アートウィーク東京、展覧会やシンポジウムなど本年度のプログラムのハイライトを発表


AWT会期中に7つのルートで50以上のアートスペースをつなぐシャトルバス「AWT BUS」Photo: Art Week Tokyo

 

2023年8月29日、11月の開幕まで約2カ月となったアートウィーク東京(AWT)が、7つのルートで運行されるシャトルバス「AWT BUS」、大倉集古館を舞台に開かれる展覧会「AWT FOCUS」、国内外のキュレーターを招聘した「AWT TALKS」、AWT参加ギャラリーの所属アーティストの映像作品を紹介する上映プログラム「AWT VIDEO」など、本年度のプログラムのハイライトを発表した。

本年度の新企画は、ゲストキュレーターが美術史的観点から選定した作品を通じて、日本近現代美術のキーワードを再考するとともに、すべての出品作品がAWT参加ギャラリーを介して購入できる「買える」展覧会ことAWT FOCUS。本企画最初のアーティスティックディレクターを務める保坂健二朗(滋賀県立美術館ディレクター)は、「平衡世界 日本のアート、戦後から今日まで」を展覧会タイトルに、物質と非物質、アートとデザイン、自然と人工といった、一見相反する概念の間にバランス(平衡)を求める建設的な緊張関係が、戦後から現代までの日本において新しい表現の誕生を促してきたことを、64名のアーティストによる100点を超える作品を通して明らかにしようと試みる。会期中には、保坂とNPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT]代表の塩見有子が企画・監修し、子どもや若者、アートコレクターやこれからコレクターを目指す人を対象としたガイドツアーをはじめ、現代美術をより身近に感じるための多彩な関連プログラムを実施。なお、大倉集古館内には専門のスタッフが配属された託児所も特設される。(チケット購入や託児サービスなどの詳細は順次AWT FOCUSに掲載)

北⻄スイス応用科学芸術大学附属バーゼル美術インスティテュートのディレクター、チュス・マルティネスをゲストキュレーターに迎える映像上映プログラムAWT VIDEOは、昨年に続き三井住友銀行東館で開催。日本における女性解放運動の先駆者、平塚らいてうの自伝からインスピレーションを得て、「元始、女性は太陽であった」をタイトルに掲げるプログラムでは「ジェンダー」と「自然」をテーマに、岡田裕子地主麻衣子高田冬彦クゥワイ・サムナンマイヤ・タンミシャルロット・デュマら、14名のアーティストの作品を紹介する。

 


杉本博司《Opticks 016》2018年 © Hiroshi Sugimoto, courtesy of Gallery Koyanagi.


田中敦子《作品(題名不詳)》1972年 Courtesy Kotaro Nukaga.

 

また本年度は、シンポジウム、ラウンドテーブル、オンライントークシリーズからなるAWT TALKSも規模を拡大。11月2日には、慶應義塾大学三田キャンパス⻄校舎ホールで「エキシビション・エクリチュール:展覧会はいかに語り得るか」と題したシンポジウムを開催する。登壇者は、2017年のドクメンタ14のアーティスティックディレクターであり、現在はアムステルダム市立美術館のキュレーター・アット・ラージを務めるアダム・シムジック、上述したチュス・マルティネス、保坂健二朗、そして、来年3月に開催される第8回横浜トリエンナーレのアーティスティックディレクターを務めるキャロル・インホワ・ルーの4名。各自の「展覧会制作」の状況を共有し、これからの新たな実践に向けた戦略の提案を目指す。モデレーターは、AWTエディトリアルディレクターのアンドリュー・マークルが務める(申込受付など詳細は下部に掲載)。

また同日午後には、キュレーターや評論家などを対象にしたラウンドテーブル「なぜ、アートなのか?」を同じく慶應義塾大学三田キャンパスの旧ノグチ・ルームで開催する。登壇者は、山口情報芸術センター[YCAM]キュレーターのレオナルド・バルトロメウス、シドニーのアートスペースのエグゼクティブディレクター、アレクシー・グラス・カントワー、ロンドンのヘイワードギャラリーのキュレーター、ユン・マ、サンパウロ美術館[MASP]キュレーターのイザベラ・フジェイリの4名。さまざまな国や地域を拠点に活動するキュレーターが一堂に会し、今日のアートを巡る喫緊の課題について、「なぜ、アートなのか」に対して意見交換を行なう。モデレーターは、横浜美術館/横浜トリエンナーレ組織委員会事務局の帆足亜紀が務める。(申込受付など詳細は下部に掲載)。

 


左:アダム・シムジック © Melanie Hofmann, Zürich. 右:チュス・マルティネス Photo by Nici Jost.


左:保坂健二朗 Photo by Keizo Kioku. 右:キャロル・インホワ・ルー(盧迎華)Photo by Ohno Ryusuke.

 

そして2021年から続くオンライントークシリーズは、アジア・ソサエティ美術館館⻑の中森康文による「写真家・美術家は何をみたか:日本の写真における実験 1968‒1979」(9月29日配信予定)、東京オペラシティ アートギャラリーで個展を開催する写真家、石川真生のレクチャー「沖縄から撮りつづけること―石川真生の写真」(10月12日配信予定)、美術史家で筑波大学名誉教授の五十殿利治とAWTエディトリアルディレクターのアンドリュー・マークルによるレクチャー「ナショナル/インターナショナル/トランスナショナル:戦間期の日本におけるアートと社会の関わり」(10月27日配信予定)の3本を新たに配信する。同シリーズは過去のトークもAWT公式ウェブサイトより視聴可能(AWTオンライントーク)。

そのほか、AWTの特徴のひとつ、都内に広がる美術館やギャラリー、AWTの各プログラム会場を繋ぐAWT BUSは、昨年の6ルートから1ルート増えた全7ルートで運行。また、南青山にAWT期間に開設される交流の場AWT BARは、建築家の山田紗子が設計を手がけ、会期中は、ミシュランひとつ星のフレンチレストラン「Sincere」のオーナーシェフ、石井真介が手がけたスペシャルメニューを提供するほか、昨年に引き続き、アーティストとのコラボレーションによるオリジナルカクテル(参加アーティスト:大巻伸嗣、小林正人、三宅砂織)も提供する。

 


© suzuko yamada architects.


AWT BUSの全7ルート

 

アートウィーク東京
2023年11月2日(木)-11月5日(日)10:00–18:00
https://www.artweektokyo.com/
会場:都内50の美術館、インスティテューション、ギャラリー、大倉集古館(AWT FOCUS)、AWT BARほか、各プログラム
主催:一般社団法人コンテンポラリーアートプラットフォーム
提携:アートバーゼル
特別協力:文化庁
※VIPプレビューは10月31日(火)、11月1日(水)の2日間を予定
※会場やプログラムにより時間が異なる場合あり

アートウィーク東京モビールプロジェクト
2023年11月2日(木)-11月5日(日)10:00–18:00
主催:東京都、アートウィーク東京モビールプロジェクト実行委員会

 


大倉集古館

 

AWT FOCUS「平衡世界 日本のアート、戦後から今日まで」
2023年11月2日(木)-11月5日(日)
大倉集古館(東京都港区虎ノ門2-10-3)
開場時間:10:00–18:00(入場は閉場30分前まで)
https://www.artweektokyo.com/focus/

AWT TALKS シンポジウム「エキシビション・エクリチュール:展覧会はいかに語り得るか」
2023年11月2日(木)10:00-12:30
登壇者:アダム・シムジック(アムステルダム市立美術館 キュレーター・アット・ラージ、AWT VIDEO 2022年 ゲストキュレーター、ドクメンタ14アーティスティック・ディレクター)
チュス・マルティネス(AWT VIDEO 2023年 ゲストキュレーター、北⻄スイス応用科学芸術大学附属バーゼル美術インスティテュート ディレクター)
保坂健二郎(AWT FOCUS 2023年 アーティスティックディレクター、滋賀県立美術館 ディレクター)
キャロル・インホワ・ルー(美術史家、キュレーター、北京インサイドアウト美術館 ディレクター、第8回横浜トリエンナーレ アーティスティックディレクター)
モデレーター:アンドリュー・マークル(AWTエディトリアルディレクター)
会場:慶應義塾大学 三田キャンパス ⻄校舎ホール
定員:800名(事前申込・先着順・参加無料)
言語:英日同時通訳
申込方法:8月29日(火)より受付開始。詳細は下記URLを参照。
https://www.artweektokyo.com/awt-talks/symposium/

AWT TALKS ラウンドテーブル「なぜ、アートなのか?」
2023年11月2日(木)14:00-17:00
登壇者:レオナルド・バルトロメウス(山口情報芸術センター[YCAM]キュレーター)
アレクシー・グラス・カントワー(アートスペース(シドニー)エグゼクティブディレクター)
ユン・マ(ヘイワードギャラリー キュレーター)
イザベラ・フジェイリ(サンパウロ美術館[MASP]キュレーター)
モデレーター:帆足亜紀(横浜美術館国際グループ兼学芸グループ グループ長、横浜トリエンナーレ組織委員会 総合ディレクター補佐)
会場:慶應義塾大学 三田キャンパス 旧ノグチ・ルーム
定員:50名(事前申込・参加無料)
言語:英語
対象:キュレーターや評論家およびそれに準ずる職種の方
申込方法:8月29日(火)より受付開始。詳細は下記URLを参照。
https://www.artweektokyo.com/awt-talks/roundtable/

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