恵比寿映像祭が次回のテーマおよび参加作家の一部を発表


 

2009年より「映像とは何か」という問いを掲げ、毎年異なるテーマによる探究を続ける恵比寿映像祭が、来年2月に開催する第16回展の総合テーマ「月へ行く30の方法」を発表、参加作家や新たな取り組みなどを発表した。

1969年7月20日、NASA(アメリカ航空宇宙局)の有人による月探査計画の下にアポロ11号が史上初の月面着陸を成し遂げた。それから半世紀以上を経て、もはや人々が気軽に月へ行くことも技術的に不可能ではなくなりつつある現在、「月に向かう」とは何を意味するのか。本展参加作家の土屋信子は、2018年にSCAI THE BATHHOUSE(東京)で開かれた個展を「30 Ways To Go To The Moon / 月へ行く30の方法」と名づけ、展示空間に「月という身近な未知に到達するための数々の秘策」を展開した。同展から総合テーマを引用した第16回恵比寿映像祭では、最先端の科学技術や理論以上に、一見それとは結びつかないようなアーティストたちの思考や実践の中に、新しい発見や創造につながり、月へ向かうためのヒントを探っていく。

 


土屋信子「マツモト建築芸術祭」展示風景、2022年 Photo:木内和美

 

第16回展の特徴のひとつとなるのが「映像の一回性」への着目。出品作品には、映像という複製芸術でありながら、反復や非場所という性質とは正反対である「一回性」にこだわった作品、パフォーマンスやユニークピース、すべてを目撃(鑑賞)することができないような時間的な奥行きや限界に取り組む作品、また映像制作のプロセスに身体的な行為や思考を作用させることで、その場を完成し、消滅していくような作品が予定されている。会期中は連日、パフォーマンス、トーク、ディスカッション、ワークショップなどのプログラムを実施し、作家と来場者がコミュニケーションを交わし、ともに思考を重ねていく場の創出も試みる。

また、同時開催となる恵比寿映像祭 コミッション・プロジェクトの前回の特別賞受賞者の荒木悠金仁淑も、総合テーマ「月へ行く30の方法」と連動する形で特別展示に取り組み、東京都写真美術館3階展示室では、「恵比寿映像祭2024 コミッション・プロジェクト」を開催。同プロジェクト出品作家は後日発表。

 


青木陵子+伊藤存《9歳までの境地》2011年、国立国際美術館 Photo:福永一夫


エヴェリン・タオチェン・ワン《A Scripted Impression》パフォーマンス写真 2022年 ⒸSang-tae Kim Courtesy Busan Biennale Organizing Committee

 

恵比寿映像祭2024「月へ行く30の方法」
2024年2月2日(金)-2月18日(日)
※コミッション・プロジェクト(3階展示室)のみ3月24日(日)まで
https://www.yebizo.com/
東京都写真美術館、恵比寿ガーデンプレイス センター広場ほか
開催時間:10:00–20:00(最終日は18:00まで)
(恵比寿映像祭以後のコミッション・プロジェクトは10:00-18:00)
休館日:月(ただし、12日は開館)、2/13
企画統括::田坂博子(恵比寿映像祭キュレーター、東京都写真美術館学芸員)

参加作家
荒木悠(コミッション・プロジェクト特別展示)、金仁淑(コミッション・プロジェクト特別展示)、青木陵子+伊藤存、荒川ナッシュ医、コリー・アーケンジェル、フェンバーガーハウス/ロジャー・マクドナルド、リッスン・トゥ・ザ・シティ、トレイシー・モファット、中谷芙二子、関川航平、土屋信子、エヴェリン・タオチェン・ワン

 


荒木悠《仮面の正体(海賊盤)》2023年 恵比寿映像祭2023 コミッション・プロジェクト Photo:井上佐由紀


金仁淑《Eye to Eye》2023年 恵比寿映像祭2023 コミッション・プロジェクト Photo:新井孝明

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