オクウィ・エンヴェゾー、ハウス・デア・クンストの新ディレクターに就任

ミュンヘンのアートセンター、ハウス・デア・クンスト(芸術の家)はテート・モダンのディレクターに今年4月より就任するクリス・デルコンの後任として、オクウィ・エンヴェゾーを新ディレクターに据えることを決定した。

2011年10月より新ディレクターに就任するエンヴェゾーは、2009年までサンフランシスコ・アート・インスティチュート(SFAI)の副学長および人文科学部長を務め、現在はニューヨークの国際写真センター(ICP)にて客員キュレーターを務め、2012年9月に予定されている同センターでの「The Rise and Fall of Apartheid」展のキュレーションを手掛ける。過去にドクメンタ11(2002、ドイツ、カッセル)、第7回光州ビエンナーレ(2007、韓国)のアーティスティックディレクターを務めたほか、国際的な展覧会のキュレーションを数多く手掛けている。また、2012年のパリのラ・トリエンナーレのチーフ・キュレーター、2011年のダブリン・コンテンポラリーのアドヴァイザリーキュレーターの就任も決定している。

ハウス・デア・クンストはナチス時代にヒトラーが第三帝国の象徴的な建物として、彼が標榜する「ドイツ美術」を見せるプロバガンダの中心地であったという負の歴史を背負っているため(館内では現在もその歴史についての展示が常設されている)、戦後、脱ナチスをかかげた展覧会を数多く行ってきた。ピカソの「ゲルニカ」の展示もそのひとつであり、脱ナショナリズムの一環として多くの国際的な美術を積極的に紹介した。現代においてもその文脈はつづいており、2003年にトロントのユダヤ人コレクター、イデッサ・ヘンデルが自らのコレクションを自らのキュレーションで行った『Partners』展は、こうした文脈で行われた優れた展覧会であった。

こうした象徴的なハウス・デア・クンストに、非欧米人であり、これまでポスト植民地主義のあり方を展覧会を通して考察してきた、オクウィ・エンヴェゾーが就任することは大きな意味を持つ。ヨーロッパ中心であった美術史における新たな一歩として期待される。

ハウス・デア・クンスト 公式ホームページ
http://www.hausderkunst.de/

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