2014年のある騒動に想を得て生まれた展覧会。その観賞を通じて、重要な出来事さえ情報として次々と消費される時間の濁流のなか、その流れが向かう先と、いま我々が自らの居場所を確かめる重要さを考察する。
連載
椹木野衣 美術と時評 85:油絵から古九谷へ — 硲伊之助の近代絵画探求
硲伊之助は生涯4度の渡欧でマティスにも師事し、東京美術学校助教授、日本美術会委員長等も務めた。しかし後半生は石川県で古九谷の制作に注力する。その変化と不変の探究を、硲伊之助美術館を訪ねて考察する。
椹木野衣 美術と時評 84:ジェフ・クーンズ「ラビット」——空気を売る
2019年5月、ジェフ・クーンズの「ラビット」がクリスティーズ・ニューヨークにて、存命美術家の作品としては史上最高額の9107万5000ドルで落札された。同作に思い入れもある筆者が、その意味を再考する。
椹木野衣 美術と時評 83:寄せては返す骸(むくろ)と天界——イケムラレイコの惑星世界
今年1月から4月にかけて開催され話題となった大規模個展「イケムラレイコ 土と星 Our Planet」を通じて、作家の表現の根源にあるものを探る。

艾未未のことば20:猫が盗まれて広州で食べられる作品「三花」に関する対話
「他者に対して無関心であり続ける人間に対する警告」と本連載責任編集の牧陽一が評する、艾未未の映像作品「三花」をめぐるインタビューを翻訳掲載。
連載 田中功起 質問する 16-6 :ハン・トンヒョンさんから3
社会学者のハンとの往復書簡。ハンからの最後の書簡は、社会学とアートの協働について改めて自身の考えを述べつつ、『可傷的な歴史(ロードムービー)』をめぐる作り手の創造性について問う。
連載 田中功起 質問する 16-5 :ハン・トンヒョンさんへ3
社会学者のハンとの往復書簡。田中からの最後の書簡は、アート=感覚、社会学=論理という区分けを超えた連携や、自作「可傷的な歴史(ロードムービー)」をめぐる「理想の記録」としての表現を考える。
椹木野衣 美術と時評 82:批評と評価——障害をめぐるアートをめぐる
障害とアートとの関係をめぐり、<美術・教育・評価>と<アート・表現・批評>の違いや、2018年に施行された「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」を通じて論考する。
田中功起 質問する 16-4:ハン・トンヒョンさんから2
第16回(ゲスト:ハン・トンヒョン)―アーティストは「社会」を必要としている、のか 社会学者のハンさんから、田中さんへの2通目の書簡。「可傷的な歴史(ロードムービー)」をめぐる在日コリアンの友人からのことばも引きつつ、芸術における知識と信頼の関係、またそこでのフィクション性とノンView More >
椹木野衣 美術と時評 81:反復劇からの脱出計画―「スペース・プラン記録展」
1968年、「脱出計画」と冠した檄文で動き出した鳥取の前衛芸術家集団。地域の芸術シーンの閉塞的反復から脱する道を探ったそのまなざしを、東京五輪、大阪万博という大きな「反復」が迫る現在にとらえ直す。