恵比寿映像祭が第2回コミッション・プロジェクトの最終候補を発表


左から:小田香、小森はるか、永田康祐、牧原依里(Photo by Hiroshi Ikeda)

 

2024年2月15日、恵比寿映像祭は第2回「コミッション・プロジェクト」のファイナリストに、小田香、小森はるか、永田康祐、牧原依里の4名を選出したと発表した。

コミッション・プロジェクトは、国際的な発信および新しい文化価値の醸成を目的に昨年の恵比寿映像祭2023より開始。日本を拠点に活動する新進アーティストに新作映像作品の制作委嘱を行ない、恵比寿映像祭が一貫して掲げてきた「映像とは何か」という問いに対する「新たな恵比寿映像祭」の成果として発表する試みとして位置付けられている。第1回のファイナリストに選出された荒木悠、葉山嶺、金仁淑、大木裕之は、恵比寿映像祭2023に合わせて新作を発表。特別賞を受賞した荒木と金は、現在開催中の恵比寿映像祭2024に連動する形で特別展示を行なっている。(恵比寿映像祭2024は2月18日で閉幕するが、コミッション・プロジェクトの特別展示は3月24日まで開催。)

2月14日に東京都写真美術館で開かれた第2回コミッション・プロジェクト審査会では、最終選考に残った8名のアーティストがプレゼンテーションを行ない、5名の審査員による審査を経て、「母との対話を通じて創作の可能性に挑戦する小田香、独自の方法で記憶を伝承するドキュメンタリーの在り方を考える小森はるか、食や植民地の歴史からイメージの語りを追求する永田康祐、ダイバーシティの観点から映像の実験的な手法を提示する牧原依里」という「「ダイバーシティ」を包含し、多様な映像制作に挑む作家たち」が選出された。審査委員は、沖啓介(メディア・アーティスト)、斉藤綾子(映画研究者)、レオナルド・バルトロメウス(山口情報芸術センター[YCAM]キュレーター)、メー・アーダードン・インカワニット(アーツ・アンド・メディア研究教育センター共同ディレクター)、田坂博子(東京都写真美術館学芸員/恵比寿映像祭キュレーター)が務めた。ファイナリストの4名は、来年の恵比寿映像祭2025に新作を発表。同会期中の審査により特別賞に選ばれたアーティストには恵比寿映像祭2026での特別展示の機会が提供される。

 


小田香《Day of the Dead(死者の日)》2021年 第14回恵比寿映像祭「スペクタクル後」東京都写真美術館、2022年 Photo: ART iT


小森はるか+瀬尾夏美《あわいゆくころ再歩》2011-21年 「3.11とアーティスト:10年目の想像」水戸芸術館現代美術ギャラリー、2021年 Photo: ART iT

 

小田香(1987年大阪府生まれ)は、イメージと音を介して「人の記憶のありか」「人間とは何か」を探求する。ボスニアの炭鉱を主題とした第一長編作品『鉱 ARAGANE』(2015)が山形国際ドキュメンタリー映画祭・アジア千波万波部門にて特別賞を受賞。エッセイ映画『あの優しさへ』(2017)がライプティヒ国際ドキュメンタリー&アニメーション映画祭ネクスト・マスターズ・コンペティション部門にてワールドプレミア上映。最新作長編『セノーテ』(2019)は山形国際ドキュメンタリー映画祭、ロッテルダム国際映画祭などに招待され各国を巡回。2020年に第1回大島渚賞を受賞。2021年には『セノーテ』の成果により第71回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞している。

小森はるか(1989年静岡県生まれ)は、東日本大震災後、ボランティアで東北を訪れたことをきっかけに瀬尾夏美(画家・作家)とアートユニットとして活動を開始。2012年に岩手県陸前高田に拠点を移し、人々の語り、暮らし、風景を映像で記録している。2022年より新潟在住。主な作品に《息の跡》(2016)、《空に聞く》(2018)、《二重のまち/交代地のうたを編む》(2019/瀬尾夏美と共同監督)、《ラジオ下神白―あのとき あのまちの音楽から いまここへ》(2023)など。

 


永田康祐《Purée》2020年「約束の凝集 vol.2 永田康祐|イート」gallery αM、2020年 Photo: ART iT


牧原依里《私は母の夢をみる》2023年「 〜 視覚で世界を捉えるひとびと」BUoY、2023年 Photo: ART iT

 

永田康祐(1990年愛知県生まれ)は、自己と他者、自然と文化、身体と環境といった近代的な思考を支える二項対立、またそこに潜む曖昧さに関心をもち、写真や映像、インスタレーションなどを制作している。近年は、食文化におけるナショナル・アイデンティティの形成や、食事作法における身体技法や権力関係、食料生産における動植物の生の管理といった問題についてビデオエッセイやコース料理形式のパフォーマンスを発表している。主な個展に「イート」(gallery αM、東京、2020)、グループ展に「見るは触れる 日本の新進作家 vol.19」(東京都写真美術館、2022)、あいちトリエンナーレ2019(愛知県美術館)など。

牧原依里(1986年生まれ)は、ろう者の「音楽」をテーマにしたアート・ドキュメンタリー映画《LISTEN リッスン》(2016)を雫境(DAKEI)と共同監督し、最新作は《田中家》(2021)。既存の映画が聴者による「聴文化」における受容を前提としていることから、ろう者当事者としての視点から問い返す映画表現を実践。東京国際ろう映画祭の代表も務める。

 


 

恵比寿映像祭2024「月へ行く30の方法」
2024年2月2日(金)-2月18日(日)
※コミッション・プロジェクト(3階展示室)のみ3月24日(日)まで
https://www.yebizo.com/
東京都写真美術館、恵比寿ガーデンプレイス センター広場ほか
開催時間:10:00–20:00(最終日は18:00まで)
(恵比寿映像祭以後のコミッション・プロジェクトは10:00-18:00)
休館日:月(ただし、12日は開館)、2/13
企画統括::田坂博子(恵比寿映像祭キュレーター、東京都写真美術館学芸員)

Copyrighted Image