
フェムケ・ヘレフラーフェン「Corrupted Air|腐敗した空気」
2023年1月28日(土)– 3月21日(火)
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
https://gallery.kcua.ac.jp/
開館時間:11:00–19:00
休館日:月
展覧会URL:https://gallery.kcua.ac.jp/archives/2022/9650/
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAでは、現代の金融技術やインフラに関する抽象的なデータから、それらが持つ意味や生態学的影響などについて検証し、ジャンル横断的で多様な表現方法を用いて独自のイメージを生み出すフェムケ・ヘレフラーフェンの個展『Corrupted Air|腐敗した空気』を開催する。
フェムケ・ヘレフラーフェン(1982年オランダ・ナイメーヘン生まれ)は、抽象的な価値体系が歴史学や個人の生活、また生態学的に与える影響に焦点を当て、金融技術やインフラによって切り取られた物質的基盤、地理、価値体系に関する研究をもとに作品制作を行なう。そのストーリー性の高いミクストメディアによるインスタレーションは、オブジェクト、彫刻、サウンドなどで構成され、これまでにも各国の主要な美術館、国際展などに多数出展されている。現在、アムステルダムのサンドバーグ・インスティチュートのCreator Doctus(実践ベースの博士)課程に在籍し、アーネムのArtEZ芸術大学、アムステルダムのヘリット・リートフェルト・アカデミーで教鞭をとる。2016年には、パナマ文書についてオランダの調査ジャーナリストと共同研究を実施。17年から18年にはアムステルダムのライクスアカデミーのレジデンスプログラムを経験。また、アーティスト・ラン・プロジェクト「On-Trade-Off」のメンバーとして、バッテリー素材のリチウムの高騰を出発点として、技術産業の原材料、金融投機、エネルギーにまつわる幅広い問題を探求している。

本展では、国際的に高く評価された《Corrupted Air—Act VI(腐敗した空気——第6幕)》(2019)を中心に、彼女の活動を日本で初めて紹介する。同作品は、大災害に投機する金融商品であるカタストロフィ・ボンド(大災害債/CATボンド)についての調査研究から過去の生態系の大惨事を証言し、すでに絶滅してしまった生物のデジタルモデルの3体が、人間によって引き起こされようとしている「6度目の大絶滅」について議論するという演劇的なインスタレーション。パンデミック以前に制作された作品だが、目に見えない空気中のウイルスに怯えながら日々を過ごすコロナ禍を経験し、未だその呪縛から解放されていない私たちにとっては、さらなる問いを投げかけるように感じられるだろう。ほかにも、「On-Trade-Off」の一環で制作された《A Prelude to: When The Dust Unsettles(予兆:さめやらぬほとぼり)》(2022–23)や、現在進行中のプロジェクトの構想資料などもあわせて紹介する。
《Corrupted Air—Act VI》のタイトルにある「Act VI」は、過去の5度の大絶滅とは異なり人間の行為が引き金となった変化による「6度目の大絶滅(The Sixth Extinction)」を意味する。実際に、現在の世界はまさにその只中にあるという説もある。本作は、その「6度目の大絶滅」に備えて、「The Last Man(最後の人)」が生き延びるために作った地下壕「サバイバル・バンカー」を舞台とするインスタレーションとなる。予想される災害や大惨事に備えて超富裕層が建てた地下壕をイメージした空間のなかで、三葉虫(カンブリア紀から古生代終期のペルム紀まで繁栄し、絶滅した節足動物)、エピオルニス(マダガスカル島に17世紀頃まで生息していたとされる鳥類)、トカゲ(ミミナシオオトカゲ科の一種)という、すでに種の絶滅を経験した3体がデジタルモデルによって生命を取り戻し、まだこの場に姿を現さない地下壕の主である「最後の人」を、来るべき「6度目の大絶滅」をめぐって断片的な会話を繰り広げながら待ち続ける。

