韓国美術家賞2018


siren eun young jung Deferral Theatre (2018) single channel video, HD, color, sounds, 35:12

 

韓国国立現代美術館は、国内有数の現代美術の賞として知られる韓国美術家賞2018(SBS財団)をサイレン・ウニョン・チョンに授賞した。サイレン・チョンには賞金1,000万ウォン(約100万円)が授与される。

サイレン・ウニョン・チョン(1974年インチョン生まれ)は、フェミニズム的な関心の下、自分自身や周りの女性の体験を基にした作品を制作、2008年より韓国の女性のみが演者を務める大衆演劇ヨソン・グックの研究、調査、分析に基づいたプロジェクトを展開している。サイレンは梨花女子大学校やリーズ大学で視覚芸術とフェミニズムを学び、東アジア地域の近現代史やジェンダー規範など、重要な民族誌学的対象となりうるヨソン・グックに着目する。40年代末に生まれ、50年代に最盛期を迎え、60年代に衰退し、ほとんど記録が残されていないヨソン・グックのコミュニティの内側に入り込みながら、伝統演劇の記録の充実よりもむしろ、その演劇が当時持ちえた政治性に着目したリサーチを重ね、作品に反映している。

これまでに、アートスペース・プール(2015)や南山アートセンター(2016)などで個展を開催。国立アジア文化殿堂(光州、2014)、イタリア国立21世紀美術館(ローマ、2014)、メディアシティ・ソウル2014、第8回アジア・パシフィック・トリエンナーレ(2015)、第7回光州ビエンナーレ(2016)、台北ビエンナーレ2016、ポンピドゥー・センター(2016)、ハウス・デア・クルトゥレン・デア・ヴェルト(ベルリン、2017)などの企画展、国際展に参加している。日本国内では、国際舞台芸術ミーティング in 横浜(TPAM)で2014年に「(Off) Stage / Masterclass」、2018年に「変則のファンタジー_日本版」、2015年には広島市現代美術館の「被爆70周年 ヒロシマを見つめる三部作」の第3部として開かれた『ふぞろいなハーモニー』に「私は歌わない」(2015)と、いずれも「ヨソン・グック」プロジェクトの作品を発表している。

 


siren eun young jung I am the King (2018) single channel video, HD, color, sounds, 06:23


siren eun young jung Deferral Archive (2018) digital pigment prints, curtain, moving images, graphic sheets, dimension variable

 

2018年の韓国美術家賞はサイレン・チョンのほか、ク・ミンジャオキン・コレクティヴチョン・ジェホが最終候補に残り、韓国国立現代美術館での展覧会に新作を出品した。(展覧会は11月25日まで開催)審査員を務めたのは、バルトロメウ・マリ、スザンヌ・コッター、ワン・チュンチェン[王春辰]、キム・ソンウォン クアウテモック・メディナの5名。

韓国美術家賞は、2012年に韓国国立現代美術館とSBS財団が前身となる「Artist of the Year」を引き継ぐ形で設立し、以来、韓国現代美術に多大な貢献をもたらし、新しいヴィジョンや可能性を探求するアーティストの発掘、支援を目的に毎年開かれている。運営委員会が依頼した推薦委員によって選ばれたアーティストが、韓国国立現代美術館の協力とSBS財団の支援を受けて、同美術館で開催する展覧会で新作を発表し、そのプレゼンテーションを基に国内外の有識者が務める審査委員がグランプリを決定する。また、韓国国立現代美術館とSBS財団は、2015年に同賞の最終候補に選ばれたアーティストのための海外活動基金を設立し、第56回ヴェネツィア・ビエンナーレ韓国館でのムン・キョンウォン&チョン・ジュンホ、第57回ヴェネツィア・ビエンナーレ韓国館でのイ・スギョンの作品制作をはじめ、数々のプロジェクトの支援を実施し、今年もムン&チョンのテート・リバプール、ハム・ギョンアのバンコク・ビエンナーレの作品制作も支援している。

 

韓国美術家賞http://koreaartistprize.org/

韓国美術家賞2018
2018年8月11日(土)-11月25日(日)
韓国国立現代美術館 ソウル館
http://www.mmca.go.kr/
参加アーティスト:サイレン・ウニョン・チョン、ク・ミンジャ、オキン・コレクティヴ、チョン・ジェホ

 

 

韓国美術家賞2018最終候補
サイレン・ウニョン・チョン|siren eun young jung(1974)
ク・ミンジャ|Minja Gu(1977)
オキン・コレクティヴ|Okin Collective(Hwayong Kim, Joungmin Yi and Shiu Jin / formed in 2009)
チョン・ジェホ|Jae Ho Jung(1971)

韓国美術家賞2018審査員
バルトロメウ・マリ(韓国国立現代美術館)
スザンヌ・コッター(ルクセンブルク・ジャン大公現代美術館[MUDAM])
ワン・チュンチェン[王春辰](中央美術学院美術館)
キム・ソンウォン (国立アジア文化殿堂)
クアウテモック・メディナ(メキシコ自治大学付属現代美術館チーフキュレーター、上海ビエンナーレ2018チーフキュレーター)

 


Minja Gu, Installation view of Island of the Day Before, Island of the Day After (2018) 4 channel video, color, sounds, Video documentation of a two-day performance, edited according to museum opening hours


Okin Collective, Installation view


Jae Ho Jung Nodeul Town Center (2018) acrylic on Korean paper, 210 x 630cm

 

歴代受賞者および最終候補
2018|サイレン・ウニョン・チョン、ク・ミンジャ、オキン・コレクティヴ、チョン・ジェホ
2017|ソン・サンヒ、パク・ギョングン、ペク・ヒョンジン、サニー・キム
2016|mixrice、キム・ウル、バク・スンウ、ハム・ギョンア
2015|オー・インファン、キム・キラ、ナ・ヒュン、ハ・テボム
2014|ノ・スンテク、ク・ドンヒ、キム・シニル、チャン・ジア
2013|コン・ソンフン、シン・ミギョン、チョ・へジョン、ハム・ヤンア
2012|ムン・キョンウォン&チョン・ジュンホ、ギム・ホンソック、イ・スギョン、イム・ミヌク

 

画像提供:韓国国立現代美術館

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