桃源郷通行許可証 @ 埼玉県立近代美術館


松井智惠《青蓮丸、西へ》(部分)2018年、作家蔵 ©Chie Matsui, Courtesy of MEM

 

桃源郷通行許可証
2022年10月22日(土)– 2023年1月29日(日)
埼玉県立近代美術館
https://pref.spec.ed.jp/momas/
開館時間:10:00–17:30 展示室の入場は閉館30分前まで
休館日:月(11/14、1/9は開館)、12/26-1/3
企画担当:鴫原悠(埼玉県立近代美術館学芸員)、吉岡知子(埼玉県立近代美術館学芸員)、篠原優(埼玉県立近代美術館学芸員)
展覧会URL:https://pref.spec.ed.jp/momas/2022tougenkyo

 

埼玉県立近代美術館では、6名のアーティストの新作・近作を中心に、同館のコレクションなどと組み合わせて、時空を超えた芸術作品の魅力を探る展覧会『桃源郷通行許可証』を開催する。

展覧会タイトルにある「桃源郷」は、中国の詩人・陶淵明が記した物語「桃花源記」に由来する、理想と平和の土地。「桃花源記」には、武陵に暮らすある漁師が舟を漕ぐうちに、林の奥の世俗とは隔絶された穏やかな時間が流れる美しい世界にたどり着く様子が描かれている。展覧会タイトルの「桃源郷通行許可証」は、参加アーティストの松井智惠の出品作品《青蓮丸、西へ》のモチーフによるもので、松井の創作した物語の中では、旅の途中で別れた仲間が再会し、彼らがふたたび「桃源郷」へ行き着くためのアイテムとして登場する。現実の奥深くに、現在の時空間から解放された「桃源郷」があるとすれば、芸術作品は「桃源郷」への扉を開くための「通行許可証」のようなものであるといえるのではないだろうか。本展では、日常や現実のはざまに潜在する事象を繊細に掬い取る6名のアーティストの作品と、埼玉県立近代美術館のコレクションとの遭遇を通じて、日常と非日常の裂け目から目に見えないものを想像したり、別の世界を経験したりする機会を提示する。

 


稲垣美侑《Largo(幅広くゆるやかに)》 2020年、作家蔵


佐野陽一《flow》2015-17 年、作家蔵

 

稲垣美侑(1989年神奈川県生まれ)は、庭や空き地、住居等をモチーフに、土地や風景、個人との相互作用的な関係性によって生起されるイメージを考察し、ペインティングやインスタレーションによって再構築する。近年の展覧会に、個展『息をする』(Gallery Gigi、神奈川、2022)、個展『ぐぜり Subsong』(CLEAR GALLERY TOKYO、東京、2021)、『パラランドスケープ“風景”をめぐる想像力の現在』(三重県立美術館、2019)など。本展では、駒井哲郎の《入口》などと組み合わせた展示を行なう。

佐野陽一(1970年東京都生まれ)は、ピンホール・カメラの原理を援用した手法で、山や湖畔、池、木漏れ日、温室などを被写体に、刻一刻と移ろい揺らぐ光の表情を捉えた写真作品を制作する。近年の展覧会に個展『錐の谺 II』(GALLERY TAGA2、2022)、個展『逍遥』(switch point、2014)、『『刹那』よ『止まれ、お前はいかにも美しいから』』(文京区立森鴎外記念館、2015)など。本展では、斎藤豊作の《フランス風景Ⅱ》などと組み合わせた展示を行なう。

東恩納裕一(1951年東京都生まれ)は、日常的なインテリアや日用品に潜む違和感を、LED や蛍光灯を使ったオブジェ、スプレーペインティング、アニメーションなど様々なメディア、手法を用いて複層的に表現する。近年の展覧会に、個展『Large Interior』(void+、2021)、個展『OAA#2』(KOCA、2020)、二人展『Play Double』(heimlichkeit Nikai、2022)など。本展では、マン・レイの《レイヨグラフ》などと組み合わせた展示を行なう。

 


東恩納裕一「Large Interior」会場風景(void+、2021年)Photo by Masatoshi Mori, Courtesy: void+


文谷有佳里《drawing 2022.6.25》2022年、作家蔵 Photo by ToLoLo studio

 

文谷有佳里(1985年岡山県生まれ)は、ペンや鉛筆、カーボン紙を用いて即興的に様々な種類の線を描出し、紙上に身体的な空間を表出させる。近年の展覧会に、個展『文谷有佳里展』(Art Space & Cafe Barrack、2021)、個展『トランス/リアル―非実体的美術の可能性 vol.6 文谷有佳里』(gallery αM、2016)、『ON―ものと身体、接点から』(清須市はるひ美術館、2022)など。本展では、菅木志雄の《四囲分集》などと組み合わせた展示を行なう。

松井智惠(1960年大阪府生まれ)は、写真、映像、ドローイングなど幅広いメディアを用いて、詩的な物語を喚起させるインスタレーション作品を手がける。SNS(インスタグラム、フェイスブック)に毎晩一枚ずつ、「一枚さん」を公開中。近年の展覧会に、個展『今年の絵の仲間たち』(MEM、2021)、個展『道後オンセナート 2018 ホテルプロジェクト『青蓮丸、西へ』』(湯の宿さち家、2018)、『関西の80年代』(兵庫県立美術館、2022)など。本展では、橋本関雪の《春秋山水》(展示期間|2022/10/22-12/4)などと組み合わせた展示を行なう。

松本陽子(1936年東京都生まれ)は、1967年から翌年にかけて滞在したアメリカでアクリル絵具に出会い、帰国後本格的に制作に着手する。1980年代から90年代にかけてピンクを主調とした独自の抽象絵画を確立する。2005年以降は再び油彩画を制作している。近年の展覧会に個展『熱帯』(日本橋髙島屋美術画廊 X、2021)、二人展『光:松本陽子/野口里佳』(国立新美術館、2009)、『モネ それからの100年』(横浜美術館、名古屋市美術館、2018)など。本展では、菱田春草の《湖上釣舟》(展示期間|2022/12/6-2023/1/29)などと組み合わせた展示を行なう。

 


松本陽子《黒い岩》1990年、東京都現代美術館蔵

 

関連イベント
ミュージアム・カレッジ 2022「トランジット—新たな敷居学の提案」(共催:埼玉大学教養学部)
①現代作家×コレクション—企画展「桃源郷通行許可証」について
講師:鴫原悠(埼玉県立近代美術館学芸員)
2022年11月19日(土)15:00-16:30(開場:14:30-)
会場:埼玉県立近代美術館2階講堂
定員:60名(当日先着順)
料金:無料

②歌舞伎と女―初代中村仲蔵の母おしゅんの業績
講師:トーヴェ・ビュールク(埼玉大学大学院人文社会科学研究科 教授)
2022年12月3日(土)15:00-16:30(開場:14:30-)
会場:埼玉県立近代美術館2階講堂
定員:60名(当日先着順)
料金:無料

③老荘思想の基本問題——政治思想を中心に
講師:西山尚志(埼玉大学大学院人文社会科学研究科 准教授)
2022年12月10日(土)15:00-16:30(開場:14:30-)
会場:埼玉県立近代美術館2階講堂
定員:60名(当日先着順)
料金:無料

④境界を生きる現代アメリカのアーミッシュ
講師:野村奈央(埼玉大学大学院人文社会科学研究科 准教授)
2022年12月18日(日)15:00-16:30(開場:14:30-)
会場:埼玉県立近代美術館2階講堂
定員:60名(当日先着順)
料金:無料

※そのほか、出品作家のアーティスト・トークなど関連イベントを実施予定。詳細は公式ウェブサイトを参照。

 

同時開催
MOMAS コレクション
第2期|2022年9月3日(土)- 11月27日(日)
第3期|12月3日(土)- 2023年2月26日(日)

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