聞く/聴く:探究のふるまい @ 京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA


共同研究「わたしたちのまとうもの:装い、音、環境をめぐる考察と実践」ワークショップの様子/撮影:吉本和樹

 

聞く/聴く:探究のふるまい
2024年8月24日(土)-10月14日(月・祝)
京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
https://gallery.kcua.ac.jp/
開館時間:10:00–18:00
休館日:月(ただし9/16、9/23、10/14は開館)、9/17、9/24
企画:藤田瑞穂(@KCUA チーフキュレーター/プログラムディレクター)
展覧会URL:https://gallery.kcua.ac.jp/archives/2024/11235/

 

京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAでは、「聞く/聴く」を起点とする探究から生まれる芸術実践に注目し、そのあり方と可能性について探る「聞く/聴く:探究のふるまい」を開催する。

日本語の「きく」という言葉は、音や声を耳で感じること、また聴覚に限らない感覚を働かせて識別することなどさまざまな意味を持つが、いずれも情報を認識しそれを受け止めるという点で共通する。その情報を知ろうとするとき「聞く」は「聴く」へと変化し「探究」がはじまり、情報の送り手と受け手の間の関係性が深さを増す。本展では、ジェン・ボー、西尾美也、フェムケ・ヘレフラーフェン、柳沢英輔の作品とともに共同研究「わたしたちのまとうもの:装い、音、環境をめぐる考察と実践」を紹介し、新たな「知」を拓こうとする「探究」としての芸術実践との出会いにより「聞く/聴く」を深める場を創出する。

 


ジェン・ボー《The Political Life of Plants 1》展示風景/Gropius Bau, Berlin, 2021


西尾美也《Ensemble Clothes》「Artists by Artists」六本木アカデミーヒルズ/東京、2003/©︎Haruka Hirose

 

ジェン・ボー(1974年北京生まれ)は、地域の歴史についての緻密な調査をもとに、政治的な史実やアーカイブなどの過去の事物と雑草などの植物を結びつけ、未来について考察する作品で知られる。近年は、ドローイング、ダンス、映像を通して、台湾のシダ、北欧のコケ、ドイツのブナの木、アラビア砂漠のアカシア・トルティリスなどの植物を題材に制作。第59回ヴェネツィア・ビエンナーレ「The Milk of Dreams(夢のミルク)」(2022)、ヨコハマトリエンナーレ2020「AFTERGLOW―光の破片をつかまえる」、台北ビエンナーレ2018、マニフェスタ12(パレルモ、イタリア、2018)など多くの国際展に参加。

西尾美也(1982年奈良県生まれ)は、社会彫刻、行為の芸術を専門とし、装いとコミュニケーションの関係性に着目したプロジェクトを国内外で展開。近年は「学び合いとしてのアート」をテーマに、さまざまなアートプロジェクトや教育活動を通して、アートが社会に果たす役割について実践的に探究している。またデザイナーとしてファッションブランド「NISHINARI YOSHIO」を手がける。近年の主な展覧会に「ドレス・コード? 着る人たちのゲーム」(熊本市現代美術館、2019)、「20th DOMANI・明日展 寄留者(パサジェ)の記憶」(国立新美術館、東京、2018)、「あいちトリエンナーレ2016」(愛知芸術文化センター)など。

フェムケ・ヘレフラーフェン(1982年オランダ・ナイメーヘン生まれ)は、抽象的な価値体系が歴史学や個人の生活、また生態学的に与える影響に焦点を当て、金融技術やインフラによって切り取られた物質的基盤、地理、価値体系に関する研究を基に作品制作を行なう。ストーリー性の高いミクストメディア・インスタレーションは、オブジェクト、彫刻、サウンドなどから構成される。近年は、言語、声、呼吸器系を用いて、社会的、生物学的、技術的な生態系の中に存在するマネタイズされた投機的な「カタストロフィ」を検証している。近年の主な個展に「Corrupted Air|腐敗した空気」(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA、2023)など。

柳沢英輔(1981年東京都生まれ)は、音文化研究、音響民族誌、映像人類学を専門とし、ベトナム中部高原の先住少数民族が継承する金属打楽器ゴングをめぐる音の文化を主に研究。ゴングをめぐる人々の知識、わざ、行動、信仰、表現などを「ゴング文化」と定義し、その動態について音響・映像メディアを活用した人類学的なフィールドワークに基づき研究を進める。また、場所の特徴的な響きに焦点を当てたフィールド録音作品を国内外のレーベルより出版。著書に『フィールド・レコーディング入門 響きのなかで世界と出会う』(フィルムアート社、2022)、『ベトナムの大地にゴングが響く』(灯光舎、2019)など。

 


フェムケ・ヘレフラーフェン《The Murmur of the Dying》「Decoding the Black Box」での展示風景/ Galerie Stadt Sindelfingen, 2024

 

本展は、西尾美也、柳沢英輔、本展企画者の藤田瑞穂による、装いとコミュニケーションのあり方を広義的に捉え、音や環境との関係性から考察する共同研究「わたしたちのまとうもの:装い、音、環境をめぐる考察と実践」に関するセクションから始まる。研究テーマにリンクする西尾と柳沢の作品に加え、京都市立芸術大学と東京藝術大学の学生によるアクション・リサーチなどの研究プロセスの展示と、鑑賞者が研究に参加できる実験エリアを展開。また、「聞く/聴く」に関連した学術的な芸術実践の海外での事例として、フェムケ・ヘレフラーフェンによる声、予測、AI、病気、コミュニティと死の間の複雑な関係を取り上げた近作と、ジェン・ボーが生物多様性と土壌生態学、植物の適応研究を専門とする二人の科学者と協働した作品シリーズを展示する。

会期中には、ジェン・ボーが2023年3月に京都で実施したトークシリーズをウェブサイトにて公開。また、9月22日(日)と10月5日(土)に関連イベントを予定。詳細は公式ウェブサイトを参照。

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