青木野枝 霧と鉄と山と @ 府中市美術館


青木野枝《天蓋Ⅰ》2016年 ギャラリー・ハシモトでの展示 撮影:山本糾 courtesy of ANOMALY

 

青木野枝 霧と鉄と山と
2019年12月14日(土)- 2020年3月1日(日)
府中市美術館
https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/
開館時間:10:00-17:00 入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、1/13と2/24は開館)、年末年始(12/29-1/3)、1/14、2/12、2/25
企画:神山亮子(府中市美術館学芸員)

 

府中市美術館では、鉄を中心とした固く重い素材を用いて、大気や水蒸気をモティーフに、万物がうつろいゆくなかの生命の尊さを軽やかに表現してきた彫刻家・青木野枝の個展『霧と鉄と山と』を開催する。

青木野枝(1958年東京都生まれ)は、溶断と溶接という鉄を扱う上での基本的な技術により、鉄板から切り抜いた形をつなげて広い空間にまるでドローイングを描くかのように展開し、空間そのものの質と意味を鮮やかに変容させる彫刻で知られる。展示場所に合わせてつくられる作品のほとんどは、展示が終わると解体されるが、青木は「つくって、置き、崩す」を繰り返す、その営みのなかに自らの彫刻があると考え、実践している。また、早い時期より民俗学や文化人類学に関心を持ち、制作との関連性もしばしば指摘されている。2019年は既に、色ガラスという新たな素材を使用した作品制作や都市の経験に呼応するような山のかたちの石膏彫刻などを発表した長崎県美術館での個展『青木野枝ーふりそそぐものたち』に続き、鉄による新作を中心に、霧島の自然を象徴する「霧」と「山」をテーマに展示空間を構成した個展『青木野枝ー霧と山』を鹿児島県霧島アートの森で開催。霧島での展覧会タイトルに「鉄」が加わった本展では、府中市美術館の空間にあわせて構想した新作とともに、石膏を用いた「原形質」シリーズ、最初期の丸鋼で造形した彫刻など、青木の制作活動のエッセンスを集めた展示を行なう。本展と霧島での展示との共通の展覧会公式図録『流れのなかに ひかりのかたまり』(左右社)には、1981年から現在にいたる青木の活動の貴重な記録写真やアトリエでの制作風景や展示設営のドキュメント、年譜などのほか、本展を担当する神山亮子によるインタビューと論考を収録している。

 


青木野枝《霧と山》2019年 鹿児島県霧島アートの森展示風景 撮影:山本糾 courtesy of ANOMALY、青木野枝《原形質/2015》2015年 ギャラリー・ハシモトでの展示 撮影:山本糾 courtesy of ANOMALY

 

青木は、武蔵野美術大学大学院造形研究科(彫刻コース)を1983年に修了。86年からは若林奮の庭の仕事のアシスタントを務めながら制作に取り組み、国内外の企画展に出品、資生堂ギャラリーや国立国際美術館などで個展を開催する。2000年には青木がひとつの転換期と位置付ける個展『青木野枝展ーー軽やかな、鉄の森』を目黒区美術館で開催。以来、青森公立大学国際芸術センター青森、下山芸術の森 発電所美術館(富山)、上海美術館、会津創作の森(福井)での個展や、神奈川県立近代美術館・葉山の企画展『プライマリーフィールド』(2007)、瀬戸内国際芸術祭(2010)など、国内外で展覧会を重ねる。同時期の2007年には、府中市美術館の公開制作の枠組みで《空の水》を制作し、同館市民ギャラリーに設置。2012年には個展『青木野枝|ふりそそぐものたち』を豊田市美術館と名古屋市美術館の二館同時開催を実現し、その翌年にはあいちトリエンナーレ2013に参加。2017年には第40回中原悌二郎賞を女性として初めて受賞している。現在、多摩美術大学客員教授も務めている(2009年までは同大学准教授)。

本展会期中には、青木本人が展示室で行なうアーティスト・トークのほか、同世代の安藤雅信、伊藤誠との鼎談や、「彫刻という幸いについて」というテーマの下、池内晶子、小田原のどか、利部志穂、窪田美樹との座談会を開催する。なお、座談会に参加する小田原が2018年に出版した『彫刻 SCULPTURE 1−空白の時代、戦時の彫刻/この国の彫刻のはじまりへ』(トポフィル)には、青木への長編インタビューが収録されている。

 

 

関連イベント
アーティスト・トーク
講師:青木野枝
2019年12月14日(土)、2020年2月15日(土)15:00-
会場:府中市美術館 企画展示室
※予約不要、要企画展観覧料

鼎談「小さな同期会 大学時代の想い出話とこれからのことなど」
青木野枝、安藤雅信(陶作家・現代美術作家・百草廊主)、伊藤誠(彫刻家)
2020年1月11日(土)14:00-
会場:府中市美術館 講座室
※予約不要、無料

座談会「彫刻という幸いについて」
青木野枝、池内晶子(美術家)、小田原のどか(彫刻家・彫刻研究)、利部志穂(美術家)、窪田美樹(彫刻家)
2020年2月23日(日)14:00-
会場:府中市美術館 講座室
※予約不要、無料

担当学芸員によるスライドトーク
2019年12月21日(日)、2020年2月9日(日)14:00-14:30
会場:府中市美術館 講座室
※予約不要、無料

さわって、感じる彫刻ツアー
子ども編|2020年1月26日(土)11:00-12:00
大人編|2020年2月29日(土)11:00-12:00
会場:府中市美術館 企画展示室ほか
※予約不要、要企画展観覧料

 

 


 


高嶋英男 ギャルリーパリ(横浜)での公開制作風景 2018年

 

同時開催
公開制作77 高嶋英男 からっぽに満たされる
2019年12月14日(土)- 2020年3月1日(日)
公開制作スケジュール(各日12:00-17:00);
12/14、15、21、22、1/25、26、2/1、2、8、9、11
完成作品展示(各日13:00-17:00);
2/15以降の土日
※上記の時間以外はガラス越しの鑑賞のみ

ワークショップ「やきものでうつわの人をつくろう」
講師:高嶋英男
2020年1月12日(日)13:00-16:00
定員:15名(事前申込制)
対象:小学生以上
材料費:800円
※申込方法は公式ウェブサイトを参照。申込締切は1/4(当日消印有効)

アーティスト・トーク
講師:高嶋英男
2020年3月1日(日)14:00-
会場:府中市美術館 講座室
※無料、予約不要

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