コンダンサシオン:アーティスト・イン・レジデンス展
エルメスのアトリエにて
Condensation
Artists in residence in Hermès workshops
会期:2014年3月20日(木)~6月30日(月)
キュレーター:ガエル・シャルボー
アーティスト:エリザベス・S・クラーク / ブノワ・ピエロン
オリヴィエ・セヴェール / シモン・ブドヴァン / マリン・クラス
セバスチャン・グシュウィンド / 小平篤乃生 / エミリー・ピトワゼ
オリヴァー・ビアー / オ・ユギョン / フェリックス・パンキエ
アンドレス・ラミレス / ガブリエル・チアリ
マルコス・アビラ・フォレロ / マリー=アンヌ・フランクヴィル
アンヌ=シャルロット・イヴェール
フォーラムでは、エルメス財団主催による「アーティスト・イン・レジデンス」の制作プロセスや成果を紹介する展覧会「コンダンサシオン」を開催いたします。
2010年の夏よりエルメスの工房で始まった「アーティスト・イン・レジデンス」は、現代美術と優れた職人技を連携させたいと願うエルメス財団によって運営されています。これまでもエルメス財団はフォーラムや世界各地にあるギャラリーでの展覧会をはじめ、舞台芸術と造形美術の融合をめざした独自のプログラムなど、広範囲にわたる活動、作品制作への支援を通じ、アーティストと密接に関わってきました。
「アーティスト・イン・レジデンス」に参加した若いアーティストたちは、レジデンス先の工房において、比類なき職人技に触れるとともに、クリスタルや特別な革、銀やシルクのような普段は手の届きにくい素材を使いながら作品を作る機会を得ることになります。彼らにとって、この恵まれた制作環境は、新たな芸術に向けて冒険の扉を開くのです。舞台となるフランスの工房は、財団とともに積極的にプロジェクトに取り組んでいます。職人たちはこのような非日常的なプロジェクトを通じて、自分たちの技術をさらに向上する機会を手にし、工房は新しい世界に触れるチャンスを得ました。
エルメス財団は滞在制作へのサポートだけではなく、そこで生み出されたアート作品を広く紹介してゆくことでも、参加アーティストたちを応援しています。これまでの4年間で制作された16人による作品を、ガエル・シャルボーのキュレーションによって紹介するこの「コンダンサシオン」展は、その試みの一つです。
2013年夏にパリのパレ・ド・トーキョーに続き、フランス国外では、初の機会となるフォーラムでの開催は、エルメス財団にとっても、またアーティストや職人たちにとっても、レジデンスによって生まれた交流の新たな旅路を拓くことでしょう。
アーティスト・イン・レジデンスについて
本プログラムは、フランス国内のエルメスの工房と密接に協力しながら実施されています。レジデンス・アーティストの選考は「メンター制度」をとっており、経験豊かで国際的に活躍する4人のアーティストによる推薦によって選ばれます。2010~2013年のレジデンスには、リチャード・ディーコン、スザンナ・フリッチャー、ジュゼッペ・ペノーネ、エマニュエル・ソーニエを「メンター」として迎えました。4人は高い指導能力、素材の取り扱いの経験、そして何よりも高度な芸術性を備えたベテランの作家であり、4年に渡って、毎年新しいアーティストを推薦する役目を引き受けました。
このプログラムは、意欲のある若手アーティストたちに、エルメスの工房が有する高い技術や素材を使って、作品を制作する機会を与えることを目的としています。2010~2013年の4年間を通じて、毎年4人のアーティストがフランスにあるエルメスの工房に滞在しました。工房における円滑なコミュニケーションの必要性から、フランス語を話す若いアーティストが対象となっています。
参加アーティスト
2010 エリザベス・S・クラーク(サヤ皮革工房)
ブノワ・ピエロン(アトリエAS)
オリヴィエ・セヴェール(サンルイ・クリスタル)
シモン・ブドヴァン(アルデンヌ皮革工房)
2011 マリン・クラス(ピュイフォルカ)
セバスチャン・グシュウィンド(サン=タントワーヌ皮革工房)
小平篤乃生(サンルイ・クリスタル)
エミリー・ピトワゼ(ピエール=ベニト皮革工房)
2012 オリヴァー・ビアー(サンルイ・クリスタル)
オ・ユギョン(ピュイフォルカ)
フェリックス・パンキエ(ペレイ皮革工房)
アンドレス・ラミレス(アトリエAS)
2013 ガブリエル・チアリ(アトリエAS)
マルコス・アビラ・フォレロ(ノントロン皮革工房)
マリー=アンヌ・フランクヴィル(サンルイ・クリスタル)
アンヌ=シャルロット・イヴェール(ジョン・ロブ)
制作過程
参加アーティストは同じ作品を二つ制作します。一つはアーティストが所有、もう一つは財団の所有とし、工房や展覧会にて展示されます。先入観に左右されず、「白紙」の状態から作品を作ってほしいとの願いから、アーティストにはまず、2~3か月の滞在が始まる前に、工房をじっくりと観察する時間を設けています。レジデンスの期間中、財団はアーティストに、奨学金の給付と制作の支援を行います。工房側も積極的に協力をし、アーティストを技術面、物質面において支えるだけでなく、彼らの日常生活にも寄り添います。エルメス財団は、この活動を「カイエ・ド・レジデンス」などの出版物や展覧会などを通じて広報し、アーティストを多くの人に知ってもらうようにも努めています。
アーティストと職人は、この出会いから新たな対話を生み出し、お互いに切磋琢磨しています。それぞれが自分たちの慣習を変えたり、想像力を豊かにしたりすることで、様々な変化や成長が導かれてゆくのです。この出会いは、プロフェッショナルとして、またひとりの人間として、相互にとって必ず実りある経験となるでしょう。それこそが、エルメス財団が大切にしている価値観なのです。