ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術―いつ・どこで・だれに・だれが・なぜ・どのように?― @ 水戸芸術館現代美術ギャラリー


 

ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術―いつ・どこで・だれに・だれが・なぜ・どのように?―
2023年2月18日(土)– 5月7日(日)
水戸芸術館現代美術ギャラリー
https://www.arttowermito.or.jp/
開館時間:10:00–18:00 入館は閉館30分前まで
休館日:月
企画:後藤桜子(水戸芸術館現代美術センター学芸員)
出品作家:青木陵子、AHA![Archive for Human Activities /人類の営みのためのアーカイブ]、石内都、出光真子、碓井ゆい、ラグナル・キャルタンソン、二藤建人、マリア・ファーラ、リーゼル・ブリッシュ、ホン・ヨンイン、本間メイ、ヨアンナ・ライコフスカ、マーサ・ロスラー、ミエレル・レーダーマン・ユケレス、ユン・ソクナム
展覧会URL:https://www.arttowermito.or.jp/gallery/lineup/article_5188.html

 

水戸芸術館現代美術ギャラリーでは、国内外のアーティスト15名・組の作品を手掛かりに、社会とケア、そしてケアとその担い手の関係をほぐし、編み直すことを試みる展覧会『ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術―いつ・どこで・だれに・だれが・なぜ・どのように?―』を開催する。

本展は、哲学者エヴァ・フェダー・キテイの「どんな文化も、依存の要求に逆らっては一世代以上存続することはできない」という言葉を引き、自分以外に関心を向け、気を配り、世話をし、維持し、あるいは修復するといったケアにかかわる活動を、人間社会を支える根源的な実践として捉える。また一方で、生産性や合理性を追求する近代社会の形成において、長く周縁化され、他者化されてきたケアにかかわる活動が、それゆえに女性の、特に「母親」の本質的な仕事とされてきた幻想を問い直す。「ケアをする行為」を指す「ケアリング」と、「母親である期間や状態」を意味する「マザーフッド」という、長く本質的な結びつきを強調されてきたこれらの言葉の間に区切りを入れたタイトルを掲げる本展では、これらの言葉を解きほぐすことから、社会におけるケアを「ひとり」から「つながり」へとひらくことを試みる。また、「いつ・どこで・だれに・だれが・なぜ・どのように?」という問いかけは、誰もがさまざまな場面でケアと関わっている、というケアの多元性を意識づけるもので、ケアにかかわる活動を縁遠く感じる人もまた、それぞれの立っている場所から、つながりにもとづく社会基盤としての「ケア」を考える手掛かりとして共有されている。

 


ホン・ヨンイン《アンスプリッティング》2019年


本間メイ《Bodies in Overlooked Pain(見過ごされた痛みにある体)》2020年

 

出品作家は、1960年代から70年代の第2波フェミニズムの動きに共鳴し、「ケア」に関わる行為を家庭内へ抑圧することに異議を唱えたマーサ・ロスラーミエレル・レーダーマン・ユケレスや、歴史や政治の中心的存在として語られることのなかった家庭や工場で働く無償または低賃金の労働者に眼を向け、葛藤を抱えながらも互いに意思疎通を図ることで分断を乗り越えようとするホン・ヨンイン。「誰かの重さ」などかたちのないものに注目し、それらの可視化を試みる二藤建人や、「女性特有の痛みはなぜなくならないのか?」という問いをきっかけに妊娠・出産をする身体と社会や習慣によって植えつけられる痛みの関係を考察する本間メイ。「同性の人間の一人として客観的な距離をもって」亡き母と向き合うためその遺品にカメラを向けた《motherʼs》と、子どもの着物に縫い込められた生への祝福や人々の願いをとらえた《幼き衣へ》を出品する石内都、異郷で「目に見えない静かな存在」として社会を支えながら、新たな「つながり」のなかに生きる移民労働者の意志と誇りを、洋の東西を織り交ぜた多彩なスタイルと鮮やかな色彩で描くマリア・ファーラなど。

一貫して「私(わたくし)の記録」に注目してきたAHA![Archive for Human Activities /人類の営みのためのアーカイブ]は、私的な動機に支えられてきた個人の記録に注目するなかで出会った「かおりさん」による「育児日記」の再読をとおして、大きな主語では括り切れないひとりの人間の記録とそれにまつわる記憶へと語り直す「わたしは思い出す」を出品。同プロジェクトは、これまでにせんだい3.11メモリアル交流館、デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)で巡回展示されており、2023年1月に書籍として刊行される。本展会期中には読書会も開催する。

そのほか、公的領域とケアのつながりを強めることを目指す本展では、ケアする人にもケアされる人にも訪れやすい場を、展覧会と連動したワークショップや部活動を行なう「高校生ウィーク」をはじめ、さまざまな展覧会関連プログラムを通して作っていく。(詳細は、下記および公式ウェブサイトを参照。)

 


ラグナル・キャルタンソン《私と私の母》2010年 Courtesy of the artist and Luhring Augustine, New York, and i8 Gallery, Reykjavík


リーゼル・ブリッシュ《ゴリラ・ミルク》2020年

 

関連プログラム ※託児付のプログラム以外も子ども同伴可
アーティストトーク(託児付)
講師:マリア・ファーラ、リーゼル・ブリッシュ、本間メイ
2023年2月18日(土)14:00-15:30
講師:松本篤(AHA![Archive for Human Activities /人類の営みのためのアーカイブ])
2023年4月22日(土)14:00-15:30
定員:各回40名(要申込、先着順)
会場:水戸芸術館 会議場
※参加費無料、詳細は公式ウェブサイトを参照

『わたしは思い出す』読書会
進行:AHA![Archive for Human Activities /人類の営みのためのアーカイブ]
2023年3月11日(土)、3月12日(日)、4月23日(日)各日:14:00-15:30
定員:各回10名(要申込、先着順)
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー ワークショップ室
※参加費無料、1月31日(火)申込受付開始、詳細は公式ウェブサイトを参照

 


AHA![Archive for Human Activities /人類の営みのためのアーカイブ] 展示風景:「わたしは思い出す 10年間の育児日記を再読して」2022年、デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)、兵庫

 

「子育てアーティストの声をきく」
本展では、子育てするアーティストの実体験や広く「ケアする人・ケアされる人を排除しない」ためのアイディアを共有する掲示板を開設・運営し、「声」を募集。会期中には、寄せられた「声」を振り返るプログラムを開催。
「子育てアーティストの声をきく」(坂本夏海、滝朝子、長倉友紀子、本間メイ):アーティストとの協働において文化施設に求められる配慮を提唱したガイドライン「How not to Exclude Artist Parents(子育てするアーティストを排除しないために)」の日本語翻訳からスタートし、芸術生産を取りまく日本国内の実態・環境に照らしながら、子育てと制作にまつわる経験や課題を共有していこうとする活動。http://www.artist-parents.com/ja/

担当学芸員によるギャラリーツアー
2023年2月23日(木・祝)、4月16日(日)、4月30日(日)各日:14:00-(約40分)
定員:各回5名程度(要申込、先着順)
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
※参加費無料、1月31日(火)申込受付開始、詳細は公式ウェブサイトを参照

ウィークエンド・ギャラリートーク
2023年3月4日(土)より毎週土曜日15:30-(約40分)※ただし、予告なく中止となる場合あり
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
※参加費無料、申込不要

 


 

高校生ウィーク2022
2023年3月3日(金)– 4月16日(日)
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー ワークショップ室
連続座談会 powered by いいあんばいレストラン
①「子どもとかかわる市民性とまちづくり」
ゲスト:小澤いぶき[NPO法人PIECES代表]
2023年3月4日(土)13:30-15:30
②「動作と仕事」
ゲスト:川﨑智子[と整体主催/整体指導者]
2023年3月19日(日)13:30-15:30
③「「着たい服」を選ぼう!相談会」
ゲスト:前田哲平[キヤスク/コワードローブ代表]
④「いろんなかたちのLiving Together」
ゲスト:マダム ボンジュール・ジャンジ[ドラァグクイーン/パフォーマンスアーティスト/「ドラァグクイーン・ストーリー・アワー東京」運営メンバー])
2023年4月15日(土)13:30-15:30
料金:各回1,500円/年間パス会員、高校生以下・70歳以上、障害者手帳所持者は500円
定員:各回15名程度(要申込、先着順)
※上述の3回以外にも実施の可能性あり、詳細は公式ウェブサイトを参照

部活動(随時募集・随時活動)
ほんでたいわ部:3月12日(日)、4月8日(土)ほか

柵瀨茉莉子「ぬいぬいワークショップ」
講師:柵瀨茉莉子
2023年3月21日(火・祝)10:30-12:00/14:00-15:30
会場:水戸芸術館 会議場
料金:1キット2,000円
定員:各回15名程度(要申込、申込多数の場合は抽選)

Ph.D.(フッド)ワークショップ 「時をかさねるクッション」
2023年5月4日(木・祝)10:00-12:30/14:30-17:00
定員:各回10名程度(要申込、申込多数の場合は抽選)
対象:小学1年生以上 ※小学生は保護者も参加
料金:高校生以下1,000円、一般2,500円

そのほかの関連プログラムは、公式ウェブサイトを参照

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