第8回横浜トリエンナーレ、テーマ発表


第8回横浜トリエンナーレ ロゴビジュアル 提供:横浜トリエンナーレ組織委員会

 

2023年6月28日、横浜トリエンナーレ組織委員会は、来年3月に開幕を控える第8回横浜トリエンナーレのテーマを「野草:いま、ここで⽣きてる」に決定するとともに、旧第一銀行横浜支店とBankART KAIKOのふたつの歴史的建造物を新たに会場に使用すると発表した。

北京を拠点に活動するアーティスティック・ディレクターのリウ・ディン[劉⿍]とキャロル・インホワ・ルー[盧迎華]は、中国の小説家、魯迅の世界観と⼈⽣に対する哲学に共感し、詩集『野草』(1927)から第8回展のテーマ「野草:いま、ここで⽣きてる」を構想した。約100年前、時代の波に翻弄された魯迅は、絶望の中に⼩さな希望を⾒出す⾃らの⽣き⽅を、もろくて無防備で、しかし同時にたくましく⽣き延びる⼒を持つ野の草にたとえた。2019年に始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急速な世界的広がりが露わにしたグローバル化がもたらした両⽴不能な⽭盾、現代社会でわたしたちが直面する課題の数々に対し、ふたりは「野草」の⼈⽣哲学を、個⼈の⽣命の抑えがたい⼒が、あらゆるシステム、規則、規制、⽀配や権⼒を超えて、尊厳ある存在へと⾼められるもの、⾃由で主体的な意思をもった表現のモデルとして提唱する。

展覧会は、20世紀初頭にさかのぼり、1930年代初頭に共鳴し合った日本と中国の⽊版画運動、戦後、東アジア地域が⽂化的な復興を遂げるなかで⽣まれた作家たちの想像力、1960年代後半に広がった政治運動とそれを経て行なわれた近代への省察、1980年代に本格化したポストモダニズムにあらわれる批評精神と⾃由を希求するエネルギーなどに注目しながら、歴史の終焉が提唱された後に⽣まれたアナーキズムの実践や思想を糧に、個⼈と既存のルールや制度との対話の可能性を探るものとなる。(テーマとコンセプトの全文は公式ウェブサイトを参照。)

新たに会場として使用することが発表されたのは、「旧第⼀銀⾏横浜⽀店」(1929年竣⼯)と「旧横浜⽣⽷検査所附属⽣⽷絹物専⽤B号倉庫及びC号倉庫」(1926年竣⼯)を活⽤した⽂化・商業施設「KITANAKA BRICK & WHITE」内に⽴地するオルタナティヴスペース「BankART KAIKO」。魯迅の『野草』と同時代に建てられた2棟の歴史的建造物と、東⻄冷戦終結の年に開館した横浜美術館を舞台に、広く今⽇の問題へとつながる道を探っていく。そのほか、第8回横浜トリエンナーレでは、横浜駅から元町・中華街、⼭⼿地区にある諸施設と連携し、無料で楽しめる多彩なプログラムを予定している。

 

第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで⽣きてる」
2024年3月15日(金)-6月9日(日)
https://www.yokohamatriennale.jp/
会場:横浜美術館、旧第⼀銀⾏横浜⽀店、BankART KAIKO
アーティスティック・ディレクター:リウ・ディン[劉⿍]、キャロル・インホワ・ルー[盧迎華]

 


旧第⼀銀⾏横浜⽀店


BankART KAIKO 撮影:⼤野隆介

Copyrighted Image