ダラ・バーンバウム @ プラダ 青山店 5F


Dara Birnbaum, Kiss the Girls: Make Them Cry (1979) Two-channel video installation (color, stereo sound, 6:50 min.), two video shipping crates, Installation view, Art Institute of Chicago, 2016, Courtesy of the artist and Marian Goodman Gallery, Copyright: Dara Birnbaum

 

ダラ・バーンバウム
2023年6月1日(木)-8月28日(月)
プラダ 青山店 5F(東京都港区南青山5-2-6)
開館時間:11:00–20:00
※営業時間が変更になる場合あり。最新情報は公式ウェブサイトを参照。
キュレーション:バーバラ・ロンドン
展覧会URL:https://www.prada.com/jp/ja/pradasphere/special-projects/2023/dara-birnbaum-prada-aoyama.html

 

ビデオアートの先駆者のひとりとして、アートとマスメディアの規範に挑みつづけてきたダラ・バーンバウムの個展が、ビデオアートのキュレーターの第一人者であるバーバラ・ロンドンのキュレーションの下、東京・青山のプラダ 青山店 5Fにて開催される。

ダラ・バーンバウム(1946年ニューヨーク生まれ)は、40年以上にわたり、ビデオアート、メディアアート、インスタレーションにおける先駆的な作品を通じて、マスメディアの持つイデオロギー的特徴や美的特徴を探究してきた。その作品はメディアアートの歴史を理解する上で欠かせないものとして国際的に高い評価を受けている。また、さまざまなソースの映像を扱うだけでなく、写真や彫刻的要素、建築的要素といったオブジェを作品に落とし込んだ複合的かつ革新的なインスタレーションをはじめたアーティストのひとりであり、その画期的な思考や実践、テレビの映像を加工して使うといった手法でも広く知られる。3度のドクメンタ(1982、1987、1992)をはじめ、数々の展覧会に参加。2000年以降も「Erwartung/Expectancy」(ユダヤ美術館、ニューヨーク、2003)、「Technology/Transformation: Wonder Woman」(クンストハレ・ウィーン、2006/ニューヨーク近代美術館、2008)、「ダラ・バーンバウム」(CCA北九州、2009)、「The Dark Matter of Media Light」(ゲント現代美術館、2009/セラルヴェス現代美術館、ポルト、2010)、「Arabesque」(サウスロンドン・ギャラリー、2011)、「Technology/Transformation」(クリーブランド美術館、2018)などの個展を開催している。

 


Dara Birnbaum, Arabesque (2011) Four-channel video installation (color, four-channel stereo sound, 6:26 min.); dimensions variable, Installation, Marian Goodman Gallery, New York, 2011, Courtesy of the artist and Marian Goodman Gallery, Copyright: Dara Birnbaum / Photo credit: John Berens

 

本展は、ミラノ・プラダ財団オッセルヴァトリオで開催中の個展(2023年4月13日-9月25日)に合わせて、日本でもバーンバウムの活動を紹介する機会として開かれ、ビデオインスタレーション《Kiss the Girls: Make Them Cry》と《Arabesque》を中心に4点の作品で構成される。キュレーションはミラノの個展と同じく、ニューヨーク近代美術館で長きにわたりキュレーターを務めたバーバラ・ロンドンが、ヴァレンティノ・カトリカラ(マンチェスター・メトロポリタン大学Modalギャラリー キュレーター)とエヴァ・ファブリス(プラダ財団キュレーター)の協力の下で行なう。

《Kiss the Girls: Make Them Cry》(1979)は、テレビで高い人気を博した長寿番組「ハリウッド・スクエアーズ」から、主に女優の身ぶりや表情の映像を抜き出し、ロックバンド、TOTOの「Georgy Porgy」、ソウル・デュオ、アシュフォード&シンプソンの「Found A Cure」といった当時ディスコフロアで流行ったヒット曲の歌詞と音楽を組み合わせた作品。《Arabesque》(2011)は、クララ&ロベルト・シューマン夫婦の生活をロマンチックに描いた伝記映画『愛の調べ』(監督:クラレンス・ブラウン、主演:キャサリン・ヘプバーン、ポール・ヘンリード)から抜き出したスチル(静止画像)と、YouTubeに投稿されたロベルト・シューマンが妻クララに捧げた《アラベスク ハ長調 Op.18》(1839)を演奏する女性のピアニストの映像、同じくYouTubeに投稿された(が前者に比べると投稿数の少ない)クララ・シューマンが夫ロベルトに捧げた《3つのロマンス 第1曲 Op.11》(1839)を演奏する女性のピアニストの映像とを交互に流れるように構成した4チャンネルのビデオインスタレーション作品。同作は、クララの日記の抜粋も使用し、女性の芸術家がしばしば歴史から排除されてきたことに加え、その人生、そして芸術において正当な評価を受けられない状況を多く生み出す、社会や家族、文化の仕組みにも言及している。

 


Dara Birnbaum, Kiss the Girls: Make Them Cry (1979) (Video still) Two-channel video installation (color, stereo sound, 6:50 min.), two video shipping crates, Courtesy of the artist and Marian Goodman Gallery, Copyright: Dara Birnbaum


Dara Birnbaum, Kiss the Girls: Make Them Cry (1979) (Video still) Two-channel video installation (color, stereo sound, 6:50 min.), two video shipping crates, Courtesy of the artist and Marian Goodman Gallery, Copyright: Dara Birnbaum

 

そのほか、本展の最初の部屋に配される《Bruckner: Symphony No. 5 in B-Dur》(1995)は、ドイツ民族の時代精神を表現していると第三帝国に利用された作曲家アントン・ブルックナーの作品から、《交響曲第5番》に対するふたりの指揮者、オットー・クレンペラーとヴィルヘルム・フルトヴェングラーのそれぞれの解釈を選んで構成した作品で、映画音楽やCM、テレビ番組の音楽を手がけるTomandandyのアンディ・ミルバーンとの共同制作。本展では、バーンバウムが特別に制作した同作の新バージョンを出品する。一方、初期映像作品《New Music Shorts》は、1970年代後半のニューヨークのアンダーグラウンドシーンで台頭したノー・ウェイヴのバンドのライブ映像(レディオ・ファイヤー・ファイトによる同シーンで重要な役割を果たしたマッド・クラブでのライブと、グレン・ブランカによる《Symphony No. 1 “Tonal Plexus”》のパフォーミング・ガレージでのライブ)を、ビデオ編集の技術を駆使しながら再編集した映像作品となっている。

 


Dara Birnbaum, New Music Shorts (1981) 5’41”, color, stereo sound Courtesy Dara Birnbaum ed Electonic Arts Intermix (EAI), New York

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