恵比寿映像祭2025が総合テーマおよび参加作家の一部を発表


 

2024年11月19日、「映像とは何か」という問いを掲げ、毎年異なるテーマの下で、展示や上映、シンポジウムなど、複合的なプログラムを通じて映像表現の可能性を探究してきた恵比寿映像祭(主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都写真美術館、日本経済新聞社)が、来年1月31日に開幕する恵比寿映像祭2025の総合テーマおよび参加アーティストの一部を発表した。

恵比寿映像祭2025の総合テーマは、「Docs ―これはイメージです(Docs: Images and Records)」。2025年に総合開館30周年を迎える東京都写真美術館をメイン会場に、あらためてメディアの変容を考察するとともに、19世紀から現代までの多様な表現の紹介を通じて、言葉とイメージの問題をひも解くことで、「ドキュメント/ドキュメンタリー」の再考を試みる。書類や文書を意味し、事実に基づく情報の記録(言葉はもとより写真・映像などのイメージを含む)を指す「ドキュメント(document)」が形容詞化した「ドキュメンタリー(documentary)」という言葉には、ドキュメント的という形容詞の語義だけでなく、記録映画という名詞の意味も含まれている。実写映画の起点と称される、工場から出てくる人々を記録したリュミエール兄弟の《工場の出口》(1895)から130年を経た現在、誰もが写真や映像で生活を記録し、共有することはもはや当たり前になっている。また、現在、写真は画像へ、映像は動画へ、いわば制御可能なデジタルデータへと拡張し、事実とそれを表すイメージとの関係はより複雑で曖昧なものになっている。

 


トニー・コークス《The Queen is Dead … Fragment 2》インスタレーション風景(ローマ現代美術館[MACRO])2021年 作家蔵 Courtesy the artist, Greene Naftali, New York, Hannah Hoffman, Los Angeles, and Electronic Arts Intermix, New York. Photo: Simon d’Exéa.[参考図版]


劉玗(リウ・ユー)《If Narratives Become the Great Flood》2020年

 

この度発表された展示部門の参加アーティストには、国内初展示となる、既存のテキストを鮮やかな色彩と不協和音のサウンドトラックの上に重ねたヴィデオ・エッセイにより、歴史的および文化的瞬間を再文脈化してきたトニー・コークスや、東南アジアの労働史、熱帯地域への考察、そして祖先の記憶と機械の論理をテーマに、アーカイヴおよびフィールド・リサーチを通じて、支配的なナラティヴを拒絶する実践を探求してきたプリヤギータ・ディア。ドキュメントの調査に基づくフィールド・スタディを、ある種の方法論として自身の芸術的実践に結びつけることで、内在し、絡み合った複数のナラティヴを再構築し、主にビデオと空間インスタレーションとして発表してきたリウ・ユー[劉玗]、家事/生活用具や工具の反復的で過酷なタスクを自身が担うことで、人間と機械を融合させ、サイボーグとしての役割を体現する作品を発表してきたカウィータ・ヴァタナジャンクール、記憶や認識など目に見えない不確かな動態をモチーフに、映像メディアを中心とした制作を行なっている斎藤英理、レズビアンを公言し活動したパフォーマンス・アーティストの先駆的存在であり、ウィメンズ・アート・ネットワーク(WAN)の設立をはじめ、幅広い活動で国際的なネットワークの形成に努め、晩年はALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症しながらも表現活動を続けたイトー・ターリ(アーカイブ展示)など。また、フィールド録音による音源制作と並行して映像やインスタレーションなどを手がけてきた角田俊也は、新作映像インスタレーションを発表予定。

 


斎藤英理《Social Circles》2023年


イトー・ターリ《ひとつの応答ーぺ・ポンギさんと数えきれない女たち》(2012年12月「アジアをつなぐー境界を生きる女たち1984-2012」展 沖縄県立博物館・美術館)パフォーマンス使用画像より[参考図版]写真提供:ターリの会

 

また、3F展示室では、恵比寿映像祭2023から国際的な発信および新しい文化価値の醸成を目的に始まった制作委嘱事業「コミッション・プロジェクト」の第2回ファイナリスト、小田香小森はるか永田康祐牧原依里による新作を映像祭会期および会期終了後の3月23日まで展示する。本プロジェクトは、第2回より3年サイクルの実施となり、2年目となる2025年は作品発表と特別賞受賞者決定を行ない、3年目となる2026年に特別賞受賞者による個展を開催する。

 

総合開館30周年記念 恵比寿映像祭2025「Docs ―これはイメージです」
2025年1月31日(金)-2月16日(日)
※コミッション・プロジェクト(3階展示室)のみ3月23日(日)まで
https://www.yebizo.com/
東京都写真美術館、恵比寿ガーデンプレイス各所、地域連携各所ほか
開催時間:10:00–20:00(最終日は18:00まで)
(※コミッション・プロジェクト(3階展示室)のみ10:00-18:00/恵比寿映像祭会期終了後の木曜・金曜は10:00-20:00)
休館日:月

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