没後30年 木下佳通代 @ 埼玉県立近代美術館

 

没後30年 木下佳通代
2024年10月12日(土)-2025年1月13日(月・祝)
埼玉県立近代美術館
https://pref.spec.ed.jp/momas/
開館時間:10:00–17:30 入場は閉館30分前まで
休館日:月(ただし10/14、11/4、1/13は開館)、12/27–1/3
展覧会担当:佐藤あゆか(埼玉県立近代美術館学芸員)、鴫原悠(埼玉県立近代美術館学芸員)
展覧会URL:https://pref.spec.ed.jp/momas/2024kinoshita-kazuyo

 

関西を拠点に活動した木下佳通代の全体像を紹介する国内の美術館における初めての個展として、大阪中之島美術館を巡回してきた「没後30年 木下佳通代」が、埼玉県立近代美術館で開催。

木下佳通代(1939-1994/兵庫県生まれ)は、京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)在学中から作家活動を開始。60年代には、神戸で結成された前衛美術集団・グループ〈位〉と行動をともにし、制作を通して「存在」に対する思索を深めていった。70年代から写真作品の制作に着手すると、複数の写真を並置した組作品や、幾何学図形を写した写真の上から線を描き重ねるなどの手法により、視覚と認識、存在と事物の関係性を鮮やかに表現。「存在」や「見ること」について問いかける一連の作品はヨーロッパで高く評価され、81年にはドイツのハイデルベルク・クンストフェラインで個展を開催した。80年代に入ると、油彩へと制作の軸足を移し、問題意識をより発展させた作品制作に取り組んだ。木下がカンヴァス上につくり出す緊張感の漂う空間は、たびたび表情を変えながら独自に進化し、94年に乳がんによって55歳の若さで亡くなるまで、さまざまな作風の作品を通して「存在とは何か」という問いに向き合い続けた。

 


木下佳通代《む 36》1976年 フォトコラージュ、感光紙 大阪中之島美術館蔵
(展示期間:10月12日-12月1日)


木下佳通代《’76-C》1976年 フェルトペン、感光紙 大阪中之島美術館蔵

 

本展では、これまで公開される機会の少なかった初期の油彩画から、1970年代の写真作品、1980年代以降に軸足を置いた絵画作品、そして、亡くなる直前に病床で描かれた絶筆までの約120点の作品を取り上げ、年代毎に足跡を辿り、一貫して「存在とは何か」という問いに向き合い続けた木下の全貌に迫る。

展覧会は3章で構成され、「第1章:1960-1971」では、「存在」に関する関心を掘り下げていった植物をモチーフとする初期の作品や、「境界の思考」や「滲触」(しんしょく)シリーズ等の絵画を中心に展示。「第2章:1972-1981」では、写真作品の制作に着手、ものの存在と視覚の関係性を洗練された表現で提示し、国内外で高く評価された一連の作品を紹介。制作のためのマケットやプランドローイング等の関連資料を交え、写真や映像作品、80年代初頭に試みられたパステルを用いた作品を展覧する。「第3章:1982-1994」では、80年代以降、禁欲的でシステマティックな手法からの解放を模索し絵画制作に回帰した木下が、存在そのものを自分が画面上に作ればいいと考えるに至り、たびたび作風を変化させた後半期の展開を辿る。

関連イベントとして、美術家の植松奎二と同館館長の建畠晢の対談や、大阪中之島美術館学芸員の大下裕司によるレクチャーなどを開催。また、埼玉大学教養学部と同館が共催で開催する公開講座「ミュージアム・カレッジ2024」では、講師にそれぞれの分野の研究者を迎えた専門的なプログラムを予定している。

 


木下佳通代《’91-CA652》1991年 油彩、カンヴァス 京都市美術館蔵


木下佳通代《LA ’92-CA729》1992年 アクリル、カンヴァス 京都国立近代美術館蔵

 

関連イベント
レクチャー「展覧会のための調査から見えてきたもの」
2024年10月19日(土)15:00–16:30
講師:大下裕司(大阪中之島美術館学芸員)
会場:埼玉県立近代美術館 2階講堂
定員:80名(当日先着順)
参加費:無料

対談「絵画から写真、そして絵画へ ―存在からも自由になった木下佳通代」
2024年11月3日(日・祝)15:00–16:30
登壇:植松奎二(美術家)、建畠晢(埼玉県立近代美術館館長)
会場:埼玉県立近代美術館 2階講堂
定員:80名(当日先着順)
参加費:無料

ミュージアム・カレッジ2024「「没後30年 木下佳通代」によせて ―絵画、写真を解きほぐす」
2024年11月30日(土)15:00–16:30
テーマ:クオリアからクオリティへ ―色彩と絵画を哲学する―
講師:高橋克也(埼玉大学大学院人文社会科学研究科教授)

2024年12月7日(土)15:00–16:30
テーマ:木下佳通代 ―その思考と生涯
講師:佐藤あゆか(埼玉県立近代美術館学芸員)

2024年12月14日(土)15:00–16:30
テーマ:コンセプチュアル・アートとしての写真
講師:井口壽乃(埼玉大学名誉教授)

2024年12月21日(土)15:00–16:30
テーマ:抽象の想像力 ―女性アーティストの仕事
講師:中嶋泉(大阪大学大学院人文学研究科准教授)

会場:埼玉県立近代美術館 2階講堂
定員:80名(当日先着順)
参加費:無料

担当学芸員によるギャラリートーク
2024年10月27日(日)15:00–、12月15日(日)11:00– ※手話通訳付き(各回30分程度)
会場:埼玉県立近代美術館 2階企画展示室
※要企画展観覧料

 


木下佳通代《Pa-C ’80-120》1980年 パステル、紙 ギャラリー島田蔵


木下佳通代《無題》1962年 油彩、カンヴァス The Estate of Kazuyo Kinoshita 蔵


木下佳通代《’86-CA358》1986年 油彩、カンヴァス 西宮市大谷記念美術館蔵

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