ヤン・ジョンウク 画像提供：韓国国立現代美術館
2025年2月13日、韓国国立現代美術館（MMCA）は、韓国有数の現代美術賞「韓国美術家賞（今年の作家賞）」を、ヤン・ジョンウクに授賞すると発表した。発表に先立つ2月11日には、最終候補に残ったクォン・ハヨン、ヤン・ジョンウク、ユン・ジヨン、ジェーン・ジン・カイゼンと審査員による公開討議が、会期中に来場者が残した質問や会場からの質問を受け付ける形で開催された（その模様は後日、MMCAの公式YouTubeチャンネルで公開予定）。最終候補4名の作品による展覧会「韓国美術家賞2024」は3月23日まで韓国国立現代美術館 ソウル館で開催中。
ヤン・ジョンウク（1982年ソウル生まれ）は、マンションの警備員や事務員、一家の主人のような平凡な人々の日常を観察し、創作した物語をキネティックな彫刻を通じて具現化する。ヤンは反復的な行為を通じてのみ物事の理解に至ることのできるような人生の姿を想像し、統計上の可能性ではなく、時に希望あるいは苦難を抱えながら何かに打ち込みつづける人々を物語の対象として描いてきた。木材、糸、電球などで構成されたキネティックな彫刻が作り出すアナログな動きが、鑑賞者の想像力を刺激し、隣人の日常の物語を伝える。近年は「A Child Embraces a Child」（蔚山美術館、2024）、「Without Any Words」（Gallery SoSo、ソウル、2022）、「Maybe, It’s like that」（OCI美術館、ソウル、2021）、「Scenery of dialogue」（富川アートバンカーB39、2020）で個展を開催。「My Your Memory」（韓国国立現代美術館、ソウル、2022）、第6回昌原彫刻ビエンナーレ（2022）、「Rhythmanalysis」（オタワ・アートギャラリー、2020）などに出品。2015年には国立新美術館の「アーティスト・ファイル 2015 隣の部屋――日本と韓国の作家たち」にも出品している。
ヤン・ジョンウク《Someone I Know, in His Garden I’ve Never Seen》2024年 Photo: ART iT
ヤン・ジョンウク《Only the Turtle Does Not Know Our Weekends》2024年 Photo: ART iT
「韓国美術家賞2024」の展示では、大規模な新作《Someone I Know, in His Garden I’ve Never Seen》（2024）や《A Cherishing Heart》（2024）から、「技術は誠意から生まれる」というヤンの方法論を具現化した《Temporary Map》（2024）や《Ardent Record》（2024）まで、ヤンの人間味あふれる幅広い視野を通じて、日常生活におけるさまざまな困難を乗り越えようとする人々の身振りに込められた人生の意味を伝える、大小さまざまなキネティックな彫刻で展示空間を埋め尽くした。審査委員会は、ヤンの展示の視覚的な芸術性の高さ、テクノロジーを人間的な視線から解釈し直したアプローチの斬新さ、たくさんの人々と壮大な言説ではなく日常的な経験を通して共鳴する作品としての豊かな可能性を高く評価した。韓国国立現代美術館ディレクターのキム・ソンヒは、ヤンの展示について「素朴な日常の姿を美しい夢のような情景と結びつけることで、極めて人間的な世界を描き出した」と述べるとともに、最終候補として展覧会に参加し、韓国現代美術が有する優れた素質を証明した4名のアーティストすべてに改めて感謝の意を表した。
韓国美術家賞は、前身の「Artist of the Year」（1995-2010）を引き継ぐ形で、韓国現代美術に貢献し新しいヴィジョンや可能性を探求するアーティストの支援を目的に、韓国国立現代美術館とSBS財団が2012年に設立。2022年に過去10年間を回顧する展覧会を開催するとともに、韓国国籍保持者に限られていた対象を朝鮮半島にルーツを持つアーティストであれば国籍を問わない規定に変更、最終審査の過程に公開討議を設けるなど、諸規定を再検討し昨年度より再開している。本年度の最終審査は、キム・ソンヒ（韓国国立現代美術館ディレクター）、キム・ソンウン（ソウル市立北ソウル美術館スーパーバイザー）、キム・ヘジュ（シンガポール美術館シニアキュレーター）、シャルル・ランドフルーフト（アムステルダム市立美術館 リサーチ＆キュラトリアル・プラクティス部門長）、コスミン・コスティナス（世界文化の家（HKW）シニアキュレーター）、ルバ・カトリーブ（MoMA PS1 キュラトリアル・アフェアーズ キュレーター兼ディレクター）が務めた。
韓国美術家賞：https://koreaartistprize.org/
韓国美術家賞2024
2024年10月25日（金）- 2025年3月23日（日）
韓国国立現代美術館 ソウル館
http://www.mmca.go.kr/
参加アーティスト：クォン・ハヨン、ヤン・ジョンウク、ユン・ジヨン、ジェーン・ジン・カイゼン
キュレーター：イ・ジュヨン
過去5年の受賞者および最終候補（太字はグランプリ）
2023｜クォン・ビョンジュン、ガラ・ポラス・キム、イ・カンスン、チョン・ソジョン
2022｜「韓国美術家賞」回顧展のため実施せず
2021｜チェ・チャンスク、キム・サンジン、バン・ジョンア、オ・ミン
2020｜イ・スルギ、キム・ミネ、チョン・ユンソク、チョン・ヒスン
2019｜イ・ジュヨ、キム・アヨン、ホン・ヨンイン、パク・ヘス