霧の抵抗 中谷芙二子 @ 水戸芸術館現代美術ギャラリー


「ロンドン・フォグ」霧パフォーマンス、#03779、2017年(参考図版)BMW Tate Live Exhibition: Ten Days Six Nights(テート・モダン/ロンドン)展示風景より コラボレーション:田中泯(ダンス)、高谷史郎(照明)、坂本龍一(音楽)撮影:越田乃梨子

 

霧の抵抗 中谷芙二子
2018年10月27日(土)-2019年1月20日(日)
水戸芸術館現代美術ギャラリー、広場
http://www.arttowermito.or.jp/
開館時間:9:30-18:00 入場は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、12/24、1/14は開館)、年末年始(12/27-1/3)、12/25、1/15
企画:山峰潤也(水戸芸術館現代美術センター学芸員)

 

水戸芸術館現代美術ギャラリーでは、「霧の彫刻」やいち早くビデオを取り入れた実践などで知られるアーティスト、中谷芙二子の活動における柔らかで明快な抵抗に着目した個展『霧の抵抗 中谷芙二子』を開催する。

中谷芙二子(1933年北海道生まれ)は、アメリカ合衆国のノースウェスタン大学を卒業後、66年に芸術と技術の実験を標榜するE.A.T.に参加する。E.A.T.が手がけた大阪万博ペプシ館(1970)では、人工霧の研究開発を担当し、初の霧の彫刻を発表する。一方、当時発売されたばかりの個人用小型ビデオを、マスメディアに対抗する個人のためのメディアとして、ビデオによるコミュニケーションを説いたマイケル・シャンバーグとレインダンス・コーポレーションの「ゲリラ・テレビジョン」(1971/邦訳:1974)を翻訳し、自身の制作活動にもビデオを積極的に取り入れる。80年には国内初のビデオギャラリーとして、東京・原宿にビデオギャラリーSCANを開設。作家や作品の紹介、国際ビデオ・テレビ・フェスティバルを主催するなど、10数年にわたって多彩な活動を展開した。昨年は、世界で初めて雪の人工結晶をつくった実験物理学者の父、中谷宇吉郎との二人展『グリーンランド 中谷芙二子+宇吉郎展』を銀座のメゾンエルメスで開催、ロンドンのテート・モダンで霧の彫刻の新作を発表。2018年には第30回高松宮殿下記念世界文化賞彫刻部門に選出された。

 


「ペプシ館」霧の彫刻、#47773、1970年(参考図版)日本万国博覧会(EXPO ’70)会場風景より 撮影:中谷芙二子

 

本展では、石川県加賀市の中谷宇吉郎 雪の科学館の建築を手がけるなど、長年の盟友である磯崎新が設計した水戸芸術館広場の噴水を舞台に霧のパフォーマンスを発表するとともに、展示室内では映像投影を交えた実験的な霧のインスタレーションという、ふたつの新たな霧の彫刻を発表する。また、これまでに世界各地で発表してきた80を越える霧作品の展開をはじめ、E.A.T.が『ユートピア&ヴィジョンズ 1871-1981』(ストックホルム国立近代美術館、1971)のために企画した「ユートピア Q&A1981」を、さまざまな資料とともに紹介。そのほか、オルタナティブ・メディアとしてのビデオの可能性を実践した活動期におけるビデオ作品や、上述したビデオギャラリーSCANの活動も振り返る。

会期中には、これまでにも2004年の山梨県白州や横浜トリエンナーレ2008、昨年のロンドンやオスロで実現した中谷の霧の彫刻と田中泯の場踊りの共演を開催。また、中谷芙二子をめぐるトークセッションと題して、萩原朔美と藤幡正樹の対談、岡﨑乾二郎の講演を開催。本展開催にあわせて刊行するカタログには、萩原、藤幡、岡﨑のほか、磯崎新、かわなかのぶひろ、森岡侑士によるエッセイ、中谷芙二子のロングインタビューなどが収録される。そのほか、『プレイ⇔リプレイ:「時間」を展示する』と題した国際交流基金・水戸芸術館共同企画の特別国際シンポジウムを開催。ダムタイプの高谷史郎や、ロンドンのテートでタイム・ベースド・メディア作品の保存修復を先導するピップ・ローレンソンなどが参加する。

同時開催の「クリテリオム」では第95回展として、早川祐太(1984年岐阜県生まれ)の個展を開催。早川は普段意識されることのない物の性質から生まれる現象や形態に目を向け、彫刻やそれらを用いたインスタレーションを制作している。2010年に武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻彫刻コースを修了。主な個展に『body』(HAGIWARA PROJECTS、2016)やαMプロジェクト2010『複合回路vol.2「認識の境界-早川祐太」』(ギャラリーαM、2010)、グループ展に『三つの体、約百八十兆の細胞』(Maki Fine Arts、2017)などがある。

 


「水俣病を告発する会―テント村ビデオ日記」1971-1972年 ビデオより抜粋


「老人の知恵―文化のDNA」1973年 「コンピュータ・アート’73」展(銀座ソニービル)展示風景より コラボレーション:小林はくどう、森岡侑士(E.A.T.東京)


中谷芙二子「Fog x Canopy」#72509、2018年 エメラルド・ネックレス公園(ボストン)での展示風景より 撮影:越田乃梨子

 

関連企画
公益財団 石橋財団・国際交流基金 現代美術キュレーター等交流事業
国際交流基金・水戸芸術館共同企画 特別国際シンポジウム『プレイ⇔リプレイ:「時間」を展示する』
2018年11月3日(土・祝)13:00-18:30(開場:12:30)
会場:水戸芸術館ACM劇場
定員:200名
無料
申込方法等、詳細は国際交流基金ウェブサイト内の下記URLを参照。
https://www.jpf.go.jp/j/project/culture/exhibit/exchange/2018/09-01.html

霧の彫刻x場踊り 大気と身体のオドリ
出演:田中泯(ダンサー)
2018年11月10日(土)、11月11日(日)各日14:30開演
会場:水戸芸術館広場
無料
※開演時間までに広場に集合

中谷芙二子をめぐるトークセッション「ビデオギャラリーSCANをめぐって」
出演:萩原朔美(映像作家、演出家、前橋文学館館長)x 藤幡正樹(メディアアーティスト)
2019年1月6日(日)14:00-15:30(開場:13:30)
会場:水戸芸術館会議場
定員:80名(先着順)、無料
※当日11:00よりエントランスホールにて整理券配布

中谷芙二子をめぐるトークセッション「岡﨑乾二郎による中谷芙二子の『霧の抵抗』」
出演:岡﨑乾二郎(造形作家、批評家)
2019年1月13日(日)16:00-18:00(開場:15:30)
会場:水戸芸術館会議場
定員:80名(先着順)、無料
※当日13:00よりエントランスホールにて整理券配布

 

 


 

同時開催
クリテリオム95 早川祐太
2018年10月27日(土)-2019年1月20日(日)
水戸芸術館現代美術ギャラリー第9室
企画:後藤桜子(水戸芸術館現代美術センターアシスタント・キュレーター)

 


早川祐太「i am you」2010年

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