交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー @ 豊田市美術館


ソニア・ドローネー《リズム》19115-30年 京都国立近代美術館 ©️Pracusa 20220322

 

交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー
2022年6月7日(火)– 9月4日(水)
豊田市美術館
https://www.museum.toyota.aichi.jp/
開館時間:10:00–17:00 入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、7/18、8/15は開館)
企画担当:千葉真智子(豊田市美術館学芸員)、西崎紀衣(豊田市美術館学芸員)
展覧会URL:https://www.museum.toyota.aichi.jp/exhibition/
※会期中に一部展示替えあり。前期は7月24日(日)まで、後期は7月26日(火)から

 

豊田市美術館では、1910年代から30年代にかけて、西欧を中心に日本を含む各地で同時代的に現れた、さまざまな「モダン」の形を紹介する展覧会『交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー』を開催する。第一次世界大戦後、応用芸術の分野で活躍した女性作家たちの作品に注目する本展では、これまでにまとめて紹介される機会のなかったモダンデザイン、装飾芸術、ファッションを一堂に集め、その関わりに焦点を当てて紹介する。

機能主義に基づく「モダニズム」は、いまだに当時の中心的な動向とみなされているが、一方で、大衆消費社会が進展したこの時代は、常に新しくあるために装飾することに価値が置かれた、儚き「モダニティ」の時代でもあった。この対立的に捉えられてきたふたつの「モダン」は、実際にはいくつもの「モダン」をうちに含み、それらは複雑に関係しながら濃密な時代を作り上げていた。

当時の作家たちは、時間差なく情報を共有し、国やジャンルを越えて同期し合い、その範囲は、絵画、彫刻から、家具、食器、洋服、さらにそれらを収める建築や都市まで、いわば、生活空間、身体活動全般におよんだ。1903年に設立されたウィーン工房は、初期の厳格でソリッドな表現に代わり、1910年代後半以降は女性作家たちによる愛らしくロマンティックな作品を次々に生み出し、フランスのファッションデザイナー、ポール・ポワレと刺激し合う一方で、建築家で室内装飾家のロベール・マレ=ステヴァンなど、同国のモダニストにも影響を与えた。1919年に設立されたバウハウスでは、織物工房にクラス分けされた女性作家たちが新素材も使いながら織物を追求し、金属工房では、マリアンネ・ブラントなど数少ない女性作家が、カラフルな色も使いながら魅力的な形態の作品を制作した。また、同校を離れた作家たちが、ブルク・ギービッヒェンシュタイン美術工芸学校に教員として着任し、より職人的な観点から実際の生活にふさわしい応用芸術を模索していく。

 


アトリエ・マルティーヌ/ロジーヌ《本物のオー・デ・コロン》1912年頃 海の見える杜美術館


フェリーチェ・リックス=ウエノ《テキスタイル「クレムリン」》1929年 島根県立石見美術館

 

装飾芸術家、デザイナーたちは、新しい時代にふさわしい生き方、暮らし方をデザインしようと試み、この頃から、ただ単体の家具調度をデザインするのではなく、部屋全体をいかに統一的にデザインするかを重視するようになった。その生活全般への眼差しは、日本で新しい生活様式を模索した森谷延雄や斎藤佳三らにも共有されるものである。そして、ファッションをはじめとするすべての商品は、ただそれを着る人、使う人だけの問題ではなくなり、人々の消費意欲を促すショーウィンドウや広告デザイン、また新しいファッションに身を包んだ女性たちが、街の表情自体を作り変えていくこととなった。この時期、同時主義絵画で知られるソニア・ドローネーはファッションの仕事に専心し、建築・家具デザインを手がけたルネ・エルブストらモダニストは都市を彩るショーウィンドウデザインに大きな関心を払っていた。

本展では、1914年に勃発した人類史上初の世界大戦が象徴するように、世界が一気に同期し、急速に変化する社会のなかで、作家たちがときに交わり、ポリフォニーのように共鳴しながら探求したいくつもの「モダン」の形を紹介する。

 


ガブリエル・シャネル《イブニング・ドレス》1927年頃 島根県立石見美術館


マリアンネ・ブラント《ブックエンド》1930/32年 宇都宮美術館

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