フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築 @ 豊田市美術館


フランク・ロイド・ライト《帝国ホテル二代目本館(東京、日比谷)1913-23年 第2案 横断面図》フランク・ロイド・ライト 1915年 コロンビア大学エイヴリー建築美術図書館フランク・ロイド・ライト財団アーカイヴズ所蔵 ©The Frank Lloyd Wright Foundation Archives (The Museum of Modern Art | Avery Architectural & Fine Arts Library, Columbia University, New York)

 

帝国ホテル二代目本館100周年
フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築
2023年10月21日(土)-12月24日(日)※一部展示替えあり(前期は11/19まで後期は11/21から)
豊田市美術館
https://www.museum.toyota.aichi.jp/
開館時間:10:00–17:30 最終入館は閉館30分前まで
休館日:月
監修者:ケン・タダシ・オオシマ(ワシントン大学建築学部教授)
特別アドヴァイザー:ジェニファー・グレイ(フランク・ロイド・ライト財団副代表、タリアセン・インスティテュート・ディレクター)
企画担当:千葉真智子(豊田市美術館学芸員)、西崎紀衣(豊田市美術館学芸員)
展覧会URL:https://www.museum.toyota.aichi.jp/exhibition/frank_lloyd_wright/

 

豊田市美術館では、「カウフマン邸(落水荘)」や「グッゲンハイム美術館」を手がけ、アメリカ近代建築を代表する建築家として国際的に知られるフランク・ロイド・ライトの仕事を近年の研究成果を踏まえて紹介する展覧会「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」を開催する。

日本でも「帝国ホテル二代目本館(現在は博物館明治村に一部移築保存)」や「自由学園明日館」を設計し、熱烈な浮世絵愛好家としても知られるフランク・ロイド・ライト(1867-1959/アメリカ合衆国ウィスコンシン州生まれ)。近年、2012年にフランク・ロイド・ライト財団から図面をはじめとする5万点を超える資料が、ニューヨーク近代美術館とコロンビア大学エイヴリー建築美術図書館に移管されたことにより、建築はもちろんのこと、芸術、デザイン、著述、造園、教育、技術革新、都市計画に至るライトの広範な視野と知性を明るみにする調査研究が進み、2017年には研究成果を踏まえた展覧会「Frank Lloyd Wright at 150: Unpacking the Archive」がニューヨーク近代美術館で開かれることとなった。

本展は、同展に企画メンバーとして参加したケン・タダシ・オオシマとジェニファー・グレイが携わり、財団とエイヴリー建築美術図書館の全面的な協力の下、帝国ホテルを基軸に、多様な文化と交流し常に先駆的な活動を展開したライトの姿を明らかにしていく。

 


フランク・ロイド・ライト《ユニティ・テンプル 正面『フランク・ロイド・ライトの建築と設計』》1910年 豊田市美術館蔵


フランク・ロイド・ライト《『リバティー』誌のための表紙デザイン案 柱サボテンとサボテンの花》1927-28年
米国議会図書館版画写真部蔵 Photo: Library of Congress,LC-DIG-ppmsca-84873

 

第1章「モダン誕生 シカゴ―東京、浮世絵的世界観」では、ライトが建築家としてのキャリアを開始した当時大都市化が進んでいたシカゴと、同じく急速に近代都市へと歩みを進めた東京というふたつの都市の文化と交流から受けた影響に着目する。なかでもシカゴで高まった日本美術愛好の熱に触れたライトは、初来日の際に大量の浮世絵コレクションを持ち帰るなど、日本と浮世絵的世界観に大きく惹かれていく。続く第2章「「輝ける眉」からの眺望」では、代表作「カウフマン邸(落水荘)」にも顕著な、建築を地形や風土と密接に結びつけるライトの思考を、アメリカ中西部の地で着想し、確立されたプレイリー・スタイルの代表的住宅「クーンリー邸」や「ロビー邸」、日本での実践として「山邑邸」や「小田原ホテル」を取り上げながら考察する。

第3章「進歩主義教育の環境をつくる」では、ライトの建築思考と、教育者であった母や叔母たちの影響や幼少期に受けたフレーベル教育の関係を掘り下げる。「クーンリー・プレイハウス幼稚園」のためのドローイングと実際に使用されたステンドクラスや家具のほか、今につづく「自由学園」の図面や模型、また同学校の教育資料も紹介しながら、ライトはもちろん、ライトと交流のあった同時代の女性たちの先進的な活動を改めて見直す内容となる。そして、本展の中心となる第4章「交差する世界に建つ帝国ホテル」では、ちょうど100年前の1923年、関東大震災の発生当日に落成した「帝国ホテル二代目本館」を、ライトの仕事の結節点に立つ建物として紹介する。広大な敷地に客室のほか劇場や舞踏会室などさまざまな施設を備えた、それ自体が都市であるかのような壮大なプロジェクトは、最初の構想から10年の歳月をかけて実現し、災禍を生き延びたことで、ライトに大きな名声をもたらすこととなった。日本の土地にふさわしい素材として大谷石とテラコッタを使用、各装飾にもライトがそれまでに経験したさまざまな風土と文化から取り入れられた要素が凝縮された建築には、後のライトの建築や都市計画にも形を変えて展開される要素を認めることができる。本展では、帝国ホテルの図面やドローイング、実際に使われていた家具のほか、記録写真やパンフレットなど、当時の新しい文化としてのホテルの姿も紹介。また、帝国ホテルと同時期に設計された「ミッドウェイ・ガーデンズ」のドローイングも展示し、共鳴し合うふたつの設計を通して、ライト建築の特徴を明らかにする。

 


フランク・ロイド・ライト《クーンリー・プレイハウス幼稚園の窓ガラス》1912年頃 豊田市美術館蔵


フランク・ロイド・ライト《ラーキン・ビルの椅子付き事務机》1904年頃 豊田市美術館蔵

 

第5章「ミクロ/マクロのダイナミックな振幅」では、小さなものから大きなものにまで展開可能なユニット・システムによる建築の考案や、地域に根ざした材料を用いる一方で、コンクリートのもつ可塑性に着目した素材への強い関心に迫る。本展では、ライトが主宰した実践教育の場「タリアセン・フェローシップ」に学んだ磯矢亮介の強力の下、ライトが考案した新たな工法によって実現可能になった、一般的な家族のための手ごろな価格のコンパクト住宅「ユーソニアン住宅」の一部を再現する。第6章「上昇する建築と環境の向上」では、水平方向への広がりが印象的なライト建築において、帝国ホテルの当初案に描きこまれた塔のある高層建築をはじめ、樹状柱を生かした「ジョンソン・ワックス本社ビル」、「プライス・タワー」の経験を経て構想された超高層の「マイル・ハイ・イリノイ」のプランといった垂直に伸びる高層建築への関心や高さへの挑戦を考察する。最終章となる第7章「多様な文化との邂逅」では、ライトを形作った多様な文化との出会いと交流に着目。アメリカ国外の作家たちの交流を取り上げるとともに重要なインスピレーション源としてのイタリアに注目するほか、非西洋への眼差しとして、アメリカ先住民文化を取り入れた「ナコマ・カントリー・クラブ計画案」やイスラム圏への提案としての「大バグダッド計画案」の鳥瞰ドローイングを紹介。また、ライトが思い描いた新しいテクノロジーによってネットワーク的につながる世界、未来を見通す目を取り上げる。

 


フランク・ロイド・ライト《ゴードン・ストロング・プラネタリウム計画案 透視図》米国議会図書館版画写真部蔵 Photo: Library of Congress LC-DIG-ds-10423


フランク・ロイド・ライト《大バグダッド計画案 鳥瞰透視図》1957年 コロンビア大学エイヴリー建築美術図書館フランク・ロイド・ライト財団アーカイヴス蔵 ©The Frank Lloyd Wright Foundation Archives (The Museum of Modern Art | Avery Architectural & Fine Arts Library, Columbia University, New York)

 

関連イベント
フランク・ロイド・ライト展 記念講演会
2023年10月21日(土)14:00-
講師:ケン・タダシ・オオシマ(ワシントン大学建築学部教授)
ジェニファー・グレイ(フランク・ロイド・ライト財団副代表、タリアセン・インスティテュート・ディレクター)
会場:豊田市美術館 講堂
定員:150名(事前申込制、応募多数の場合は抽選)、聴講無料
使用言語:英語(逐次通訳あり)
申込期間:9/21-10/9 ※既に申込期間終了

 


同時開催
コレクション展 歿後20年 若林奮
2023年10月21日(土)-12月24日(日)
豊田市美術館 展示室1-3
https://www.museum.toyota.aichi.jp/exhibition/wakabayashi2023/

巡回予定
フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築
2024年1月11日(木)-3月10日(日)
パナソニック汐留美術館
フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築
2024年3月20日(水・祝)-5月12日(日)
青森県立美術館

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