段々降りてゆく ——九州の地に根を張る7組の表現者 @ 熊本市現代美術館


山内光枝《信号波》 2020年

 

段々降りてゆく ——九州の地に根を張る7組の表現者
2021年3月27日(土)- 6月13日(日)
熊本市現代美術館 ギャラリーⅠ・Ⅱ
https://www.setagayaartmuseum.or.jp/
開館時間:10:00-20:00 入場は閉館30分前まで
休館日:火(ただし、5/4は開館)、5/6
企画:佐々木玄太郎(熊本市現代美術館学芸員)

 

熊本市現代美術館では、九州各地を拠点に、自らの生きる環境に根ざした問題意識を持って主体的な活動を行なう7組を紹介する展覧会『段々降りてゆく ——九州の地に根を張る7組の表現者』を開催している。

 

「段々降りてゆく」よりほかないのだ。飛躍は主観的には生れない。下部へ、下部へ、根へ、根へ、花咲かぬ処へ、暗黒のみちる所へ、そこに万有の母がある。存在の原点がある。初発のエネルギイがある。
(谷川雁「原点が存在する」1954)

 

熊本県出身の谷川雁の詩論の一節を参照した展覧会タイトルを持つ本展では、三大都市圏のような複数の美術館や美術系大学、ギャラリーやアートマーケットといった芸術インフラが十分に整っているとはいえない九州の地で、自身の存在の核心をなしているものを掴もうと地道な模索を続ける作家の姿勢、あるいは自らのいる環境・状況を見定めた上でそこから自身の表現を立ち上げようとする姿勢を提示する。自らの環境と状況に即した芸術や表現者のあり方、「私たちにとって切実な表現とは何か?」を探求する実践例を通じて、観客とともにこの土地の独自の文化、さらにそれが生み出しつづける可能性について考察していく。出展作家は以下の7組。

 


加藤笑平《mass of roman tic go/ちくご》2018年 photo by Shintaro Yamanaka


すうひゃん。《リトルメロディ》2016年

 

加藤笑平(1983年東京都生まれ)は、2005年に熊本県天草に移り、農耕や塩づくりを営みながら生活、制作をつづけてきた。相反するものが共存している日常の状態を、絵画やインスタレーション、パフォーマンスで表現するとともに、「天草在郷美術館」を運営。2020年より長崎県野母崎に拠点を移し、現在、新たなスペースの開設を準備している。在日コリアン3世のすうひゃん。(1974年東京都生まれ)は、2011年に家族とともに宮崎県綾町へ移住し、制作をつづける。“自身の触れることのできる範囲の子供達”をモデルに、人間の在り方、そして、それを取り巻く現代の社会の状況を描き出そうと試みている。畑直幸(1979年岐阜県生まれ)は、オランダで写真を学び、2015年に家族とともに大分県山香に移住。撮影対象に塗装やライティングなどの操作を加えて撮影し、写真の視覚構造をあきらかにするような表現を試みている。また、アートスペース「現実」の運営、ほかの地域の作家との共同展示を行なう。

 


畑直幸《/g/b//u》2020年


宮本華子《出られないから、乗ってみた。》2020年

 

2016年よりベルリンを拠点とする宮本華子(1987年熊本県出身)は、個人的な経験を出発点に、「家族」や「家」、「他者とのつながり」といった普遍的テーマに対峙している。また、故郷の熊本県荒尾にレジデンススペース「motomoto」をひらき、海外アーティストの招聘も行なっている。加藤亮(1984年大分県生まれ)と児玉順平(1984年熊本県生まれ)が2009年に結成したユニットオレクトロニカは、2011 年から「制作と生活」をテーマに大分県竹田を拠点に活動する。作品制作のみならず、空間デザインや地域に根差した企画のプロデュースなど、幅広い活動を展開している。HOTEL ASIA PROJECTは、北九州のアーティストラン・スペース「GALLERY SOAP」が2011年から、アジア各地のアーティストやキュレーター、研究者等と協働して展開しているプロジェクト。広い視野を持ちながら北九州を含む各地域の歴史的・社会的背景をリサーチし、その考察をもとにアジア各地で展覧会やトーク、音楽など多ジャンルに渡るイベントを開催している。山内光枝(1982年福岡県生まれ)は、裸の海女が佇む一枚の古い写真との出逢いをきっかけに、2010年頃より現在に至るまで、主に黒潮・対馬暖流域の浦々で滞在を重ねながら、海を基点とした人間や世界のあらわれを探究している。昨夏の釜山市での展覧会参加を機に日本統治下の“フザン”に暮らした家族史に向きあいはじめ、海峡の渡り方、内なる境界の越え方を模索している。

 


オレクトロニカ×mama!milk《風景への参道》2016年


HOTEL ASIA PROJECT、ORGANHAUS(中国・重慶)での展示風景、2018年

 

関連イベント(※いずれも要事前申込。詳細は公式ウェブサイトを参照。)
オープニングパフォーマンス
出演:加藤笑平
2021年3月27日(土)11:00-12:00
会場:熊本市現代美術館ホームギャラリー
定員:30名

オープニングパフォーマンス
出演:各出展作家(一部はリモート出演)
2021年3月27日(土)14:00-15:30
会場:熊本市現代美術館ホームギャラリー
定員:50名

山内光枝『つれ潮』上映
2021年4月12日(月)①14:00-15:20 ②17:00-18:20
5月3日(月・祝)①14:00-15:20 ②17:00-18:20
(各日二回上映。内容はいずれも同一)
会場:熊本市現代美術館アートロフト
定員:90名

CAMK レクチャーカレッジ「企画者の東奔西走と右往左往」
出演:佐々木玄太郎(本展企画者・熊本市現代美術館学芸員)
2021年5月8日(土)14:00-15:30
会場:熊本市現代美術館ホームギャラリー
定員:50名

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