ヨコハマトリエンナーレ2023のアーティスティック・ディレクターが決定


左:キャロル・インホワ・ルー 右:リウ・ディン

 

2022年6月30日、横浜トリエンナーレ組織委員会は、「ヨコハマトリエンナーレ2023」のアーティスティック・ディレクターに、北京を拠点に活動するアーティスト兼キュレーターのリウ・ディンと同じく北京を拠点に活動するキュレーターのキャロル・インホワ・ルーの二人組が就任することを発表した。2001年以来8度目の開催となる「ヨコハマトリエンナーレ2023」は、大規模改修工事を経てリニューアルオープンする横浜美術館と前回も使用されたプロット48を会場に、初の冬季開催となる。

リウ・ディン[刘鼎](1976年江蘇省常州市生まれ)は、中国の近現代史における文化、芸術、政治の影響関係に関するリサーチをもとに、さまざまなメディアを駆使した制作活動を展開している。主な個展に『Reef: A prequel』(ボンネファンテン、マーストリヒト、2015)、主な国際展出品に釜山ビエンナーレ2018、第14回イスタンブール・ビエンナーレ(2015)、第53回ヴェネツィア・ビエンナーレ中国館(2009)がある。2015年には広島市現代美術館の『ふぞろいなハーモニー(Discordant Harmony)』(アート・ソンジェ・センター、ソウル、2015/国立台北芸術大学關渡美術館、台北、2016)に参加。制作活動のほか、執筆活動や展覧会企画も行なう。

キャロル・インホワ・ルー[盧迎華](1977年広東省潮州市生まれ)は、美術史家兼キュレーターで、現在は北京インサイドアウト美術館ディレクターを務める。これまでに光州ビエンナーレ2012のコ・アーティス ティック・ディレクター、OCAT(深圳)のアーティスティック・ディレクター兼チーフ・キュレーター(2012–2015)を歴任し、第54回ヴェネツィア・ビエンナーレ金獅子賞(2011)、ヒューゴ・ボス・アジア(2019)、Tokyo Contemporary Art Award(2019–2022)の審査員、テート・リサーチ・センターの初のアジア太平洋フェローシップ・プログラム客員研究員(2013)などを務めている。そのほか、美術史研究機関ARIAHの東アジア・フェローシップの初の授与者のひとりでもある。

リウ・ディンとキャロル・インホワ・ルーは、2007年より北京を拠点に共同でキュレーションを開始。中国コンテンポラリーアートの作品や文献に残る社会主義リアリズムの研究にも取り組んでいる。近年の主な展覧会企画に『Notes: Chinese Artistic and Intellectual Voices from the End of the Twentieth Century』(北京、2022)、トランス東南アジア・トリエンナーレ「Sounds as Silence: The Academic Value of Life」(広州、2021)、安仁ビエンナーレ「Crossroads」(安仁、2017)、深圳彫刻ビエンナーレ 「Accidental Message: Art Is Not A System, Not A World」(OCAT、深圳、2015)、『Little Movements: Self-practice in Contemporary Art』(第1回:OCAT、深圳、2011/第2回:ムセイオン、ボルツァーノ、 2013/第3回:国立アジア文化殿堂、光州、2015)がある。

 


横浜美術館 撮影:笠木靖之

 

前回のラクス・メディア・コレクティヴに続き、海外からの選出となったアーティスティック・ディレクターの選考にあたり、選考委員会の委員長を務めた浅田彰(京都芸術大学 教授、ICA京都 所長)は、リウ・ディンとキャロル・インホワ・ルーの提案を「世界各地のアート・フェスティヴァルでよく見る流行のテーマを並べるのではなく、日本でも馴染み深い魯迅の『野草』という散文詩集から出発して深く広く想像力を巡らそうとするもので、アジアに開かれた都市・横浜でのアート・フェスティヴァルにふさわしいもの」と認め、この二人組が「すでに日本を含む世界各地での制作・展示やアート・フェスティヴァルの組織などの経験を重ねて、状況に柔軟に対応しながら企画を実現していく能力を備えており、ポストコロナ時代に入って対面形式を含むコミュニケーションの可能性が広がっていけば、詩的なテーマを具体化して興味深いトリエンナーレを実現することができる」と選考理由を述べた。浅田のほか、選考委員は、蔵屋美香(横浜トリエンナーレ組織委員会 総合ディレクター、横浜美術館 館長)、鷲田めるろ(十和田市現代美術館 館長)、そして、初の海外からの選考委員となったビゲ・オール(イスタンブール・ビエンナーレ ディレクター)、イザベル・ベルトロッティ(リヨン現代美術館 館長、リヨン・ビエンナーレ ディレクター)が務めた。

なお、総合ディレクターの蔵屋美香は、2023年12月の開幕に向けて、横浜という「みなと」で「市民に開放された巨大な祝祭」というコンセプトを掲げて始まったトリエンナーレにおける「みなと」と「祝祭」の意味を、「人と人との豊かな出会いをもたらすと同時に、異質なものとの衝突をはらむ「みなと」。共感の輪を広げる可能性と、集団的な熱狂のあやうさをあわせ持つ「祝祭」」と捉えなおし、新たな「みなとの祝祭」を世界に届けるべく、アートを通じた世界との対話を続けていくと抱負を語った。

 

ヨコハマトリエンナーレ2023
2023年12月9日(土)- 2024年3月10日(日)
横浜美術館、プロット48
アーティスティック・ディレクター:リウ・ディン、キャロル・インホワ・ルー

 


プロット48 撮影:加藤 甫

Copyrighted Image