アートウィーク東京が11月2日に開幕


大倉集古館 Photo: ART iT

 

2023年11月2日から11月5日の4日間にわたり、東京における現代美術の創造性と多様性を国内外に発信するアートイベント「アートウィーク東京」が開催される。本年度は、新企画となる大倉集古館を舞台に開かれる展覧会「AWT FOCUS」や、恒例となった都内50の美術館・ギャラリーを繋ぎ7つのルートを巡回するシャトルバス「AWT BUS」をはじめとする多彩なプログラムを通じて、東京のアートのエコシステムの活性化を目指す。

新企画の「AWT FOCUS」は、ゲストキュレーターを迎えて、近現代の美術における既存の言説を再考する試みであると同時に、出展ギャラリーを介して作品を購入できる、新しい形のセールス・プラットフォーム。同企画最初のキュレーターを務める滋賀県立美術館ディレクターの保坂健二朗は、「平衡世界」と題した本展を企画する上で、「戦後の日本のアートを、ジャンル間の縄張り意識が根強い日本の美術館では決して容易ではないボーダーレスなアプローチを見せることにより、美術館の常設(コレクション展示)の在り方に問題提起を行うこと」、「単なる展覧会ともアートフェアとも異なる、これまでになかったセールス・プラットフォームを実験的につくってみることを通じて、オルタナティヴなキュレーションの可能性を、あるいは、現在の世界におけるキュレーターの存在意義を提示すること」を目的に掲げる。

展覧会は、黒田辰秋の三面鏡と倉俣史朗のキャビネット、小林正人の絵画を並置した「物質と非物質」をテーマとする第1章を皮切りに、美術と工芸、物質と非物質、自然と人工など対立するものの間に生じる創造性に満ちた拮抗が、新たな表現の出現を促してきたという仮説の下、12の章を通じて64名のアーティストによる100点以上に及ぶ作品を紹介する。会場となる大倉集古館は、関東大震災後に建築家の伊東忠太が設計を手がけ、2019年にホテルオークラ東京がThe Okura Tokyoにリニューアルするのに合わせて、建築家の谷口吉生の設計でリニューアルされた。本展では建築家の山田紗子が会場デザインを担当。会期中には、ガイドツアーなど現代美術をより身近に感じるための多彩な関連プログラムを実施する。(チケット購入や託児サービスなどの詳細は公式ウェブサイトを参照。)

 


左から:保坂健二朗(AWT FOCUSアーティスティックディレクター)、蜷川敦子(アートウィーク東京ディレクター)、ヴィンチェンツォ・デ・ベリス(アートバーゼル フェア・展示プラットフォームディレクター)


左から:倉俣史朗《Cabinet de Curiosité》1989年、黒田辰秋《朱沃地三面鏡》1980年、小林正人《レモン》2019年「AWT FOCUS:平衡世界 日本のアート、戦後から今日まで」大倉集古館、東京、2023年


「平衡世界 日本のアート、戦後から今日まで」大倉集古館、東京、2023年

 

都内50の美術館・ギャラリーのプログラムのほか、三井住友銀行東館では、日本における女性解放運動の先駆者、平塚らいてうの言葉「元始、女性は太陽であった」をタイトルとした映像上映プログラム「AWT VIDEO」を開催。昨年のアダム・シムジックに続き、本年度もゲストキュレーターとして、北⻄スイス応用科学芸術大学附属バーゼル美術インスティテュートのディレクター、チュス・マルティネスを迎え、「ジェンダー」と「自然」をテーマにしたプログラムを上映する。また、「AWT TALKS」の一環として、保坂とマルティネス、シムジックに加え、来年の横浜トリエンナーレのアーティスティックディレクターを務めるキャロル・インホワ・ルーがシンポジウムに登壇し、「エキシビション・エクリチュール:展覧会はいかに語り得るか」をテーマに、これからの新たな実践に向けた戦略を提案する。そのほか、南青山にAWT期間に開設される交流の場「AWT BAR」は、AWT FOCUSと同じく山田紗子が会場デザインを手がけ、ミシュランひとつ星のフレンチレストラン「Sincere」のオーナーシェフ、石井真介が手がけたスペシャルメニューを提供。昨年に引き続き、アーティストとのコラボレーションによるオリジナルカクテル(参加アーティスト:大巻伸嗣、小林正人、三宅砂織)も提供する。

 

アートウィーク東京
2023年11月2日(木)-11月5日(日)10:00–18:00
https://www.artweektokyo.com/
会場:都内50の美術館、インスティテューション、ギャラリー、大倉集古館(AWT FOCUS)、AWT BARほか、各プログラム
主催:一般社団法人コンテンポラリーアートプラットフォーム
提携:アートバーゼル
特別協力:文化庁
※VIPプレビューは10月31日(火)、11月1日(水)の2日間を予定
※会場やプログラムにより時間が異なる場合あり

アートウィーク東京モビールプロジェクト
2023年11月2日(木)-11月5日(日)10:00–18:00
主催:東京都、アートウィーク東京モビールプロジェクト実行委員会

 


O JUN《ナイトスイミング》2019年「AWT FOCUS:平衡世界 日本のアート、戦後から今日まで」大倉集古館、東京、2023年


「AWT FOCUS:平衡世界 日本のアート、戦後から今日まで」大倉集古館、東京、2023年

 

AWT FOCUS「平衡世界 日本のアート、戦後から今日まで」
2023年11月2日(木)-11月5日(日)
大倉集古館(東京都港区虎ノ門2-10-3)
開場時間:10:00–18:00(入場は閉場30分前まで)
https://www.artweektokyo.com/focus/

AWT TALKS シンポジウム「エキシビション・エクリチュール:展覧会はいかに語り得るか」
2023年11月2日(木)10:00-12:30
登壇者:アダム・シムジック(アムステルダム市立美術館 キュレーター・アット・ラージ、AWT VIDEO 2022年 ゲストキュレーター、ドクメンタ14アーティスティック・ディレクター)
チュス・マルティネス(AWT VIDEO 2023年 ゲストキュレーター、北⻄スイス応用科学芸術大学附属バーゼル美術インスティテュート ディレクター)
保坂健二郎(AWT FOCUS 2023年 アーティスティックディレクター、滋賀県立美術館 ディレクター)
キャロル・インホワ・ルー(美術史家、キュレーター、北京インサイドアウト美術館 ディレクター、第8回横浜トリエンナーレ アーティスティックディレクター)
モデレーター:アンドリュー・マークル(AWTエディトリアルディレクター)
会場:慶應義塾大学 三田キャンパス ⻄校舎ホール
定員:800名(事前申込・先着順・参加無料)
言語:英日同時通訳
申込方法:Peatixにて事前申込制。当日受付可。詳細は下記URLを参照。
https://www.artweektokyo.com/awt-talks/symposium/

AWT TALKS ラウンドテーブル「なぜ、アートなのか?」
2023年11月2日(木)14:00-17:00
登壇者:レオナルド・バルトロメウス(山口情報芸術センター[YCAM]キュレーター)
アレクシー・グラス・カントワー(アートスペース(シドニー)エグゼクティブディレクター)
ユン・マ(ヘイワードギャラリー キュレーター)
イザベラ・フジェイリ(サンパウロ美術館[MASP]キュレーター)
モデレーター:帆足亜紀(横浜美術館国際グループ兼学芸グループ グループ長、横浜トリエンナーレ組織委員会 総合ディレクター補佐)
会場:慶應義塾大学 三田キャンパス 旧ノグチ・ルーム
定員:50名(事前申込・参加無料)※定員に達したため募集締め切り
言語:英語
対象:キュレーターや評論家およびそれに準ずる職種の方
https://www.artweektokyo.com/awt-talks/roundtable/

 


左から:芥川(間所)紗織《無題》1962年頃、芥川(間所)紗織《人(C)》1955年、桂ゆき《あじさい》制作年不明、桂ゆき《旅行》1936/1978年「AWT FOCUS:平衡世界 日本のアート、戦後から今日まで」大倉集古館、東京、2023年


「AWT FOCUS:平衡世界 日本のアート、戦後から今日まで」大倉集古館、東京、2023年

Copyrighted Image