パレスチナで起きているイスラエル政府によるジェノサイドへの抗議運動を行なう出品作家の飯山由貴。
2024年3月11日、国立西洋美術館で開かれた展覧会「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?——国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ」のプレス内覧会にて、飯山由貴ら出品作家有志を含む市民が、パレスチナで起きているイスラエル政府によるジェノサイドに抗議するとともに、同館オフィシャルパートナーの川崎重工業株式会社(以下、川崎重工)に対してイスラエルからの武器輸入の取りやめを要求、国立西洋美術館に対しても川崎重工の武器輸入・販売を取りやめるよう働きかけることを訴えた。
国立西洋美術館は、昨年3月17日に川崎重工と同館初のオフィシャルパートナー契約を締結し、「アートの力を活かした豊かな社会づくり」を目指すと発表した。同館は1959年にフランス政府から日本へ寄贈返還された「松方コレクション」の保存・公開を目的に設立。松方コレクションは、川崎重工の前身である川崎造船所の初代社長・松方幸次郎が1910年代の終わりから1920年代にかけてヨーロッパ各地で収集した美術品からなる(国立西洋美術館ウェブサイト「松方コレクション」)。
飯山は川崎重工にイスラエルの武器の輸入を取りやめることを要求し、「川崎重工業株式会社と国立西洋美術館は、イスラエルの殺傷武器の輸入・輸出によってともに利益を得ること、そして、それによってパレスチナ人の虐殺に加担すること、未来においてもほかの地域で多くの人々が殺され続けることの正当化に美術館の鑑賞者、労働者、美術作品をはじめとするすべての人、物を利用しないでください。武器による直接の犠牲者をはじめ、兵士とその周囲にいる人々、多くの人間の心身の犠牲によって軍事産業の利益は成立します。川崎重工業株式会社はその背景を文化によって洗い流し、不可視化する手段として、国立西洋美術館という私たちの税金で作られた場を利用しないでください」と訴え、国立西洋美術館にも川崎重工に対し、イスラエルの武器の輸入・販売を取りやめることを早急に働きかけることを求めるとともに、来場者にもイスラエル企業に対するBDS運動(ボイコット、投資撤収、制裁)などを通じて、一刻も早い停戦とパレスチナの解放に向けた行動を呼びかけた。会場2階からは飯山と同調する形で抗議運動の参加者が「川崎重工 虐殺に 加担するな」と書かれた垂れ幕を掲示し、パレスチナで起きているイスラエル政府によるジェノサイドに対する反対を表明。イスラエルの軍事企業から殺傷武器を購入することは、国際司法裁判所(ICJ)によるイスラエルへのジェノサイド防止の暫定命令に抵触すると考えられることなどを訴えた。また、プレス内覧会後も美術館外で垂れ幕を掲げるなどのプロテストが続いた。
「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」は、21組のアーティストが参画して、同館開館以来初の試みとなる現代美術展。主に20世紀前半までの「西洋美術作品」だけを収蔵、保存、展示してきた同館が、存命のアーティストを招聘し、同館所蔵の作品からインスピレーションを得た新作や、美術館という場所の意義を問い直す作品などを展示するとともに、6,000点を超えるコレクションからアーティストたちが独自の視点で選んだ約70点の所蔵作品を公開する。
抗議運動の参加者が「川崎重工 虐殺に 加担するな」の垂れ幕を掲げる。
国立西洋美術館のエントランス。国立西洋美術館のロゴと同館オフィシャルパートナーの川崎重工業株式会社のロゴが並ぶ。
ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?——国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ
2024年3月12日(火)- 5月12日(日)
国立西洋美術館
https://www.nmwa.go.jp/
開館時間:9:30–17:30 (金・土は20:00まで)入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし3/25、4/29、4/30、5/6は開館)、5/7
展覧会URL:https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2023revisiting.html