ねこの細道 @ 豊田市美術館


佐々木健 《ねこ》 2017年 油彩、カンヴァス 個人蔵 Courtesy of the artist and Gomike

 

ねこのほそ道
2023年2月25日(土)− 5月21日(日)
豊田市美術館
https://www.museum.toyota.aichi.jp/
開館時間:10:00–17:30 入場は閉館30分前まで
休館日:月(5月1日は開館)
企画:能勢陽子(豊田市美術館キュレーター)
参加アーティスト:泉太郎、大田黒衣美、落合多武、岸本清子、佐々木健、五月女哲平、中山英之+砂山太一
展覧会URL:https://www.museum.toyota.aichi.jp/exhibition/catsnarrowroad/

 

豊田市美術館では、身近な動物である猫を、人間とは異なる空間感覚や倫理観を持ち、言葉の秩序から逃れる逸脱可能な存在としてとらえ、どこか「ねこ」のような現代美術を紹介する展覧会『ねこの細道』を開催する。

本展は、以下に紹介する6人のアーティストと1組の建築家ユニットの視点を通して、日常、くつろぎ、野生、ユーモア、ポエジー、ミクロとマクロ、積層する時間といった「猫的なるもの」を体験し、身近なところから人間中心の視点をずらしてみる試みを目指す。

 


大田黒衣美 《旅する猫笛小僧》 2013年 ウズラの卵、ワックスペーパー、布、包装紙 個人蔵


岸本清子 《I am 空飛ぶ赤猫だあ!》 1981年 ラッカー、パステル、カンヴァス 宮城県美術館蔵

 

佐々木健(1976年神奈川県生まれ)は、テニスボール、雑巾、テーブルクロス、音響器具など、絵画の主題になりそうにない身近な物を油絵具で写実的に描いている。そのアプローチは、写実より表現を追究した近代日本の表現が現実を凌駕するロマンチシズムへと傾倒した姿勢を批判するとともに、すべてのものを等価に眼差すという態度に貫かれている。

大田黒衣美(1980年福岡県生まれ)は、ウズラの卵の殻、ガム、猫の毛並みなど自在な素材を用いて、絵画とオブジェ、そして写真の中間領域にあるような作品を制作している。その作品は、見立てに似た手法により、擬態の役割を果たすウズラの卵模様は風景になり、気分転換のために嚙むガムは公園で休憩する人々になり、猫の毛皮は野原になって、日常の隙間に飄々とした光景を生み出す。

岸本清子(1939-1988/愛知県生まれ)は、ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ(ネオダダ)のメンバーとして1960年代に前衛芸術シーンで活躍し、1979年に名古屋に帰郷した後は、近代文明批判としての絵巻物や歴史的人物の肖像画などの絵画制作や愛による社会変革を呼びかけるラディカルなパフォーマンスやライブ演奏を展開した。その制作活動において、岸本は猫を愛と自由の象徴として描いた。

 


泉太郎 《ねこ》 2005年 映像 ©Taro Izumi


落合多武 《猫彫刻》 2007年 ポリウレタンプラスチック、キーボード 個人蔵 ©Tam Ochiai

 

泉太郎(1976年奈良生まれ)は、ゲームのような手法を用い、身体の不自由と無意味の自由の狭間に不条理なユーモアを生み出す表現を、映像、オブジェ、パフォーマンスを織り交ぜたインスタレーションなどを通じて発表している。その作品にはしばしば動物も現れるが、泉はその異質性を通して人間の慣習からはずれた回路を開き、鑑賞者の知覚を愉快に宙吊りにする。

落合多武(1967年神奈川県生まれ)は、ドローイング、絵画、オブジェ、彫刻、パフォーマンスといった多様な媒体で制作を行なう。過去の記憶や体験を自由な連想遊びのように繋いだドローイングには、しばしば意味を逃れる気まぐれな脱領域的存在として猫が登場し、容易に意味を成さない豊かな余白、独特のポエジーを生み出している。

大小、内外を反転あるいは入れ子状にすることで、それまで重視されていなかった空間も巧みに活かす建築家の中山英之(1972年福岡県生まれ)、建築をはじめ美術を含めた芸術領域全般で、制作・設計・企画・批評を手掛ける建築家の砂山太一(1980年京都府生まれ)は、中山英之+砂山太一のユニットとして参加。ふたりが共同で手掛ける「かみのいし」は、文字通り紙でできた石そのものに見える家具を展示し、美術館の空間の変容をもたらす。

五月女哲平(1980年栃木県生まれ)は、対象を幾何学的な色面に変換する絵画で注目されたが、近年では無彩色の黒やグレー、白の色面が画面を覆い、地と図が幾何学形象を成す、よりミニマルな絵画を制作している。絵画の歴史の先であくまで自らの体験に根差して制作された五月女の絵画やオブジェは、表面から見えない塗り重ねた色層が積み重ねられた時間を感じさせる。

 


中山英之+砂山太一 《かみのいし》 2020年 紙、木 ©中山英之建築設計事務所


五月女哲平 《our time》 2020年 アクリル、木、 《You and I》 2019年 アクリル、木 ©Teppei Sotome

 


同時開催
愛知県美術館・豊田市美術館同時期開催コレクション展 徳冨満ーテーブルの上の宇宙
2023年2月25日(土)- 5月21日(日)
豊田市美術館 展示室3
https://www.museum.toyota.aichi.jp/exhibition/徳冨満──テーブルの上の宇宙/

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