野良になる @ 十和田市現代美術館


 

野良になる
2024年4月13日(土)-11月17日(日)
十和田市現代美術館
https://towadaartcenter.com/
開館時間:9:00–17:00 入場は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、4/22、4/29、5/6、7/15、7/29、8/5、8/12、9/16、9/23、10/14、11/4は開館)5/7、7/16、9/17、9/24、10/15、11/5
企画担当:外山有茉(十和田市現代美術館キュレーター)
展覧会URL:https://towadaartcenter.com/exhibitions/noraninaru/

 

十和田市現代美術館では、青森県内の5つの美術機関を中心に開催されるAOMORI GOKAN アートフェス2024「つらなりのはらっぱ」のメイン企画のひとつとして、国内外の若手アーティスト4名を紹介するグループ展「野良になる」を開催する。

本展「野良になる」は、現在私たちが知る「人間」のあり方そのものが、自然を管理すべきものとして収奪してきたのだとすれば、そのおなじ「人間」が自然を「救う」ことができるのかとの問いを立て、人間の自然に対する関係の再考を目指す。そこで、それぞれの視点から自然を捉える丹羽海子、䑓原蓉子、アナイス・カレニン、永田康祐の作品を通して、私たちの思考を規定するさまざまな二項対立的な枠組みの境界を撹乱しつつ強かに―野生でも飼われるのでもなく野良のように―息づくあり方や物語との出会いを提供する。

 


参考図版 丹羽海子《Baby Shoe Series: My Daughter Beluga》2023年 Courtesy the artist, xyz collective, and Someday, New York


参考図版 䑓原蓉子《それじゃわからない》2022年 ©Yoko Daihara, courtesy of Take Ninagawa, Tokyo

 

丹羽海子(1991年愛知県生まれ)は、西洋的な主体概念を否定し、身体やジェンダーに拘束されないオルタナティブな主体のあり方を彫刻を通して探究している。萎れた花や、熟したフルーツといった有機的な素材を用いて、儚く移ろいやすい存在を表現する。近年の主な個展に「靴の中の暮らし(幻影コオロギ)」(Fig.、東京、2023)、「The Quantified Elf (and how it came to love itself)」(Someday Gallery、ニューヨーク、2022)、グループ展に「The Invention of Nature」(Nino Mier Gallery、ロサンゼルス、 2023)、「もうすぐ春ですね」(XYZ Collective、東京、2022)など。本展では、ペットボトルや、廃棄された電化製品など 不要になったものを分解・再構成し、炭化させた植物などの有機的なもの、さらに丹羽にとって喪失や孤独の象徴であるコオロギを組み合わせた新作の 彫刻インスタレーションを発表する。害虫として駆除されたり、人間が飼う愛玩動物の餌として売られるコオロギたちが、人間の消費社会が生み出すゴミでできた街に集う様子を表現する。

䑓原蓉子(1989年千葉県生まれ)は、ドローイングで構成したイメージを、ウールを用いたテキスタイルへと変換して制作している。その作品は日常で出会う植物や風景など、さまざまなモチーフを紡ぎ合わせ、カラフルで空想的な心象風景を特徴とする。主な個展に「project N 88 䑓原蓉子」(東京オペラシティ アートギャラリー、2022)、「食べてください食べないで ください」(Take Ninagawa、東京、2022)など。また、美術家の冨樫達彦、渡邉庸平とともにアーティストランスペース兼食堂「Lavender Opener Chair・灯明」を運営する。本展では、青森県内で奥入瀬渓流や恐山、六ヶ所村などを訪れ、広大でときに畏怖 を感じさせる自然が織りなす景色と、そこに住む人々の生活の様子、自然との精神的なつながりなどを目にした経験を、人間と自然の多様な関係のあり方を作家自身の身の回りの観察とも織り交ぜたテキスタイル作品を発表する。

 


参考図版 アナイス・カレニン《リコマペ》2022年 撮影:竹久直樹


参考図版 永田康祐《Purée》2020年

 

アナイス・カレニン(1993年サンパウロ生まれ)は、ブラジルに植民地時代以前から伝わる、薬効を持つ植物に関する知識体系を研究し、植物との親密な関わりを通して植物と人間との関係性を問い直している。アニミズムや神話、植民地主義の歴史、言語、科学など、さまざまな分野を横断してリサーチやフィールドワークを行ない、香りやサウンドといった五感に訴える包括的な表現方法で、植物を新たな姿で捉える作品を制作している。主な個展に「Things named [things]」(The 5th Floor、東京、2023)、「Mediate Plants」(工房 親、東京、2023)など。サンパウロ大学博士研究員、早稲田大学客員研究員及びティーチングアシスタント。近年は日本を拠点に活動している。東北地方において近代化以前に人々が築いていた植物との関係性や、現代の森林の植生の管理方法をリサーチを経て、本展では新作の彫刻と香りを組み合わせた室内のインスタレーションと、サウンドと植物で構成する実験的な庭のインスタレーションを発表する。

永田康祐(1990年愛知県生まれ)は、自己と他者、自然と文化、身体と環境といった近代的な思考を支える二項対立、またそこに潜む曖昧さに関心をもち、写真や映像、インスタ レーションなどを制作している。近年は、食文化におけるナショナル・アイデンティティの形成や、食事作法における身体技法や権力関係、食料生産における動植物の生の管理といった問題についてビデオエッセイやコース料理形式のパフォーマンスを発表している。主な個展に「イート」(gallery αM、東京、2020)、グループ展に「見るは触れる 日本の新進作家 vol.19」(東京都写真美術館、2022)、あいちトリエンナーレ2019など。本展では、十和田湖のヒメマス養殖に関するリサーチを通して、養殖における人間とサケ科の魚との関係性に関心から制作したサーモンの視点から見た世界を想像する映像作品《Becoming Salmon》と、人間の立場から他種の視点を想像するということについて文化人類学者やアーティストらとディスカッションした映像作品《How to Become a Salmon》を展示する。また、7月と11月には、食糧生産と動植物の生に関する考察をコース料理形式にまとめた、実際に食べて味わうことのできる作品《Feasting Wild》も発表する。

 

関連イベント(下記のほかにも、会期中にパブリック・プログラムを予定。詳細は後日公式ウェブサイトにて発表)
担当学芸員による企画展ギャラリートーク
2024年4月27日(土)14:00–14:40
集合場所:十和田市現代美術館 受付(チケットカウンター)
定員:10名
参加費:無料 ※要美術館観覧チケット(企画)
https://towadaartcenter.com/events/nora_gallery_talk_427/

永田康祐《Feasting Wild》
2024年7月14日(日)、7月20日(土)、7月21日(日)、11月10日(日)、11月16日(土)、11月17日(日)各日:18:00–21:00
会場:14-54(まちなかの会場)(住所:十和田市稲生町14-54)
定員:8名(※要予約)
料金:8,000円(11/10、11/16、11/17は未定)
※7/14、7/20、7/21のチケット購入は下記URLにて4月1日より開始。(11月分は後日公開)
https://feastingwild.stores.jp/

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