新展示トーマス・バイルレ「Monuments of Traffic」展、開催中

エスパス ルイ・ヴィトン東京では、ドイツ人アーティスト、トーマス・バイルレによる個展、『Monuments of Traffic』展を開催中です。1960年代のメディアアート、ポップアートのパイオニアとして名高いバイルレは、自身のキュレーションを通じて、会場をミニマルでありながらどこかユーモラスな空間に仕立てました。

展示会場の中央に置かれているのは、本展のための新作、『Conducteur(指揮者)』です。スチールの支柱に設置されているのは、この作品の為に制作されたワイパーです。そのアームはリズミカルに動き、まるで本展全体を指揮する指揮者のようです。

そして、その前に広がるのは、2012年、『ドクメンタ(13)』でインパクトを与えた巨大作品『Carmageddon(カーマゲドン)』の一部です。ボール紙で作られた、何百もの自動車道から成るフィールドをより近くで見ると、交通渋滞が日々いたるところの車道を覆い尽くしていた時代の名残を表現しているかのように見え、来場者は、過ぎ去りし時代の遺物と向き合います。


同様のボール紙製のグリッドに印刷された3つの山の風景は、著しく増加する交通量の影響をますます受けているスイスの3つの山を表しています。そして、このオブジェに隣接する壁に掛けられた、形の歪んだオブジェは、激しく大破し、折り曲げられた自動車道の一部と、ひしゃげられた廃車の残骸です。

映像作品、『Sunbeam』の上映によって時折中断されながらも、エリック・サティが1917年に作曲した「家具の音楽」と、それに混じる車のワイパーの原音で構成されたミニマル・ミュージックのコラージュが、延々と展示空間に響き渡ります。

作品以外のもう一つの見どころは、バイルレが70年代後半に東京を訪れた際に撮影した写真の数々。「街並みや人の流れに見られる連続性、集団的でありながら個人的であり、高い個人性と大きなパターンが共存できる日本の社会が、のちの作風に影響を与えた」とバイルレは言います。

本展で、バイルレは、それぞれの作品を通じて、連続性、動作、音、リズムの対話を生み出すことにより、彼の作品にとって、マシーンと自然の関係性がいかに大切であるかを表現しています。また、交通量の増量による自然破壊や事故といった、一見陰鬱なテーマを扱いながらも、それらをどこかユーモラスに表現しているのも、バイルレの作風の特徴であると言えるでしょう。

エスパス ルイ・ヴィトン東京の空間で織りなされたトーマス・バイルレの世界を、ぜひご体感ください。

トーマス・バイルレについて
1937年、ベルリン生まれ。織工として訓練を始め、その経歴がバイルレのパターンや表面、格子に対する根本的な芸術的思索に影響を及ぼす。30年以上にわたりフランクフルトのシュテーデル美術大学にて教鞭をとり、3世代の若きアーティストたちに影響を与えた。1960年代以降は、オブジェ、グラフィックス、デッサン、コラージュ、映画、サウンド・インスタレーションを含む多数の作品群を創作してきた。2012年、『ドクメンタ(13)』でアーノルト・ボーデ賞を受賞。今年は、大規模の回顧展がWIELS現代美術センター(ベルギー、ブリュッセル)(~5/12)、ドンナレジーナ現代美術館(イタリア、ナポリ)で開催される。

All photos:
©Louis Vuitton / Jérémie Souteyrat
Courtesy of Espace Louis Vuitton Tokyo

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