丸木位里・俊 -《原爆の図》をよむ @ 広島市現代美術館


:丸木位里・俊「原爆の図 第2部 火」1950年 原爆の図丸木美術館蔵. :丸木位里・俊「原爆の図 第2部 火」(再制作版)1950−51年(後年に加筆) 広島市現代美術館蔵.

 

丸木位里・俊 -《原爆の図》をよむ
2018年9月8日(土)-11月25日(日)
広島市現代美術館
https://www.hiroshima-moca.jp/
開館時間:10:00-17:00 入場は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、9/17、9/24、10/8は開館)、9/18、9/25、10/9
展覧会特設URL:https://www.hiroshima-moca.jp/maruki/
展覧会担当:笹野摩耶(広島市現代美術館学芸員)

 

広島市現代美術館では、丸木位里・俊の代表作「原爆の図」初期三部作(原爆の図丸木美術館所蔵)とその再制作版(広島市現代美術館所蔵)を比較展示することで改めて同作を読み解く展覧会『丸木位里・俊 -《原爆の図》をよむ』を開催する。

丸木位里・俊は1941年に結婚し、東京・豊島区長崎のアトリエ村で生活していたが、1945年8月6日に広島に「新型爆弾」が投下された報道を知り、位里は家族の安否を案じて数日後に、俊もその後を追って広島へ入り敗戦を迎える。その後、ふたりは東京へ戻り47年に神奈川県の片瀬に移り住み、48年に「原爆の図」を描くことを思い立ち、広島の家族らから当時の体験を聞き、互いに裸になり人体デッサンを重ねるなど構想を練っていった。そして、1950年2月、第3回日本アンデパンダン展に共同制作した「8月6日」(のちに「第1部 幽霊」と改称)を発表。同年8月には「第2部 火」、「第3部 水」も加わり、三部作として東京で発表した。以来、平和団体や学生団体の協力の下、GHQ占領下の報道規制により原爆投下の被害が知られていない日本全国へ巡回し、被爆の惨状を伝える反核反戦の象徴となっていく。51年には「第4部 虹」、「第5部 少女」が完成し、巡回展に加えられ、以後30年以上にわたって「原爆の図」は「第15部 長崎」まで制作された。(原爆の図丸木美術館ウェブサイト「原爆の図」

再制作版は1950年末にアメリカ合衆国から「原爆の図」の展示を依頼された際に、俊によると、作品が紛失したときのため、丸木位里、俊、当時アトリエに寄宿していた画家の濱田善秀や若い画家とともに4人で制作された。結局、アメリカでの展示依頼は断ることになったが、「原爆の図」の巡回展の需要が高まるなかで、本作と同様に日本各地で展示されることとなった。一時は作者自身が門外不出にした時期もあったが、74年に丸木美術館栃木館の開館を機に丸木夫妻が加筆し、本作とは異なる独自の表現として展示を再開した。その後、96年の栃木館閉館に伴い、広島市現代美術館に寄贈されることとなった。2016年には原爆の図丸木美術館で広島市現代美術館の協力を得て、本作と再制作版をならべて比較する特別展『原爆の図はふたつあるのか』が開催された。

 


丸木位里・俊「原爆の図 第1部 幽霊」(再制作版・部分)1950−51年(後年に加筆) 広島市現代美術館蔵


丸木位里・俊「原爆の図 第2部 火」(再制作版・部分)1950−51年(後年に加筆) 広島市現代美術館蔵


丸木位里・俊「原爆の図 第3部 水」(再制作版・部分)1950−51年(後年に加筆) 広島市現代美術館蔵

 

広島市現代美術館では1989年の開館当時にそれまで広島平和記念資料館に長く展示されていた「原爆-ひろしまの図」(1973)を収蔵している(2015年には被爆70周年を機に同作の公開修復が行なわれ、本展にも出品)。また、92年には『丸木位里展』を開催、そのほか、『1945年±5年 戦争と復興:激動の時代に美術家は何を描いたのか』やコレクション展などで丸木夫妻の作品を展示してきた。本展では、「原爆の図」の初期三部作のほか、上述した「第4部 虹」、「第5部 少女」、そして、位里・俊のふたりがこれらの作品の前後にそれぞれ単独で制作した作品もあわせて紹介し、ふたりの画業の連続性からも「原爆の図」にみられる絵画的表現の試みを読み解いていく。

広島出身の丸木位里(1901-95)は1923年に本格的に絵画を学ぶために上京し、日本画家、田中頼璋に師事するも、様式化した日本画の修行になじむことはなく、関東大震災を受けて帰郷する。34年に再び上京し、より自由な日本画を制作する落合朗風の研究所に通い、新たな表現の探求をはじめる。同時期には、同郷の日本画家、船田玉樹や洋画家の靉光たちと広島で芸州美術協会を立ち上げ、分野の垣根を超えて絵画に向き合い、36年には広島県産業奨励館で「第一回芸州美術協会展」を開催。40年に福沢一郎らが設立した美術文化協会に参加し、第二次世界大戦中も美術文化協会展に出品を続けた。
一方、北海道出身の丸木俊(赤松俊子、1912-2000)は1929年に旭川高等女学校(現・旭川西高校)を卒業後に上京し、女子美術専門学校(現・女子美術大学)師範科西洋画部に入学する。卒業後に小学校の代用教員に就くが、画業に専念できないもどかしさから、37年に外務省一等通訳官の子どもの家庭教師として1年間モスクワに滞在。帰国後は豊島区長崎のアトリエ村に入居し制作活動を行い、40年には当時日本の委任統治下にあったミクロネシアに渡り、現地住民と交流しながら半年間滞在する。第二次世界大戦中は、日本による南洋統治のイデオロギーを反映させた、子ども向け絵本の挿絵を手がけ生活する一方で、鬱屈した時代の空気をまとった自画像も制作した。

なお、本展会期中には原爆の図丸木美術館学芸員で、丸木位里・丸木俊夫妻を中心にした社会と芸術表現との関わりについての研究、 展覧会の企画で知られる岡村幸宣によるギャラリートークや、日本近現代美術史を専門とする足立元(二松学舎大学専任講師)の講演会、版画家の神崎智子を講師にガリ版刷り体験のワークショップなどを関連プログラムとして行なう。また、連携企画として、広島市映像文化ライブラリーで本展関連上映を実施。広島平和記念資料館東館メモリアルホールでは、原爆の図丸木美術館の主催で、奈良美智と蔵屋美香(東京国立近代美術館企画課長)の対談「いま、《原爆の図》をどう観るか」、歌手の二階堂和美のトークと歌によるイベント「いのちを観る、いのちを謳う」を開催する。

 


丸木俊「裸婦(解放されゆく人間性)」1947年 個人蔵


丸木位里「牛」1942年 広島県立美術館蔵

 

関連イベント
ゲストによるスペシャル・ギャラリートーク
講師:岡村幸宣(原爆の図丸木美術館学芸員)
2018年9月8日(土)10:30-11:30
※申込不要、要展覧会チケット
※当日、展示室入口に集合

講演会「原爆の図」の片隅に
講師:足立元(視覚社会史研究者/二松学舎大学専任講師)
2018年10月6日(土)14:00-15:30
会場:広島市現代美術館地下1階ミュージアムスタジオ
※申込不要、要展覧会チケット(半券可)

ワークショップ「ガリ版刷り体験」
講師:神崎智子(版画家)
2018年10月14日(日)10:30-15:30(昼休憩1時間あり)
対象:小学4年生以上
定員:20名(要事前申込 ※応募者多数の場合は抽選)
https://www.hiroshima-moca.jp/maruki/#link-program

※そのほかの関連イベントは公式ウェブサイトを参照。

 

連携企画
『丸木位里・俊 -《原爆の図》をよむ』関連上映 @ 広島市映像文化ライブラリー
広島市映像文化ライブラリー(広島市中区基町3-1)
http://www.cf.city.hiroshima.jp/eizou/
※上映日時、上映内容などの詳細は映像文化ライブラリーまたは広島市現代美術館のウェブサイトにて公開予定

『いのちを観る、いのちを謳う』
対談「いま、《原爆の図》をどう観るか」:
奈良美智(画家)x 蔵屋美香(東京国立近代美術館企画課長)
トークと歌:二階堂和美(歌手)
2018年11月18日(日)13:00-
会場:広島平和記念資料館東館メモリアルホール
定員:300名
※有料、前売予約
※イベントの詳細、申込に関する問合せは原爆の図丸木美術館まで
http://www.aya.or.jp/~marukimsn/

 

 


 

同時開催
コレクション展 2018-Ⅱコレクション・ハイライト+特集1「キノコ雲のある世紀」/特集2「祈り」
2018年6月30日(土)-10月21日(日)
https://www.hiroshima-moca.jp/exhibition/collection2018-2/

コレクション展 2018-Ⅲコレクション・ハイライト+特集「顔のような」
2018年11月3日(土・祝)-2019年2月3日(日)
https://www.hiroshima-moca.jp/exhibition/collection2018-3/

 

ビデオアートプログラムA「世界に開かれた映像という窓」
第61回:ヴァレリー・ジューヴ
2018年7月10日(火)-9月24日(月・休)
https://www.hiroshima-moca.jp/exhibition/video61/

オープン・プログラム
夏のオープンラボ:新しい骨董
2018年7月14日(土)-9月17日(月・祝)
https://www.hiroshima-moca.jp/exhibition/summer_lab_2018/

ゲンビどこでも企画公募2018展
2018年11月10日(土)-11月25日(日)
https://www.hiroshima-moca.jp/dokodemo/

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