韓国美術家賞2023


クォン・ビョンジュン 画像提供:韓国国立現代美術館

 

2024年2月8日、韓国国立現代美術館(MMCA)は、韓国有数の現代美術賞として知られる韓国美術家賞を、クォン・ビョンジュンに授賞すると発表した。

クォン・ビョンジュン(1971年ソウル生まれ)は、立体音響の録音とその展示空間での再現や、関連技術の開発に関心を持ちながら、音楽、演劇、美術を総合するニューメディアによるパフォーマンスを企画、演出している。1990年代初頭にシンガーソングライターとして活動をはじめ、6枚のアルバムを発表。2000年より、その活動を映画音楽やファッションショー、ダンス、演劇、韓国伝統音楽などといった幅広い領域に展開する。2000年代後半にオランダで科学と芸術について学んだのち、2008年からアムステルダムの電子音楽・電子楽器にかかわる研究施設STEIMでエンジニアを務めた。2011年の帰国以来、現在に至るまで音楽に関連するハードウェア研究者として活動するとともに、新しい楽器や装置を開発、活用したニューメディアによるパフォーマンスを制作している。アンビソニックス技術を使用したマルチチャンネルのサウンド・インスタレーションの第一人者であり、現在はロボット演劇の演出も手がけている。

 


クォン・ビョンジュン Photo: ART iT

 

「韓国美術家賞2023」の展覧会では、人間社会のマイノリティかつ伴侶として「ロボット」を取り上げ、《Robot Crossing a Single Line Bridge》(2023)、《Ochetuji Ladderbot》(2022)、《Nael Performing the Fan Dance》(2021)、《Jangseung》(2023)などの新作、旧作を交えたロボットによるパフォーマンスを発表。審査委員会は、その表現が現代社会におけるポスト・ヒューマン哲学に対する感覚を刺激するアプローチをとり、芸術における古くからのテーマである科学・技術の発展と人間性という問いに、優れた共感覚的な演劇形式を応用した点を高く評価した。また、韓国国立現代美術館ディレクターのキム・ソンヒは、その表現を「没入型のロボット演劇を通じて、人間の共同体の持つ無限の可能性に対する問題を提起するとともに、絶え間なく進む現代文明の流れにおける、さまざまな分岐点を提示した」と評し、展覧会に参加したクォンを含む4名の最終候補者に感謝の意を表した。

韓国美術家賞は、昨年、その10年間を回顧する展覧会を開催した上で同賞の開催を休止し、2023年度は韓国国籍保持者に限られていた対象を朝鮮半島にルーツを持つアーティストであれば国籍を問わない規定に変更、新作中心から過去作と新作を組み合わせた展示構成を許可、新作製作補助費の増額など、さまざまな変更とともに新たな形で再開した。審査過程にも変更があり、オンラインによる1次審査を通過した4名が展覧会に参加。会期中に審査員とアーティストによる公開討議を実施した上で、後日、審査員のみの約2時間の討議が行なわれた。最終審査は、アーロン・セザール(デルフィナ財団ディレクター)、チェ・ビンナ(ハワイ・トリエンナーレ2025共同キュレーター)、ナフ・ハク(アントワープ現代美術館[M HKA]アソシエイト・ディレクター)、植松由佳(国立国際美術館主任研究員)、キム・ソンヒ(韓国国立現代美術館ディレクター)の5名が務めた。

 


クォン・ビョンジュン Photo: ART iT


クォン・ビョンジュン Photo: ART iT

 

韓国美術家賞https://koreaartistprize.org/

韓国美術家賞2023
2023年10月20日(金)- 2024年3月17日(日)
韓国国立現代美術館 ソウル館
https://www.mmca.go.kr/eng/exhibitions/exhibitionsDetail.do?exhFlag=1
参加アーティスト:クォン・ビョンジュン、ガラ・ポラス・キム、イ・カンスン、チョン・ソジョン

 


歴代受賞者および最終候補(太字はグランプリ)
2023クォン・ビョンジュン、ガラ・ポラス・キム、イ・カンスン、チョン・ソジョン
2022|「韓国美術家賞」回顧展のため実施せず
2021チェ・チャンスク、キム・サンジン、バン・ジョンア、オ・ミン
2020イ・スルギ、キム・ミネ、チョン・ユンソク、チョン・ヒスン
2019イ・ジュヨ、キム・アヨン、ホン・ヨンイン、パク・ヘス
2018サイレン・ウニョン・チョン、ク・ミンジャ、オキン・コレクティヴ、チョン・ジェホ
2017ソン・サンヒ、パク・ギョングン、ペク・ヒョンジン、サニー・キム
2016ミックスライス、キム・ウル、バク・スンウ、ハム・ギョンア
2015オー・インファン、キム・キラ、ナ・ヒュン、ハ・テボム
2014ノ・スンテク、ク・ドンヒ、キム・シニル、チャン・ジア
2013コン・ソンフン、シン・ミギョン、チョ・へジョン、ハム・ヤンア
2012ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホ、ギム・ホンソック、イ・スギョン、イム・ミヌク

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