遠藤麻衣《いつでもルナティック、あるいは狂気の家族廃絶》2024年
αMプロジェクト2023‒2024
開発の再開発 vol.8 Multiple Spirits|いつでもルナティック、あるいは狂気の家族廃絶
2024年11月30日(土)-2025年2月8日(土)
gallery αM
http://gallery-alpham.com/
開廊時間:12:30–19:00
休廊日:日、月、祝休、冬季休廊(12/22-1/6)
ゲストキュレーター:石川卓磨(美術家・美術批評)
展覧会URL:https://gallery-alpham.com/exhibition/project_2023-2024/vol8/
gallery αMでは、美術家・美術批評家の石川卓磨をゲストキュレーターに迎えたαMプロジェクト2023‒2024「開発の再開発」の最終回となる8番目の展覧会として、アーティスト・俳優の遠藤麻衣とキュレーター・批評家の丸山美佳によるコレクティブ、Multiple Spirits(マルスピ)の「いつでもルナティック、あるいは狂気の家族廃絶」を開催する。
『Multiple Spirits』は、遠藤麻衣(1984年兵庫県生まれ)と丸山美佳(長野県生まれ)が、2018年に日英バイリンガルで創刊した日本発のクィア・フェミニズム系アートジン。ファンジンやウェブ記事の発行に留まらず、コレクティブとして、研究調査、展覧会、コラボレーション制作、トークイベント、翻訳など多岐に渡るプロジェクトを展開している。セクシュアリティ、ジェンダー、人種、階級といった重なりあう差別の解体を視野に入れ、さまざまな角度から芸術活動の研究と紹介をしてきた。また、東アジアにおける芸術運動やクィア・フェミニズム運動と雑誌メディアといった大衆メディアやアーカイブの関係性の調査を行ない、2020年にオーストリア女性アーティスト協会(VBKÖ)の招聘により、歴史的研究資料や雑誌と現代美術で構成した展覧会「When It Waxes and Wanes」を企画、開催した。
「When It Waxes and Wanes」展示風景、2019年 撮影:Claudia Sandoval Romero
本展は、家族廃絶やアナーカ・フェミニズムの言説、視覚表現、実践について、雑誌メディアに着目した調査から構想された。タイトルにも採用されている「家族廃絶」について、マルスピは本展に寄せた文章で、「「家族」という概念と表裏一体である近代の資本主義や新自由義、異性愛中心主義、植民地主義・帝国主義を受肉した社会や構造への批判とその廃絶」を示していると説明。
ゲストキュレーターの石川卓磨は寄稿した「開発を破壊する開発」で、「家族という共同体の連帯は、愛、ケア、アイデンティティの基礎として、社会の中で最も重要な生活単位と考えられている」としながらも、「その一方で、家族は、ドメスティックな暴力、家父長制、無償労働、性的役割、排他的な共同体の源泉になっている」と、「家族が抱える抑圧的な構造の存在」に言及。「家族廃絶というラディカルな概念を検討するためには、ドメスティックな家族の問題に留まらず、封建的な社会システム、資本主義、近代化、天皇制、植民地主義、人間中心主義に対する批判的検討が不可欠である。したがって、マルスピの批判の射程は広範囲に及ぶ」と評し、新しい共同体のかたちをあえて雑技団と名付けることは、「一つの抵抗であり、創造的実践となる」と綴っている。
『Multiple Spirits(マルスピ)』左からvol. 1、vol. 2、vol. 3
ジンや雑誌が複数の筆者による寄稿で構成されるように、本展ではマルスピのほかに、〇九一四、エイミー・スオー・ウー(吴索)、遠藤麻衣×百瀬文、デュー・キム、KDM–権力の女王、ラジオグーグーなど、国内外から複数のアーティストが参加する。マルスピは、少女マンガのコードの過剰さと1960〜70年代のアングラ文化的表象に対する茶化し、そして「家族」ではなく「雑技団」の枠組みを通して、ジェンダー、階級、病理化されてきた女性のヒステリー、「家族」が抱える複数の厄介さを扱う少女ギャグマンガ『ルナティック雑技団』の美学に着想を得て、規範の揺るがしや逸脱という視点から、日常生活と地続きにある言葉や表現、現代の芸術とアクティビズムを緩やかに横断する実践を本展で紹介する。また、女性運動に関わる雑誌や資料を、植民地主義・帝国主義と不可分な近代化社会における解放運動として再文脈化することを目指す。
なお、本展に合わせて『Multiple Spirits vol.4 いつでもルナティック』が発行予定。
関連イベント
アーティストトーク
2024年11月30日(土)18:30–
出演:Multiple Spirits、石川卓磨(美術家・美術批評)
会場:gallery αM
αMプロジェクト2023‒2024 開発の再開発(ゲストキュレーター:石川卓磨)
vol.1|平山昌尚
2023年5月20日(土)-7月15日(土)
vol.2|近藤恵介
2023年7月29日(土)-10月14日(土)※夏季休廊:8/13-8/28
vol.3|Sabbatical Company
2023年10月28日(土)-12月23日(土)
vol.4|松平莉奈
2024年1月20日(土)-3日16日(土)
vol.5|奥村雄樹
2024年4月13日(土)-6月15日(土)
vol.6|片山真妃
2024年6月29日(土)-9月7日(土)※夏季休廊:8/11-8/26
vol.7|大石一貴
2024年9月21日(土)-11月16日(土)
vol.8|Multiple Spirits
2024年11月30日(土)-2025年2月8日(土)※冬季休廊:12/22-1/6