ピーター・ドイグ展 @ 東京国立近代美術館


ピーター・ドイグ《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》 2000-02年、油彩・キャンバス、196×296cm、シカゴ美術館蔵 ©Peter Doig. The Art Institute of Chicago, Gift of Nancy Lauter McDougal and Alfred L. McDougal, 2003. 433. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

 

ピーター・ドイグ展
2020年2月26日(水)- 6月14日(日)
東京国立近代美術館
https://www.momat.go.jp/
特設ウェブサイト:https://peterdoig-2020.jp
開館時間:10:00-17:00(金曜、土曜は20:00まで)入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、3/30、5/4は開館)、5/7
企画者:桝田倫広(東京国立近代美術館主任研究員)

 

東京国立近代美術館は、過去から現在にいたる幅広い絵画技術を手に常に自身の方法を更新し、現代の絵画表現を代表する画家として国際的に知られる、ピーター・ドイグの個展を開催する。

幼少期をトリニダード・トバゴとカナダで過ごしたピーター・ドイグ(1959年エジンバラ生まれ)は、1970年代末に渡英、セント・マーティンズ・スクール・オブ・アートなどで美術を学ぶ。数年間のカナダへの帰国を経て、ロンドンに再び戻り、90年にチェルシー・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインで修士号を取得すると、翌年にはホワイトチャペル・ギャラリー主催の美術賞を受賞し、個展を開催する。ダミアン・ハーストに代表されるヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBAs)が台頭する時代にも、絵画表現に真摯に向き合う姿勢は高い評価を受け、94年にはターナー賞の最終候補にも選出されている。近代画家の構図やモチーフ、映画や広告、新聞に掲載された画像やポストカード、ドイグ自身が撮影した写真など、さまざまなイメージの選択、組み合わせを試行錯誤しながら、自身の絵画へのアプローチを更新しつづけるドイグは、2002年に活動の拠点をトリニダード・トバゴの首都、ポート・オブ・スペインに移す。2008年にはテート・ブリテンを皮切りに、パリ市立近代美術館、シルン・クンストハレ(フランクフルト)を巡回する大規模な回顧展を実現し、同年、ケルンのルートヴィヒ美術館主催のヴォルフガング・ハーン賞を受賞。2013年には出身地であるエジンバラのスコットランド国立美術館での個展『No Foreign Lands』を開催、2014年から15年にかけてはバーゼルのバイエラー財団、昨年はウィーンのゼツェッションで個展を開催するなど、各地の主要な美術機関での個展が続いている。また、本展にも出品される《のまれる》(1990)が、2015年のクリスティーズ・オークションで約2,600万米ドル(当時約30億円)で落札されたように、マーケットでの評価も高い。

 


ピーター・ドイグ《のまれる》 1990年、油彩・キャンバス、197×241cm、ヤゲオ財団蔵 ©Peter Doig. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120


ピーター・ドイグ《スキージャケット》 1994年、油彩・キャンバス、295×351cm、テート蔵 ©Peter Doig. Tate: Purchased with assistance from Evelyn, Lady Downshire’s Trust Fund 1995. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

 

日本初個展となる本展では、ロンドンからポート・オブ・スペインに拠点を移した2002年を境に、制作活動初期の1986年から2002年までを第1章「森の奥へ」、2002年以降の作品を第2章「海辺で」で紹介する。上述した《のまれる》もそのひとつだが、映画『13日の金曜日』のワンシーンを着想源に初期から一貫したモチーフのひとつになっているカヌーが描かれた諸作品、新聞に掲載されたニセコのスキー場の広告をもとに描かれた《スキージャケット》(1994)や、水性塗料による鮮やかな色彩のコントラストによって構成された近年の作品《ポート・オブ・スペインの雨(ホワイトオーク)》(2015)といった幅3メートルを超える大型作品など、世界各地の美術館や財団が所有する作品や作家本人が所有する作品が一堂に会する。そして、第3章ではポート・オブ・スペインの自身のスタジオでアーティストのチェ・ラブレスとともに2003年よりはじめた映画の上映会「スタジオフィルムクラブ」の活動を、一連のドローイングとともに紹介する。ドローイングは、建物を共有している人々や近隣住民に上映会を周知するために描かれたもので、上映会は誰でも無料で参加することができ、上映後にも上映作品について語り合ったり、音楽ライブが開かれたりと、一種の文化的サロンのようなコミュニティの形成を目的としている。なお、本展会期中には、ドイグ本人と本展カタログ寄稿者で小説家の小野正嗣によるトークイベントが開催される。

 

関連イベント
トークイベント
ゲスト:ピーター・ドイグ、小野正嗣(小説家)
2020年3月1日(日)13:30-15:00
会場:東京国立近代美術館 地下1階講堂
定員:130名(先着順)
無料(要観覧券 ※半券可)
※当日10:00より1階受付にて整理券配布

 


ピーター・ドイグ《ラペイルーズの壁》 2004年、油彩・キャンバス、200×250.5cm、ニューヨーク近代美術館蔵 ©Peter Doig. The Museum of Modern Art, New York. Gift of Anna Marie and Robert F. Shapiro in honor of Kynaston McShine, 2004. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120


ピーター・ドイグ《ポート・オブ・スペインの雨(ホワイトオーク)》 2015年、水性塗料・麻、301×352cm、作家蔵 ©Peter Doig. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120


ピーター・ドイグ《ストレンジャー・ザン・パラダイス》(「スタジオフィルムクラブ」より) 2011年、油彩・紙、93.5×61.5cm、マイケル ヴェルナー ギャラリー蔵 ©Peter Doig. Courtesy Michael Werner Gallery, New York and London. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

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