高松コンテンポラリーアート・アニュアル vol.10 ここに境界線はない。/? @ 高松市美術館

 

高松コンテンポラリーアート・アニュアル vol.10 ここに境界線はない。/?
2022年2月11日(金・祝)- 3月21日(月・祝)
高松市美術館 2階展示室
http://www.city.takamatsu.kagawa.jp/museum/takamatsu/
開館時間:9:30-17:00(金曜、土曜は19:00まで)入室は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、3/21は開館)
企画:石田智子(高松市美術館学芸員)
参加アーティスト:ウチダリナ、久保寛子、潘逸舟、ユアサエボシ、森栄喜

 

高松市美術館では、独創性、将来性のあるアーティストを紹介する、年に一度の現代美術のグループ展「高松コンテンポラリーアート・アニュアル」を開催する。2009年の「vol.00」からはじまり、11回目の開催となる本展は、「ここに境界線はない。/?」をテーマに、ウチダリナ、久保寛子、潘逸舟、ユアサエボシ、森栄喜の5人のアーティストを紹介する。

ウチダリナ(1990年東京都生まれ)は、蛾や自分自身の身体をモティーフに、和紙を焦がして模様を描き出す手法により繊細な立体作品を制作してきた。2016年に東京藝術大学大学院美術研究科工芸科染織専攻を修了。近年の主な展示に、2020年に東京のgallery kogureで開かれた個展『私はあなたと生きている』や、2021年に岐阜県美術館で開かれたグループ展『素材転生―Beyond the Material』などがある。本展では、これまでに取り組んできた和紙を使った作品に加え、平成2年に生まれたウチダが、生き別れた父親とそれにまつわる数奇な運命と自身の人生を、平成という時代に投影した物語を写真と映像作品で表現した新作を発表する。

久保寛子(1987年広島県生まれ)は、先史芸術や民俗芸術、文化人類学の学説を着想源に制作をつづけ、生活に身近な素材を用いて、新しい彫刻の可能性を探究している。広島市立大学芸術学部彫刻科を経て、2013年にテキサスクリスチャン大学彫刻専攻美術修士課程を修了。現在は広島を拠点に活動し、2017年より「Alternative Space CORE」を立ち上げ、共同主宰を務める。2017年に六甲ミーツアート公募大賞グランプリを受賞。2020年には神戸のギャラリーヤマキファインアートで個展『Wisdomof the Earth―大地の知恵―』を開催。『さいたま国際芸術祭2020』などでも作品を発表している。本展では、2021年の夏にテラスモール湘南で展示した、9m超の大作《オリオンの沈む処》を再構成して発表する。久保が扱う代表的な素材であるブルーシートを使った本作は、それぞれが古代から未来までも巻き込んだ壮大な自然と人間の営みの物語を伝える3m超の3つのパートからなり、日本の神話をモティーフにさまざまな作品を残した画家、青木繁の《海の幸》(1904)へのオマージュが込められている。

 


ウチダリナ、新作イメージ、2021年[199○年]技術協力:奥村直樹


久保寛子《オリオンの沈むところ》2021年 作家蔵


潘逸舟《そこにない足跡 / モエレ山》(部分)2021年 協力:さっぽろ天神山アートスタジオ

 

潘逸舟(1987年上海生まれ)は、映像、パフォーマンス、インスタレーション、写真など、さまざまなメディアを用いて、社会や他者と自己の関係性をテーマにした作品を発表している。2012年に東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻を修了。2010年代中頃より国内外で作品を発表し、日産アートアワード2020ではグランプリを受賞。近年の主な展覧会に、個展『いらっしゃいませ、ようこそ』(神戸アートビレッジセンター、2020)や『MOT Annual 2021―海、リビングルーム、頭蓋骨』(東京都現代美術館、2021)、『記憶は地に沁み、風を越え 日本の新進作家 vol.18』(東京都写真美術館、2021-2022)などがある。また、国際芸術祭「あいち2022」への参加も決定している。本展では、2021年に2月に札幌のモエレ沼公園で行なったパフォーマンスを撮影した映像を元に構成したビデオインスタレーション《そこにない足跡 / モエレ山》と、高松市内で撮影した写真作品《TIME AND SPACE/イサム・ノグチ作、1989年》を発表する。どちらの作品もイサム・ノグチの作品に着想を得ており、過去に他者が手掛けた作品を現在から解釈することを通じて、潘がこれまでに取り組んできた自己と他者の問題や芸術そのものに切り込む。

ユアサエボシ(1983年千葉県生まれ)は、「大正生まれの架空の三流画家」という設定の下で、シュルレアリスムの影響を受けた表現を発表している。2005年に東洋大学経済学部を卒業し、2008年に東洋美術学校絵画科を卒業。大学卒業後に就職した会社の倒産をきっかけに画家になることを決意し、34歳頃から上述した「ユアサヱボシ」の設定で制作に取り組む。2018年には第10回絹谷幸二賞を受賞。近年の主な展覧会に、個展『侵入するスペクトル』(Akio Nagasawa Gallery AOYAMA、2019)や、『still life 静物』(ギャラリー小柳、2021)などがある。本展では「ユアサヱボシが、戦後日銭を稼ぐために進駐軍の米兵たちの似顔絵を瓦に描いた」《GHQ PORTRAITS》の瓦150点すべてを展示するほか、「ユアサヱボシがともに活動した尊敬する画家である」山下菊二の《日本の敵国米国の崩壊》(1943)を題材とした新作の自画像などを発表する。

森栄喜(1976年石川県生まれ)は、セクシャルマイノリティをはじめとする多様性をテーマに、写真をはじめ、映像、文章、パフォーマンスなど、多様な表現を試みている。2001年にパーソンズ美術大学写真学科を卒業。2013年に写真集『intimacy』により第39回木村伊兵衛写真賞を受賞。近年の主な展覧会に、個展『シボレス|破れたカーディガンの穴から海原を覗く』(KEN NAKAHASHI、2020)や、『フェミニズムズ / FEMINISMS』(金沢21世紀美術館、2021)などがある。本展では「人の傷つき」を主題に、ジェンダー規範やさまざまなしがらみの中で、可視化されることのないままになってしまっている傷やそれをめぐる対話、ケア、回復を、ホーンスピーカーを複数組み合わせ空間を構成するサウンドインスタレーションを発表する。展覧会初日には、音響作家のばばまさみとパフォーマンスを上演。また、本作にも参加協力している臨床心理士の宮﨑浩一との語り合いを書面で公開する予定。また、森が初めて手掛けたサウンドインスタレーション《シボレス|破れたカーディガンの穴から海原を覗く》(2020)も併せて発表する。

 


ユアサエボシ《調査》2020年 個人蔵


森栄喜「せっかちな未来|An Impatient Future」[作・演出:森栄喜、出演:森栄喜、石倉来輝(劇団ままごと)] 東京都写真美術館2018年上演風景、撮影:小山貢弘

 

関連イベント
アーティスト・トーク
出演:ウチダリナ、久保寛子、潘逸舟、森栄喜、ユアサエボシ(潘のみ事前収録・映像出演)
2022年2月11日(金・祝)14:00-15:30(開場:13:30)
会場:高松市美術館 1階講堂
定員:40名(先着順・要申込 ※申込方法は公式ウェブサイトを参照)
無料

森栄喜パフォーマンス「盗まれた傷たち|Stolen Scars」
出演:森栄喜(出品作家)、ばば まさみ(音響作家)
2022年2月11日(金・祝)18:00-19:00
会場:高松市美術館 2階展示室
無料(要観覧券)

ウチダリナワークショップ「和紙でかたどるカタチ」
講師:ウチダリナ(出品作家)
2022年2月12日(土)10:00-12:00
会場:高松市美術館 3階講座室
定員:10名(先着順・要申込 ※申込方法は公式ウェブサイトを参照)
対象:小学生以上
受講料:500円

久保寛子ワークショップ「ブルーシートで作ろう!瀬戸内の魚」
講師:久保寛子(出品作家)
2022年2月13日(日)13:30-15:30
会場:高松市美術館 3階講座室
定員:10名(先着順・要申込 ※申込方法は公式ウェブサイトを参照)
対象:小学生以上
受講料:500円

ミニコンサート
演奏者:辻村彩、藤田哲志(フルート)、若井健司(テノール)、藤田亜子(サックス)、大山まゆみ(ピアノ)
曲目:マシャイエキ作曲「決闘」、池辺晋一郎作曲「軌道エレベーター」ほか
2022年3月5日(土)13:30-14:00
会場:高松市美術館 1階エントランスホール
無料

ギャラリートーク
学芸員|2022年2月12日(土)14:00-
ボランティアcivi|会期中の日曜、祝日 ※各日とも14:00-
会場:高松市美術館 2階展示室
聴講料:無料(要観覧券)

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