hiroshima-moca.jp/exhibition/harada_yuki

コレクション展 2024-Ⅲ ハイライト+リレーションズ[ゲストアーティスト:西島大介]
2024年12月21日(土)-2025年4月6日(土)
広島市現代美術館 A展示室
展覧会URL:https://www.hiroshima-moca.jp/exhibition/collection2024-3

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